ヒロイン・トラップ!
一発ギャグを思いついたので。
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私はマリア・ツアー。
タニア王国で男爵位を頂いているツアー家の令嬢。
もともとは平民で母さんと二人で慎ましく暮らしていたんだけど、14歳になった日にツアー男爵家からお迎えが来た。
何と、私は前ツアー男爵様がメイドだった母さんに手をつけて生まれた落とし胤なのだそうだ。
ツアー男爵家は割と裕福で、今の男爵様の正室の方も穏やかで良い人なので、前男爵様の不始末で私が不幸になるのは忍びないと引き取って下さったみたい。
血縁的には男爵様の腹違いの妹なんだけど身分は養女で男爵令嬢だ。
母さんは止めたけど、私はもっと広い世界を見てみたい!
そしていっぱい恋をして幸せになるんだ!
なーんてね!
私は転生者でここは「身分なんか関係ない! 学んで恋してのし上がれ」という半ばヤケクソのようなタイトルの乙女ゲームの世界。
よくある異世界転生で、前世の記憶は14歳の時に戻った。
ラッキーだった。
だって「身恋」は
私の前世は女子高生だった。
生前の記憶は「身恋」のルートをオールクリアした後逆ハーまで持ち込み、その後に出て来る隠しキャラまで攻略した所で止まっている。
正確に言うと夏休みを良いことに徹夜で「身恋」をやって喉が渇いたので散歩がてら近所のコンビニに行こうとして十字路で暴走車が突っ込んできたシーンまでだ。
即死だったらしくて痛みとかの記憶がないのはラッキーだった。
それ以上に幸運なのは私が「身恋」について表も裏も知り尽くした後で死んだこと。
逆ハーも隠しキャラも何でも来い!
いや死んだんだからラッキーとは言えないか(笑)。
私は「身恋」の世界に転生したことが判った途端にすべてのルートを思い出せる限りノートに書き殴った。
そして自家製の攻略マニュアルを手に意気揚々と入学試験に臨んだ。
試験は難しかったけど私は何度も「身恋」をクリアしている身だ。
試験問題の大部分がゲームと被っていたので何とか合格。
実技もあったから大変だったけどね。
入学してしまえばこっちのものだ。
現実世界だから逆ハーは無理としても
というわけで先輩や
何で私一人だけ?
しかも立派な校舎から離れた掘っ立て小屋みたいなあばら家が教室?
唖然として古ぼけた席に座っているとアラサーのきつそうな眼鏡女史が入って来て言った。
「私はあなたの専任講師のベラニアです。マリア・ツアーさん」
「はい」
「あなたは入学試験で本当にギリギリの成績でした。どれかの科目であと1点でも少なかったら不合格だったほどです」
「……はい」
「試験官のほとんどが反対したのですが、校長先生がチャンスは与えるべきだとおっしゃって特別補欠合格としました。ですが」
ベラニア様は溜息をついて眼鏡を外して拭いた。
「正直言ってこの成績ではクラスについていけません。特に大抵の貴族家で入学前に教わるはずの
「……はい」
「なので特訓することになりました。基礎必要科目にすべて合格するまではここで勉強して貰います。その間は外出禁止および学園の生徒には接触禁止です」
「そんな!」
攻略対象に会えないじゃない!
つまりゲームを始められない。
「これがプログラムです」
ベラニア女史が時間表を渡してくれた。
朝5時起床。
朝ご飯前に基礎の
午前6時より朝食。
その後もびっしりと講義や実習が詰まっている。
全部終わるのは午後10時。
休日はなし。
こんなの死んじゃう!
ベラニア様が私を見て言った。
「ちなみに当学園は入学した学生を決して見捨てません。出来るまでやらせます。課題が終わらない場合は徹夜も許可されています」
何それ?
アメリカ海兵隊方式?
冗談じゃない!
こんなことまでしてイケメン攻略なんかしたくない!
辞めます、と言おうとしたら先手を打たれた。
「ちなみに当学園の学費および諸経費は無料ですが、それは全課程を修了して卒業した者に限られます。万一中途退学した場合は全課程を修了したと同額の実費を支払っていただくことになっています」
これは入学して箔だけ付けて逃げようとする生徒を無くすためです、とベラニア様。
言われたのは恐ろしいほどの金額だった。
無理だ。
ツアー男爵家にそんなお金はないし、あっても払ってくれるはずがない。
呆然とする私に追い打ちを掛けるように冷徹な視線を注ぐベラニア様。
「この学園は身分に関係なく入学した学生に最高の教育を施し、優秀な卒業生を送り出す事を目的としています。
学費や諸経費を徴収しないのも身分や財産に関係なく学生を育てるためです。
維持運営費用は王政府や各業界から多額の寄付を頂くことで賄っています。
卒業すれば平民出身でも宰相や王妃にもなれるほどの教養と知見を備えることが出来る。それが売りです。我が校はそれだけの実績を築いています」
知らなかった。
だってゲームだとボタンを選んでクリックするだけだったし。
だから「身恋」では平民上がりの男爵令嬢が王太子殿下と結ばれたのか。
「身分なんか関係ない」ってそれ?
「以上です。
マリアさんも一刻も早くその制服を本科のものに換えられるような頑張って下さいね」
言い終わって去ろうとするベラニア様に慌てて聞く。
「あの……制服を換えるって」
「ああ、正規の学生は胸の文様が違います。なのですぐに判るようになっていますからこっそり混ざろうとしても無駄ですよ」
正規学生は寄宿舎ですが、あなたは必要課程を全部合格するまでここで生活して下さい、と言い捨てて去るベラニア様。
ここってどこよ!
部屋の後ろの方にハンモックが吊ってある。
気がつくと机の上に物凄い量の教科書が積んであった。
ここからのし上がれって?
根性ものかよ!
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魔法科学園の劣等生兼王妃学園の不適合者(笑)
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