劇中劇「ブラインド・ポーカー」
どこかの廃ビル。
サラリーマン風の格好をしたユキが目を覚ます。
ユキ(有希人) 「うーん……?」
キング(トール) 「目を覚ましたようだな」
ユキ(有希人) 「え……!?」
黒いジャケットを身にまとった
キング、クイーン、エース、ジャックの4人が
ユキを見下ろすように立っている。
エースがユキに銃口を向ける。
エース(ヘイムダル)「動くな。お前、一体何者だ? なんでここにいる?」
ユキ(有希人) 「 銃!? なんでって言われても……僕が聞きたいくらいです! ここはどこなんですか? あなた達は一体誰です……!? 」
エース(ヘイムダル)「……テメェ、とぼけるなら殺すぞ!」
エース、銃口をさらに近づける。
ユキ(有希人) 「ぎゃー! ま、待ってください! 本当に知らないんですよ! 会社から帰る途中で誰かに襲われて……気がついたらここにいたんです!」
キング(トール) 「襲われた?」
ユキ(有希人) 「急に後ろから殴られて……そこから記憶がないんです!」
クイーン(バルドル)「 嘘じゃないみたいだよ。頭の後ろに殴られたような跡があるし……それにほら。この人の名刺」
ジャック(ブラギ)「“ユキ・ライムグラス”……肩書きは、IT企業の開発担当か」
エース(ヘイムダル)「そんな紙切れがあてになるかよ! こいつがオレたちと同じギャングなら、偽物の名刺なんて、いくらでも用意できるだろうが」
ユキ(有希人) 「 ギャング……!? あなた達ギャングなんですか!? 」
エース(ヘイムダル)「しらばっくれてんじゃねぇよ!」
クイーン(バルドル)「落ち着いてよ、エース。彼の持ち物は全部確認したでしょう? 武器らしいものは何も持ってなかったじゃない」
ジャック(ブラギ)「ええ。……それに、この男は本気で怯えているようです。演技とは思えません」
キング(トール) 「……だな。ただの一般人と見て間違いないだろう」
エース(ヘイムダル)「……おい、ジャック。テメェがボスから指定された場所ってのは本当にここで間違いないんだろうな?」
ジャック(ブラギ)「……どういう意味です? まさかエース……私を疑ってるんですか?」
ジャック、ナイフを抜く。
ユキ(有希人) 「ひぃ! ナイフ!!」
ジャック(ブラギ)「私に疑いの目を向ける者は目玉を。疑惑の言葉を投げかける者は、舌を失います。同じチームのメンバーだろうと、例外ではありません」
ジャック、ナイフをエースに突きつけようとする。
次の瞬間、キングがハンマーを取り出し、
ジャックのナイフを弾く。
キング(トール) 「落ち着け、ジャック。リーダー命令だ」
ユキ(有希人) 「ひぃ!! 今度はハンマー!?」
ジャック(ブラギ)「フン……」
キング(トール) 「エースもだ。今まで、ボスの指示が間違ってたことが一度でもあったか?」
エース(ヘイムダル)「けどさ、キング! 指定の場所に集まれとしか言われずに、来てみたら妙な一般人しかいないって……どう考えてもおかしいだろうが!」
ジャック(ブラギ)「ボスのことです。きっと何か意図があるんでしょう。……どちらにせよ、の男を尋問――いえ、拷問すればハッキリする事です」
ユキ(有希人) 「ご、拷問!? 勘弁してくださいよ! ただの会社員が、“レインボー・カード”の人たちのことなんて、知ってるわけないじゃないですか!」
ジャック(ブラギ)「痛めつけるまでもなく、ボロが出ましたね」
ユキ(有希人) 「……え?」
ジャック(ブラギ)「貴方はスパイだ。そうでなければ、私たちが“レインボー・カード”のメンバーだなんて分かるわけがありません」
ユキ(有希人) 「分かりますよ! だって、みなさんが手の甲に入れてる刺青……虹のマークですよね? この街で“レインボー・カード”と“クラウディー”の名前を知らない人間なんていませんよ!」
ジャック(ブラギ)「私たちを“クラウディー”のようなクズギャング団と一緒にするつもりですか? よほど早くこの世から去りたいようですね」
エース(ヘイムダル)「そうか。こいつ、うちにとって邪魔な人間なんだよ。だから始末させるために、ボスはオレたちを集めたんだ!」
ユキ(有希人) 「僕、本当に怪しいものじゃありません!」
エース(ヘイムダル)「怪しい奴はみんなそう言うんだよ!」
