もし攻略対象や悪役令嬢が真っ当な貴族だったら
貴族社会の常識です。
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「サモア侯爵令嬢シルビア! 私ウィリアムはローリンゲン王家王太子の名においてこのチザム男爵令嬢マリアを愛する!」
「かしこまりました」
私の腰を抱えて口上するイケメン。
対する着飾った美少女は冷静に礼カーテシーをとった。
シルビア様はウィリアム様の婚約者だ。
ここはローリンゲン王国の王城大広間。
ウィリアム王太子の成人祝いのパーティが開かれているのだが、この王子早速ぶちかましてくれた。
乙女ゲームの定番とはいえ、自分がヒロインの立場で出演するとなると緊張するというより恥ずかしい。
そう、私は庶民あがりの
前世は女子高生だったけどそんなことはいい。
「華は愛される」という乙女ゲームの舞台の学園でサクサクとイケメンを攻略して逆ハーに成功したのだ。
いや簡単過ぎた。
でもちょっと違和感がある。
誕生パーティでのイベントはゲーム通りなんだけど、断罪がない?
「私もマリアを愛している」
「私の愛は誰にも負けない」
「僕も」
ウィリアム様を囲むように並んだ他の
宰相次男のトッド様、騎士団長の甥のフレイム様、そして公爵家子息のタレイ様。
みんなチョロ過ぎない?
「「「かしこまりました」」」
皆さん高位貴族の子息らしく婚約者がいるんだけど、その方々が並んで綺麗に
気味が悪いくらい話がスムーズなんですけど?
ていうかこれ、やっぱり断罪じゃないよね?
そもそも学園でも私に対する虐めとかまったくなかったし、私がいくら
悪役令嬢やってない。
これじゃ断罪のしようがないのは判るけど。
「そういうわけだ。よろしく頼む」
ウィリアム様が言うとパーティの参加者から拍手が上がった。
歓迎されている?
でも拍手が収まると皆さん歓談に戻ってしまった。
婚約者の令嬢も。
やっぱり無視?
「あの」
「なんだいマリア」
ウィリアム様がやさしく言って下さる。
「私はこれからどうなるのでしょうか」
そこが気になる。
なぜって「愛する」とは言われたけど婚約の言葉がない。
ていうか悪役じゃない令嬢と婚約破棄してないから私と婚約しようがない。
「そうだな。毎日花を届けよう」
いやそういう事を聞いてるんじゃなくて。
「私はスイーツかな。マリアは甘い物が好きだろう?」
「毎日は無理だがアクセサリーなどどうかな」
「パーティがあったら言って。ドレス贈らせて貰うから」
逆ハーした皆さんも暖かく言って下さるけどそうじゃなくて!
ここはもうちょっと強く言わないと駄目かも。
「婚約は」
「ああ、マリアは気にしなくてもいい。僕たちの結婚は政略だから」
断言された。
「生まれた時から決まっている」
「そもそも結婚は家同士の契約だから。私たち自身にはあんまり関係がない」
「まー、婚約者と言っても仕事仲間かな」
みんなさばさばし過ぎなのでは。
思わず聞いてしまった。
「婚約者様を愛しておられないのですか?」
すると皆さんは真顔で答えた。
「愛するのはマリアだよ」
「
「マリアは気にしなくてもいい」
そんなもんですか。
前世が日本の女子高生には理解し難い。
仮面夫婦という奴だろうか。
「すると別居されるとか?」
「いやもちろん一緒に住むし子どもも作るよ」
「社交もあるから夫婦円満な所を見せないと」
「家の信用にも関わってくるし」
やっぱりそうよね。
あれ?
だったら私は?
「あの、私は?」
さすがに不安になって聞いたら真顔で言われた。
「週に一度くらいは会いたいね」
「仕事で疲れた時なんかは特に」
「家族が出来たら間隔は開くと思うけど」
それ、単なる「都合のいい女」だよね?(怒)
「もちろん贈り物はする」
「宝石なんかどうかな」
「それとも現金の方がいい?」
それ、恋人じゃなくて愛人だよね?(泣)
「出来れば落ち着いた家がいいな」
「そうそう。家庭料理とか作ってくれたら嬉しい」
「マリアは着飾って僕たちを迎えてくれればいいから」
それ、むしろ娼婦だよね?(嘆)
「そうだ! 共同出資して屋敷を構えないか?」
「いいですね。マリアも一人じゃ寂しいでしょうし」
「他にも何人か揃えて」
それ、もう娼館だよね?(呆)
「いずれはマリアに館を譲って女主人になって貰おうか」
私の将来はやり手ババアかよ!
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攻略対象が正統的な王族や貴族だったらこうなります。
婚姻は100%政略だから本人たちには破棄しようがない。
婚約者の皆さんも王族や高位貴族の旦那が愛妾や愛人を持つのは当然と思っているので反感もありません。
そもそも男女間の恋愛関係にはないので。
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