悪役令嬢、勝利!
一発ギャグを思いついたので。
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ここはロジリア王立貴族学園の卒業パーティ会場、ではなくロジリア王城の一室。
王族の私的な謁見場であるこの部屋には豪華な調度が置かれている。
そしてそこで向かい合う二組の家族がいた。
片やロジリア国王ダリル(36)および王妃メリル(31)、そして第一王子であるサミュエル(10)。
片やトール公爵家当主オロンド(33)および正室マヤ(29)、そして長女であるサマンサ(8)。
そう、お見合いであった。
ロジリア王家は天才肌の家系である。
主に知力に特化した血筋で政治の天才、軍略の天才、外交の天才が多数輩出する。
トール公爵家も数代前に臣籍降下した王子が始祖だけあって、やはりその家系には天才が数多い。
現国王ダリルは内政に無類の冴えを見せていて国家は安泰。
オロンド公爵も領地運営の傍ら学者として大学で教鞭をとり、発表論文が国外でも評価されているほどだ。
王妃メリルおよび公爵家正室マヤも天才に選ばれるだけあってそれぞれ有能この上もない。
そういった環境であるのでロジリア王国においては政略結婚の基準が他国とは異なる。
中級以下の貴族や平民ならいざ知らず、上級貴族や王家にとっては知力こそが重要だ。
だから今回のように第一王子の婚約者についても当人たち以外にも両家の両親が揃って行われるわけだが。
「陛下。今回はお忙しい所を」
「いや公爵こそ」
当主同士が短く挨拶を交わし合う。
何気ない会話の中で無数の情報が飛び交い、一瞬で収束する。
「では」
背中を押されて幼い王子と公爵令嬢が向かい合った。
お互いを観察する。
観察する。
無言で観察が続く。
息詰まるような緊張感がどれほど続いたのか。
突然、王子が両膝を突いた。
呻くように呟く。
「参りました」
幼い令嬢が胸を張る。
「うむ! 167手目での婚約破棄の破棄をよく見破った!」
それから王子と令嬢は手を繋いでトテトテと歩いてソファーに並んで座ると感想戦に入った。
「17手目でヒロインが男爵家に引き取られるのを阻止されたのには焦りました」
「しかし31手目で孤児院を全焼させただろう? 思い切った手だ」
「76手目のメイドの駆け落ちはまったく読んでませんでしたが」
「95手目の冒険者組合のスキャンダルには参ったぞ。あれで根本的な戦略の練り直しが必要になった」
互いの手を批評し合いながら仲良く歓談する二人。
両家の両親はその様子を微笑みながら眺めていた。
「……それにしても大したものですな」
公爵が言った。
「うむ。152手目か」
「ええ。私もあれはミスだと思ったのですが。3億通りまで読んだ時点では悪手でしたから」
「そうだな。私も後で気がついた。6億手まで読むと最適解だったとは」
ロジリア王家とトール公爵家の婚姻は上手くいきそうであった。
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原型は大昔のギャグ漫画です。
リスペクトと思って下さい。
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