ユキ(有希人) 「怪しくない奴もみんなそう言うしかないんですよ!」
倉庫の入り口が開き、急に複数の男たちが現れ、
一同に銃を向ける。
男 「 いたぞ! お前ら、くたばりやがれ!」
ユキ(有希人) 「わあああああ!! また妙な人たちが増えた!! この人たちは仲間!? 敵!?」
クイーン(バルドル)「仲間ではありませんね。みんな、伏せて!」
クイーン、懐から鞭を取り出すと、一閃。
男たちの手から銃を弾き落とす。
男 「ぐ……!? バカな! 撃ったはずなのに……!」
クイーン(バルドル)「残念だけど、僕の鞭は弾丸よりも早いんです! 襲撃者さん……僕たちを狙ったあなた方の勇気には敬意を表します。敵であれ、尊敬に値する場合は認めること。それが僕のポリシーですから。……さあ、残りの方々も、いきますよ!」
クイーン、再び鞭をふるう。男たち、呻いて倒れる。
ジャック(ブラギ)「クイーン、あとは私に。ふふ。このナイフ、面白い形をしているでしょう? これは殺すためではなく、苦痛を与えるためだけに作られたナイフなんですよ。せいぜい、いい声で鳴いてくださいね? そして、その正体を明かしなさい!」
エース(ヘイムダル)「待てジャック! ……くそ。くらえ!」
エース、男たちの頭を撃ち抜く。
悲鳴をあげる間もなく、倒れる男たち。
クイーン(バルドル)「エース! どうして撃ったの!?」
ジャック(ブラギ)「どこのチームの差し金か、吐かせるのが先でしょう?
おかげで正体が分からなくなってしまった……!」
エース(ヘイムダル)「どうせ、素人のチンピラかなんかだって! 」
キング(トール) 「……いや、そいつはどうかな」
キング、男の服をめくる。
ユキ(有希人) 「この刺青って……クラウディーのマーク……!?」
クイーン(バルドル)「……なぜ、クラウディーのメンバーがここに……?」
ジャック(ブラギ)「なるほど……そういうことですか」
ジャック、エースの首元に素早くナイフを突きつける。
エース(ヘイムダル)「!? なんの真似だ、ジャック……!? ナイフをおろせ!」
ジャック(ブラギ)「エース。貴方、いつから私たちを裏切っていたんですか?」
エース(ヘイムダル)「え?」
ジャック(ブラギ)「今夜、私たちがここに集まることを知っていたのは、ボスと私たちだけ。それがクラウディーに伝わっていたとすれば、この中の誰かが漏らしたとしか思えません」
ユキ・キング・クイーン「「「……!」」」
エース(ヘイムダル)「テメェ……オレがスパイだって言いたいのかよ?」
ジャック(ブラギ)「彼らを撃ち殺したのが何よりの証拠です。奇襲に失敗した彼らが、口を割るのを恐れたのでしょう?」
エース(ヘイムダル)「んなわけねぇだろうが! テメェの悪趣味な拷問が見たくなかったってだけだよ!」
ジャック(ブラギ)「ずいぶん苦しい言い訳ですね。……潔く認めるなら楽に殺してあげますよ?」
クイーン(バルドル)「やめてジャック! 僕たちは長年組んできた。裏切り者なんか、いるわけないよ!」
キング(トール) 「いや……クラウディーの連中が、このタイミングで現れたのは不自然だ。ジャックの言う通り、この中に内通者がいると考えたほうがいい」
クイーン(バルドル)「そんな……!」
エース(ヘイムダル)「くそ。オレはただ、お前らを守ろうと……。けどよ、だとしたら、ジャックの方がよっぽど怪しいだろうが! ボスから指令を受けて、オレたちに伝えたのはこいつだ。嘘の場所をオレたちに伝えて、全員ここで始末するつもりだったんだよ!」
ジャック(ブラギ)「見損ないましたよエース。チームを裏切っただけじゃなく、
その罪を私に着せようとするなんてね……。……覚悟してください。あなたには可能な限り長く、ゆっくりと痛みを与えながら、地獄へと送って差し上げます!」
ユキ(有希人) 「……いい加減にしてください!」
ジャック・エース 「「!?」」
ユキ(有希人) 「みなさん、同じチームのメンバーなんでしょう? 僕は、しがない会社員だけど、部署の中の信頼関係が大事だってことは知っています。仲間同士、どうしてもっと信じ合えないんですか!?」
キング(トール) 「!! おい、みんな伏せろ!」
銃声が響き渡る。
黒づくめの男たちの集団が現れる。
エース(ヘイムダル)「ちくしょう、まだこんなに仲間がいやがったのか!」
