もし乙女ゲーム世界の逆ハーが正当的行為だったら
王子はなぜパーティ会場で婚約者を断罪するのか?
ひとつの回答です。
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「ハーグローブ公爵令嬢マリー! そなたをタルム男爵令嬢リサに数々の暴虐をはたらいた罪で告発する!」
華やかなパーティ会場で突然始まった断罪劇。
会場の中央から人影は絶え、着飾った参加者が遠巻きに見守る中、凜々しい美男子が声を張り上げる。
その右腕は真っ直ぐに正面に立つ令嬢を指し、左腕はデュークレムに寄り添う小柄な桃髪で可愛いかんじの美少女の腰に回されている。
そして二人を囲むように立つ3人のやはり美青年たち。
宰相の甥であるジラリオ、聖教会枢機卿子息で司祭でもあるタナリ、そして王国学術院主席学士のソロ。
「ハリカ。侯爵息女である君がこんなことをするなんて」
「貴族令嬢がやっていいことじゃないのは判っているでしょ? ミリイ」
「トポロジカ。まだ信じられないけど本当にやったの?」
公爵令嬢マリーの後ろに並んだ三人の美少女たちは無言だった。
ただ口には出さないだけで大声で叫んでいるようなものだ。
マリーを含めた4人の視線はデュークレムの隣の美少女に集中している。
凄まじい憎悪。
ややあってマリーと呼ばれた令嬢が冷たい口調で言った。
「告発ですか。それはこの場でしなければならないことなのでしょうか?」
取り巻きの令嬢たちも呆れたように言う。
「せっかくの祝勝パーティですのに」
「遅れてきた上にいきなりとは」
「常識を疑いますわね」
これを聞いて激昂する男たち。
「お前たちが逃げ回るからだろうが!」
「最近は学園にも出てこないし!」
「大体、俺たちは後始末で忙しかったんだ! やっと片付けてきたんだぞ!」
顔を見合わせる令嬢たち。
「……
ややあって口を開いたのはマリーだった。
凍るような口調だ。
「忘れたのか! リサの教科書を破棄した!」
「リサから奪ったツボの水をぶっかけただろう!」
「階段でリサを転ばせた!」
取り巻きの三人の告発に加えてデュークレムもマリーに言い放つ。
「リサの悪口を広めたな? おかげでリサは何をするにも大変な苦労をしているんだぞ?」
無言で告発者たちを見返す令嬢たち。
するとリサと呼ばれた美少女が震え声で言った。
「もう……いいんです。何とかなりましたから忘れます」
「おおっ! 何と寛大なんだ!」
「無理しなくてもいいんだよ?」
「凄く苦労したのに」
リサを守るように取り巻く美青年たちが言い募る。
「謝っていただけたら、それで終わりにします」
リサが言った途端だった。
令嬢たちが激発した。
口々に罵る。
「謝れですって?」
「この男爵の小娘風情が!」
「そもそも
「それより婚約者がいる男たちを侍らせて恥知らずとは思わないの?」
「身の程知らずの極みね。面白い格好ですこと」
公爵令嬢マリーが嘲るように言った。
確かにリサはドレスではあるもののみすぼらしい。
だけでなくあちこち汚れたり破れたりしている。
「そんな格好でパーティに来るなどと何を考えていらっしゃるのか」
黙ってしまう美少女リサ。
それを聞いた美々しいセラ王国第二王子デュークレムが怒髪天を突いた。
「もう我慢がならん! 私はマリーとの婚約破棄を宣言する!」
「僕もだ! ハリカ、君とはお別れだ!」
「ミリイ、残念だよ」
「トポロジカ。本当に判ってないみたいだね?」
呆れたように溜息をつく令嬢たち。
マリーが嘲笑した。
「それは陛下もご存じなのでしょうか?」
「いや、まだだ。だが陛下も私の話を聞けば必ずや同意して下さるはずだ!」
処置なしと言った雰囲気で肩を竦める公爵令嬢マリー。
会場の雰囲気も王子たちへの非難一辺倒だった。
だが。
怒濤の告発が始まった。
「リサがやっとのことで解析した古代錬金術の教書をメチャクチャにしやがって! あれは国宝だぞ? おかげで魔術式の再構築にどれだけかかったと思ってるんだ!」
「あのツボに入っていたのは国中の聖教会から集めた高純度祝福水だったんだよ? 全部無駄にされて教会がどれだけ迷惑したと?」
「よりによってリサが古代魔術具を抱えて階段を降りている時に足をひっかけやがって! リサが転がり落ちながら魔術具だけは守ったから良かったようなものの! もし壊れていたらと思うと」
そして最後にデュークレムが怒りを堪えながら叫んだ。
「マリー! お前が言いふらしたおかげで貴族の協力がほとんど得られなかった! 聖女リサが魔神復活を阻止するために頑張っているのにことごとく邪魔をしたな? 我々は王家の極秘命令でリサの護衛をしていただけなんだぞ!」
パーティ会場は静まりかえった。
さすがに体裁が悪くなったのかそっぽを向く令嬢たち。
「王宮から極秘裏に説明されたはずだ!」
「知らなかったとは言わせないよ?」
「俺たちが必死で戦ってる間も遊び倒しやがってたな!」
デュークレムが地団駄を踏む。
「リサの格好がみすぼらしいだと? ついさっきまで魔神の残滓と戦っていたんだぞ!」
取り巻きたちも激昂していた。
「僕たちだってそうだ。もう丸二日寝てない!」
「やっとの事で片付けてさあ寝ようと思ったらパーティやってるからと呼び出されて!」
「王命だから逆らえなくて来たらお前らは何だよ!」
「俺たちそっちのけで祝勝会だと? 何もしてないどころか邪魔ばっかしてたくせに!」
そこにか細い声が流れた。
「あのう。もう謝罪もいいですから。魔神は再封印出来ましたし」
心底ぐったりした美少女リサが片手を上げていた。
「疲れたので退出していいですか?」
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魔神が封じられていたのは学園の地下にある迷宮です。
王子たちは王命で聖女リサを護衛していただけです。
ちなみに真相が知れたらパニックになるので箝口令が敷かれていました。
この後、魔神封印パーティは慌てて駆けつけた宰相以下王宮の重鎮たちに平謝りされ、近衛兵に守られてパーティ会場を去りました。
もう眠くてクタクタなので。
ちなみに婚約破棄は認められました(笑)。
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