第4話
「おはよ。」
翌日、仕事に行くと圭は優雅にコーヒーを飲んでいた。
「おはよ。目、腫れてるね。」
「誰のせいよ。」
「酔ったフリしてわんわん泣いてた人?」
「…否定ができない。でもまぁ、昨日も言ったけどありがとね。圭のおかげで少しスッキリした。」
こっぱずかしくて、彼の目も見ずにカバンから必要な物を出していく。
「お礼を言うなら俺の目を見て言ってよ。」
「やだよ。」
「なんで?」
椅子のタイヤが転がる音と圭の立ち上がる気配がして後ずさる。
「いい!いい!来なくていいから!」
両腕をブンブンと振りガードするけれど、彼が動く気配は一向にない。
ゆっくりと顔を上げると、ニコニコと機嫌が良さそうな圭と目が合う。
「やっとこっち見た。」
嬉しそうに目を細められ、困惑する。
何?昨日からおかしいよこの人。
時折、慈愛に満ちた顔をされることはあったけど、こんなに頻繁に見たことはなかったし、何よりこんなに絡んでくる男ではなかった…気がする。
「圭、昨日から変じゃない?」
「どう変?」
「気持ち悪いほど機嫌が良いし、無駄に絡んでくる。」
「いいことがあったからかな。」
「なんでもいいけど、もう心配しなくても大丈夫だから、仕事始まったらあんまり話しかけないでよ。」
「なんで?」
「なんでも。」
子どものなぜなぜ期のようになんでどうしてと聞いてくる彼を軽くあしらう。
圭を慕っている会社の女子たちは、いらぬトラブルを避けるために平和条約を結んでいると噂で聞いた。
圭に懐かれているのは喜ばしいことだけれど、ただでさえ嫌われている私が彼女らの均衡を崩すわけにはいかないだろう。
と、いうことを圭に話すことは出来ないので、納得できていない様子の彼を上手く丸め込んで仕事を始めた。
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