王太子と公爵令嬢の正しい婚約破棄

一発ギャグです。

----------------------------------------------

 華やいだパーティ会場。

 楽しく踊り笑いさざめく着飾った貴族たち。

 そこに突然、鋭い声が響いた。


「カレーヌ・テリ公爵令嬢! ライル王太子の名において婚約破棄を申し渡す!」


 金髪に碧眼、背が高くて細身な割に筋肉質な物凄い美男子が正面を指さしていた。

 その後ろには数人の、これまた高位貴族の御曹司らしい男たち。

 可憐な桃髪の令嬢も見える。


 美丈夫が指さす先には絢爛豪華なドレスを纏った美女がいた。

 その美女を守るように、これまた数人の令嬢たち。

 高位貴族令嬢らしく、全員が美女や美少女だ。


「ライル王太子殿下。突然何を言われますか」


 美女の冷ややかな返答に美丈夫は後ろを振り返った。

 小声で会話する。


「聞いたぞ。このマリン・ヘーゲル男爵令嬢を虐めているそうだな!」


 美女はそれを聞いて扇を開く。

 それから後ろを振り向いて取り巻きの令嬢たちと小声で会話。


「何のことでございましょう。身に覚えがございません」


 美丈夫が後ろを振り向いて会話。


「誤魔化すな! 証拠は挙がっている!」


 美女が後ろを振り向いて。


「そもそも男爵令嬢ごときを公爵家が気にすると?」


 美丈夫が後ろを。

 美女が後ろを。

 美丈夫が。

 美女が。

 …………………。

 …………………。

 …………………。

 …………………。


 最初は何事かと遠巻きにしていた参加者たちは興味を失ってダンスや会話に戻った。

 決着がついてからでいいや。

 その間も王太子付き側近候補のロドム伯爵家三男ウィリアムと公爵令嬢侍女候補のコーナル子爵家次女メアリとの間が空いた丁々発止の会話が続いていた。


 もちろん、誰でも知っている通り王太子や公爵令嬢などという高位身分の方々は直接ご自分で話したりはなさらないものである。

 それはお付きの役割。

-----------------------------------------------

転生とか乙女ゲームとかの前に、婚約破棄ってこうなるのではと。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る