キング(トール) 「ひとまず、裏切り者探しは後だ。そいつを連れてここから脱出するぞ! 」
ジャック(ブラギ)「こんな怪しい男と行動を共にするなんて、私はごめんです!」
クイーン(バルドル)「じゃあ二手に別れようよ。ジャックはエースと。僕はキングと、彼と一緒に――」
エース(ヘイムダル)「冗談じゃねぇ! 今ジャックと2人になったら、いつ背中から刺されるか分かったもんじゃねぇだろうが!」
ジャック(ブラギ)「それはこちらのセリフです」
ユキ(有希人) 「ちょっと! だから揉めてる場合じゃないですって!」
キング(トール) 「……仕方ない。クイーン、ジャックと一緒に行け! エース、お前は俺たちと来い!」
5人、二手に分かれると応戦しつつもその場から逃げ出す。
逃げてきたジャックとクイーン。
潜んでいた男たちが現れ、2人に向かって銃撃。
だがジャック、それをナイフで弾く。
男 「バカな……銃弾をナイフで弾いただと……!?」
ジャック(ブラギ)「私を殺したいなら、次はマシンガンくらいは用意しておくことですね。まぁ――」
ジャック、男たちに一瞬で近づくとナイフで切りつけた。
倒れる男たち。
ジャック(ブラギ)「――次はありませんけどね」
クイーン(バルドル)「……ジャック、後ろ!」
ジャックの後ろから隠れていた男が現れる。
男、銃を向けようとするが、それよりも早くクイーンが鞭で一閃。
男、呻いて倒れる。
クイーン(バルドル)「1人で突っ走らないでよ、ジャック。僕がいるでしょ?」
ジャック(ブラギ)「チームの中に裏切り者がいると分かった以上、貴方のことも信用はできませんから。……兄さん」
ジャック、先に行ってしまう。
クイーン(バルドル)「あ……ジャック! 1人で行かないで!」
別空間。
キングがハンマーを振るい、
襲い掛かる男たちを次々になぎ倒していく。
キング(トール) 「おいおい、もう倒れちまうのか? お前も男なら、このキング様のハンマーの味、もっとガッツリ味わって行けよ。……ほら! もっとかかってこいよオラァ!」
ユキ(有希人) 「ひいぃ!」
キング(トール) 「おいお前、あんまり俺から離れるな! かばえねぇだろうが!」
ユキ(有希人) 「そんなこと言われても……あなたの近くにいる方が怖いんですもん!」
と、物陰から銃声が響き、銃弾がキングを掠める。
キング(トール) 「だから離れるなって! ……クソッ! まだいやがったのか……エース!」
エース(ヘイムダル)「分かってるって! 」
エース、物陰に銃を撃ち込む。
男たちが呻いて倒れこんでくる。
キング(トール) 「おい、ユキ。お前、怪我はないか?」
ユキ(有希人) 「ええ。大丈夫です」
エース(ヘイムダル)「……」
エース、銃をユキに向ける。
ユキ(有希人) 「えっ」
エース(ヘイムダル)「お前、一体、何者だ? オレは頭は良くないが、目と耳だけはいいんだよ。物陰にいる敵の殺気に気づいて、撃たれる瞬間に避けやがったな?」
ユキ(有希人) 「……言ったじゃないですか。ただの会社員だって……」
キング(トール) 「考えすぎだ、エース。こいつにそんな芸当ができるわけない」
エース(ヘイムダル)「……そうか。分かったぞ。キングもそいつとグルなんだな」
キング(トール) 「いい加減にしろエース! 銃を下ろせ!」
エース(ヘイムダル)「うるせぇ! オレの好きな“レインボー・カード”は、いつからこんなに腐っちまったんだ!」
その時、どこからか風を切るような音がして、
エースの手から銃が落ちる。
呻いて手を押さえるエース。
鞭を構えたクイーンが現れ、銃を拾い上げる。
エース(ヘイムダル)「!? クイーン……テメェ……!」
クイーン(バルドル)「エース、冷静になってよ。仲間割れなんかしたら、“スパイ”の思う壺だよ?」
キング(トール) 「おいクイーン、ジャックはどうした? 一緒じゃないのか?」
クイーン(バルドル)「それが……。見失ってしまいました」
キング(トール) 「……見失っただと?」
ジャック(ブラギ)「ふっ!」
ジャックが現れ、クイーンに切りかかる。
クイーン(バルドル)「ジャック……!?」
すんでのところでナイフを避け、
ジャックと距離をとるクイーン。
クイーン(バルドル)「……一体何の真似なの、ジャック?」
