第7話 高校生
高校生
俺、高校3年生。授業も終わり、三々五々皆帰り始める。
教室の後ろの方で、建設会社のドラ息子 斉藤茂が取り巻きと話している。
「ところでさぁ~、中学校におもしれえ奴が居るそうだぜっ。」
「面白いやつってどんな?」
「誰でもやらせてくれるんだってよぉ。」
「あぁ、公衆便所かぁ~」
「うわぁっ、古い言い方っ。いつの時代だよっ。それっ。」
「なんでもよぉ、そいつの母親も”おさせ”でよ~、駅前のスナックで客、取ってるらしいぜ。」
「あ~、聞いたことあるわ、、、フィリピンじゃねえか~?そいつ?」
「みてえだな~。親子してそれかよぉ~。」
「……中坊の方、行ってみるか?、これからよぉ。」
「ふ、ふ、ふ、、、ハ、ハ、ハ、ハ、ハ!」
「名前、知ってるのかよ?見りゃ判るか?」
「ユカ、黒谷結花って子らしいっぜっ。見かけた事もあるし。」
俺は愕然とした。知った名前が聞こえた。母親は確かにスナックで働いている。客を取ってると聞いた事もる。家の御院様もその一人。
しかし、結花はそんな子だとは思えない。見た目は派手に見えるがしっかりした子だ。
【結花はそんな奴じゃない!】怒りが込み上げてきた。毎月手を合わせに来て、ちょっとだけ話すが本当に良い子だ。身体が震えてきた。
確めてやろうと立ち上がった。一言、言ってやろうと茂達の方へ歩き出した。右手の拳を握って。
2,3歩歩いたところで人がぶつかってきた。鈴木智香だった。
「ゴメ~ンっ!机に躓いちゃったっ!。」更に俺に抱きついてくる。
「相手にしちゃ、ダメっ。」智香が小さな声で俺に言った。
「結花って、いつか話してくれた女の子の事?。気になるなら助けなきゃ。」更に俺に言った。
斉藤茂達の後をツケた。見失った。辺りは暗くなってきた。焦る。隣の智香も焦り始めた。
「私の妹の同級生。優しい子だって、静香言ってた、性格の良い子だって。」
そんな良い子が阿婆擦れだとは思えない。男ってやつはホントに頭に来るっ!」
工事用フェンスが張り巡らされた工場跡。フェンスを繋ぐ針金が切れている処があり、ずれて開いている。
中から声がする。「止めてくださいっ!」ここだっ!。
「智香、警察へ電話してくれ。俺は結花を助けるっ!」「判った!。私も後から行く。」「警察が来てから来い。危ない」
声や音のする方へ走る。工場の裏手に回った。居たっ!結花の上に馬乗りになっている茂が見えた。
「止めろぉっ!、茂っ!てめぇっ!止めろぉっ!」大声を出しながら走る。
俺の声に気がついた茂。結花の両肩を抑えて居た手が緩んだ。その瞬間、結花の右手の石らしき物が茂の頭に当たった。
「イッテェっ!、、、」茂、頭を押さえて横に倒れる。しかしすぐに立ち上がり結花の首を絞めに跨って来た。
頭から滴り落ちる血、結花に降りかかる。
「くっそっ~!」走りながら飛んだ俺の右足が、茂の首にヒットする。茂、結花から離れ、転げまわる。
「龍彦っ!、てめぇ、邪魔しやがってっ、生かしちゃおけねぇ!」茂、俺に襲いかかる。頭から血を流しながら。
「結花ちゃん!大丈夫?」智香が結花を抱きかかえていた。
取り巻きの二人は逃げようとしている。放っておけ。どうせ後で警察に捕まる。
茂だけは許さない。掴み合い、殴り合い、頭突き合い、蹴り合い。俺の制服も茂の服も、血と泥と油で汚れまくっていた。
ようやく、パトカー数台で警官が到着。俺と茂は引き離され、病院で治療を受けた後、警察署へ連行された。
結花と智香も警察で事情聴取。
警察署へ、結花の母のナンシーが来た。結花を抱き、泣きながらまた抱いていた。
茂の両親が来た。ナンシーと結花に謝っている。ナンシーは何度も右足で床を踏みつけ、何やら喚いている、母国語の様だ。
茂の両親は、ひたすら謝っていた。
田所幽玄さんが迎えに来てくれた。智香のお父さんも迎えに来た。事情は警察の人から聞いた様だ。
寺に帰り、秀一郎から一言。「人を助けた事は立派な事だ。しかし相手を傷つけた事に変わりは無い。その罰は甘んじて受ける様に。」
穏やかな顔で言ってくれた。
翌日、学校で職員会議があり、処分が決まった、
茂は退学。取り巻き二人は2週間の停学(その後、転校という名の自主退学)、俺は一週間の学校内謹慎処分。智香はお咎めなし。
しかし、Twitterの流行り始めの頃であっと言う間にこの事件の事が広まった。
”〇〇市 中坊アバズレ取り合い 男二人乱闘”
”中学生女子 名前 ユカ 〇〇市第三中学”(実際は第二中学)
”かあちゃん ソープ”
その他、見るに堪えない内容がTwitterで燃えていた。
智香もTwitterをしていて、夕方憤っていた。
”建設会社のドラ息子 と 何も悪くない女子中学生
どっちが悪いか考えればすぐ分かる
それも分からないバカばっかしか ここに来るのは”
〇〇市の建設会社ドラ息子で身バレ合戦が始まった。直ぐ特定された。知ってる人は知っていた。
結花の事は載らなくなった。
事件の翌日、ナンシーさんは結花を連れて秀一郎を訪ねていた。俺によろしく、ありがとうと伝えて欲しいと言っていたそうだ。
次の土曜日、結花が寺に来た。「お怪我は大丈夫ですか?本当にすみませんでした、、、助けてもらって、ありがとうございました。」
凄く申し訳なさそうな顔で謝った後、頭を下げ、にっこりと微笑んでくれた。
「ううん。無事でよかった。ホントに良かった。」絆創膏の張られた顔と、包帯が巻かれた頭の俺、微笑み返した。
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