彼とは、住む世界が違う。

 どうやって出逢ったのか、思い出せない。仲良くなった過程は、色鮮やかに記憶しているのに。

 世界が違うとしか、説明ができない。私の住むこの場所、この街に、彼はいない。そして彼の戦っている街に、わたしはいない。同じ名前、同じ場所、でも、違う世界。

 彼は、いなくなった。部屋には、捨てられたわたしがひとり。

 これでいい。彼は戦う。わたしみたいな、どこにもいない人間より、よほどいい。わたしは、彼の世界にいないから。いない。

 扉の開く音。

 期待はしていないけど。期待してしまう。

 玄関。

 血だらけの、彼。


「うそ」


 本当のことだけど、信じたくなくて。嘘って言ってしまう。

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