運命の輪
バブみ道日丿宮組
お題:頭の中の祖父 制限時間:15分
運命の輪
運命を感じることがあるとは思わなかった。
昨日まで笑ってた人物が受験から帰ってみると、棺の中に入ってた。
誰もが悲しそうな顔をしてた。
祖父が死んだということだった。
わかってるけれど、わかってなかった。
涙も感情も何も棺から感じなかった。
自分は壊れてるのかと思いもした。
ただわかるのは、受験が始まった時いつもと違う感覚が私を支配してた。コンディションが良いというほうが正しいのかもしれない。
普段であれば、トイレに近く……緊張感に弱い私がなぜかこの日だけは普通だった。頭の中もすっきりしてて、特に試験という感覚はなかった。
1つ思い出すのは、死ぬ前の祖父の病室での状態だ。
私が来た時、笑ってくれた。
そのあとからお腹のものを戻すという状態になってしまったが、あの時私は祝福を受けたのだと思う。
祖父がきっと守り神として受験の時すぐそばにいてくれたんだって。
頭の中のもやもやを全て持ってってくれたんだってそう思う。
そのおかげかお通夜も葬式も普段通りの自分がそこにいた。
姉も母も泣いてた。
私は……その時泣かないと決めた。
死ぬことは当然のこと、人として最後を迎えただけなんだ。
きっと遠くの世界で気持ちいい生活をしてる。そう願って、最後の儀式を終えた。
家族はそのおかげでバラバラになった。
肉親がいなくなったということもあって、お互いが負担になったということらしい。私は父に引き取られ、姉は母に着いてった。
別に理由はない。
母はついてきてほしかったように何度も説得してきたけれど、私は父も1人にしてはいけない。家族というパーツは取れたとしてもくっつくようにできてる。そう断った。
いつかパーツが私と姉を通してつながるように、胸に誓った。
そして数年が経つと、親族が事故で亡くなった。
そこで私たちは再会した。
変わらない姉とちょっとやつれた母を見て、大変だったんだろうなと自分勝手に思いつつ父の手をひいた。
一度切り離された運命をまた繋ぐために、きっとそういう場所にもなる。
別れと出会い。
死の概念にはそんなことも含まれてると思う。
結果的にいえば、数回のデートを繰り返してお互いが必要であると再認識して母と父は再婚をした。
その頃には姉も、私も家から出てしまってたから、長期休みでしか会えないが変わらない様子だった。
いつか私は祖父に、親族にお礼がいえるだろうか。
なんていえばいいのだろう。
ありがとう、久しぶり、ごめん。
「あぁ……いい色」
とっても赤いーー
運命の輪 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます