第11話

「じゃあ…今日は付き合ってくれてありがとう。」


家の前まで送ると言ってきかなかった彼は、私の家に着くなり、体を向けてお礼を言った。


「んーん。いいもの買えた?」

「うん。薫の話聞けてよかった。これ、良かったら使って。」


そう言って、雑貨店からずっと手にしている大きめの袋を差し出した。


「何これ?」

「マグカップ。」

「絶対文具じゃないなと思ったら、私のまで買ってくれたの?」

「今日は失恋して元気のない薫が、少しでも元気になればいいなっていうのも考えてたからね。俺の相談だけで終わっちゃったけど。」

「私超ついでじゃん。でもありがとう。買おうと思ってたのに買えなかったから、相談料として貰っておきます。……プレゼント、好きな子に喜んで貰えるといいね。」

「うん。じゃあマグカップ使ってみたら感想教えて。」

「…マグカップの?」

「うん。」

「…?まぁ、分かった。今日はゆっくり休みなよ。私と寝たせいでちゃんと眠れなかっただろうから。」

「今までで1番よく眠れたよ。」

「嘘つき。」


2人で笑い、"また月曜に"と別れて家に入る。久しぶりに、休み明けの仕事が楽しみだなと小さな笑みがこぼれた。

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