エース(ヘイムダル)「ジャック……やっぱり裏切り者はテメェか!」
ジャック(ブラギ)「いえ……私たちを裏切ったのはクイーンです」
ユキ・キング・エース「「「……!?」」」
ジャック(ブラギ)「“クラウディー”の1人を捕らえて、口を割らせました。
今夜ここに私たちが来ると漏らしたのは……クイーンだとね」
ジャック、クイーンにナイフを向ける。
クイーン(バルドル)「…………なぁんだ。もうバレちゃったんだ」
ユキ・キング・エース「「「……!」」」
クイーン(バルドル)「残念だなぁ……本当は全部終わってから、ネタバラしして驚かせたかったのに」
ジャック(ブラギ)「……クイーン……いいえ、兄さん。2人で“レインボー・カード”に入った日から、いつかこうなる気がしていました。幸せな日々は長くは続かない。せめてものはなむけに……楽に天国へ送って差し上げます……!」
ジャック、クイーンを斬り付けようとする。
が、キングがハンマーでジャックのナイフを叩き落とす。
ジャック(ブラギ)「ぐッ……キング……!?」
キング(トール) 「 落ち着け、ジャック。情報を流すようクイーンに指示したのは……俺だ」
ユキ・ジャック・エース「「「!?」」」
クイーン(バルドル)「みんな、もうちょっとだけおとなしくしてて。“クラウディー”の幹部も、じきに集まってくると思うから」
無数の足音が聞こえる。
クイーン(バルドル)「ほら。きた」
足音の数が増えてゆく。
クイーン(バルドル)「けど……あれ? キング。ちょっと、人数が多すぎない?」
キング(トール) 「どうやら、チームまるごと、全員お出ましのようだな」
武器を持った男たちが現れ、一同を取り囲む。
キング(トール) 「……ざっと4、50人ってとこか。おまけに全員武器を持ってやがる」
クイーン(バルドル)「どうするのキング。さすがにちょっと多すぎるよね?」
キング(トール) 「そうだな。……ジャック、お前も手伝え」
キング、ジャックへナイフを放る。
ジャック(ブラギ)「……は?」
キング(トール) 「クイーン、お前はエースに銃を返してやれ」
エース(ヘイムダル)「なんだ!? 意味分かんねぇ! 一体どういうことだ、説明しろよ!」
クイーン(バルドル)「……これ、全部、作戦だったんだよ。“クラウディー”のメンバーに、今夜僕らがここにいるという情報を流す。そして、僕たちを叩くために現れた“クラウディー”チームを、逆に一網打尽にする、っていうね」
エース・ジャック「「な!?」」
キング(トール) 「そして……ついでに、うちの新メンバーのお披露目も兼ねてたってわけだ」
エース(ヘイムダル)「新メンバー!?」
キング(トール) 「いくらお披露目会といったって、客の人数が多すぎるようだがな。どうだ?」
ユキ(有希人) 「――問題ありませんよ」
ユキ、それまでの怯えた様子が嘘のように、
男たちの前に出ると不敵に微笑んだ。
ユキ(有希人) 「この程度の人数なら、“俺”1人で大丈夫です。……っていうか、これくらい捌けないようなら、先輩たちは俺のこと認めてくれないでしょうし」
ジャック・エース「「……!」」
ユキ(有希人) 「さあ、いきますよ!」
男たち、一斉に襲いかかる。
ユキ、男たちの攻撃を軽々かわし、
そのうちの一人に拳を叩き込む。
男、一撃で倒れ込む。
ユキ、男が持っていたナイフを奪い、
周囲にいる相手を一瞬で切り伏せる。
さらに倒れた男の懐から銃を奪い、続けざまに発砲。
男1 「こいつ、倒す相手の武器を、次々に奪って……!?」
男2 「ガキ1人にびびってんじゃねぇ! だが……こいつの動き、全く読めない!」
ユキ(有希人)「そうそう。その調子でもっと本気になってよ。俺、先輩たちにいいとこ見せないといけないんだから、さ!」
ユキ、倒した敵から奪った武器を次々と持ち替え、
あっという間に男たちを倒していく。
エース(ヘイムダル)「たった1人で、あれだけの人数を……?」
ジャック(ブラギ)「……荷物に武器がなかったのは、他人の武器を奪う戦術の持ち主だから、ですか。 私たちの手の小さな入れ墨を指摘して見せた時点で、やはり疑うべきでしたね。何者なんです、貴方は」
キング(トール) 「……お前たちも“ジョーカー”の噂くらいは聞いたことがあるだろう?
エース(ヘイムダル)「まさか……それがあいつだっていうのかよ!?」
ユキ、最後に残った男に見事な蹴りを放つ。
男、吹っ飛んで動かなくなる。
ユキ(有希人) 「さてと……これで全部片付いた。で、どうなりました? 俺の試験の結果は」
エース(ヘイムダル)「試験?」
クイーン(バルドル)「『ユキをレインボー・カードに加えるかどうか、チーム全員で見極めろ』……それが、ボスからの本当の指令だったんだよ」
エース(ヘイムダル)「……じゃあ……最初から全部、そのための芝居だったってことかよ!?」
ジャック(ブラギ)「頭の殴られた跡も、武器を使えば自分で殴れる、ギリギリの位置……か。なんて回りくどいことを……」
クイーン(バルドル)「いいじゃない。おかげで“クラウディー”をまとめて壊滅させられたんだしね」
キング(トール) 「どうせお前ら、実力も分からないメンバーが入るなんて言ったら絶対に頭ごなしに反対してただろ? それに、こいつのスパイ技術を、身を以て知ってほしかったからな」
ユキ(有希人) 「危うくエース先輩には見破られそうになりましたけどね。……さすが噂に名高い“レインボー・カード”のみなさんです」
エース(ヘイムダル)「ふん……」
ユキ(有希人) 「俺、先輩たちに憧れてるんです。個性も技術もバラバラなのに、不思議とチームとしてまとまっている……そんな“レインボー・カード”に。だから、お互いを疑うなんて、これで最後にしてください。そして……俺も、そんな素敵なチームの仲間に入れてくれませんか?」
間。
エース(ヘイムダル)「“ジョーカー”……確か、カードゲームで、どんな手札の代わりにもできるカードだよな?」
ジャック(ブラギ)「“気弱な会社員”の次は“可愛い後輩”の役を演じるというわけですか。……油断ならないですね」
エース(ヘイムダル)「だが、気に入ったぜ! そんくらいふてぶてしい奴じゃなきゃ、オレたちの仲間なんて務まらねーからな!」
ジャック(ブラギ)「ええ。貴方の格闘術と私のナイフ……どちらが上かも試してみたいですしね」
クイーン(バルドル)「じゃあ、決まりだね!」
キング(トール) 「お前のことはなんて呼べばいいんだ? “ジョーカー”ってのは通り名なんだろう?」
ユキ(有希人) 「“ユキ”でお願いします。“レインボー・カード”の“ユキ”……当分は、それが俺の名刺に載せる、“役名”になりますから」
と、再び無数の足音が響く。
クイーン(バルドル)「あらら……どうやら、まだ敵が結構残ってたみたいだね。……晴れてメンバーも増えたことだし、もうひとがんばりしちゃおうか。ね、ジャック」
ジャック(ブラギ)「はい……兄さん。ユキ、どちらがたくさん切り刻めるか勝負しましょう」
ユキ(有希人) 「いいですよ。言っておきますけど、先輩だからって手加減しませんからね?」
エース(ヘイムダル)「ははっ。オレの好きな“レインボー・カード”は、こうでなくちゃな。けど、悪いが、もうお前らの見せ場はねぇぞ? オレの射程に入らないよう引っ込んでやがれ!」
キング(トール)「お前らなぁ……リーダーに花を持たせるっていう気遣いはないのかよ」
一同、不敵に微笑むと、それぞれ武器を構える。
ユキ(有希人) 「さて。それじゃあ、手札も揃ったことだし……もう1ゲームと参りましょうか!」
キング・クイーン・ジャック・エース「「「「ああ!」」」」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます