第3節 虹架、冬の定期公演
[虹架高校_体育館ステージ]
虹架高校演劇部・冬の定期公演当日。
真尋 「ここが、虹架の体育館……。すごくしっかりした造りだね」
律 「ステージの照明、見えてる分だけでも、普通の高校ではまずない量ですね」
ロキ 「すげー数の人間だな。こいつらみんな、虹架の芝居を観に来たのか」
女子学生1「見て見て! 私たちの席、すっごくステージに近い! がんばってチケット取ってよかった……!」
男子学生1「すごい人だな。体育館の後ろまでパンパンじゃん。さすが
総介 「うーん! 相変わらずの人気ぶりだねえ。お。このルルたんの写真、神ってるぅ!」
章 「総介、いつの間にパンフレットなんて買ったんだ? うわ……ほんとだ。アイドルみたいな写真だな」
衣月 「トールも、役の衣装が似合ってて男前だ。あっちではテーマ曲のCDも売られていたよ」
律 「チケットとグッズの収益は、かなりのものでしょうね。部活の公演でこれって、批判も多そうですけど」
総介 「うん。鷹岡洸がこれをやり出した当初は、高校生の部活で金儲けなんて……って声も多かった。けど、芝居の中身は間違いないし、学校自体の宣伝にもなるってんで、認められてる。今となっては、この定期公演がきっかけで虹架を知って入学したがる子もいるって。だよね、育ちゃん」
竜崎 「あいつは、昔から言ってたからな。過去に例がないなら作るだけだ、って」
竜崎、忌々しくつぶやく。
竜崎 「……だが、やっぱり俺は気に食わん。歌だ、グッズだ……役者はアイドルじゃねえんだぞ」
草鹿 「こら育ちゃん。生徒に聞こえちゃうよ? 芝居の現場だと批評家になるの、直ってないね」
章 「うん? 何話してるんすか、2人して」
草鹿 「なんでもなーい! お客さんたち、すっごく嬉しそうな笑顔だよねー。 いろいろ意見はあるかもだけど、あの笑顔見ると、これも1つの正解なんじゃない?」
竜崎 「……ふん」
律 「というか、夏のときも自然に紛れてましたけど、なんで草鹿さんがここに……?」
章 「ツッコむだけヤボだろ。あの大人3人、古い仲みたいだし、もう副顧問みたいなもんだよ」
総介 「そーそー!
真尋 「今回の演目は、スパイものなんだよね。神5のみんなに似合いそうだ」
ロキ 「スパイ? 敵の懐に入り込むヤツらのことか」
衣月 「うん。映画なんかでは、ポピュラーな題材なんだよ。スタイリッシュなイメージがあるしね」
ロキ 「フーン……。ま、何をやろうが、どんな方法で客を呼ぼうが、要はその芝居がいいかどうかだ」
真尋 「……有希人は、どんな芝居を観せてくれるんだろう」
ロキ 「ビビってんのか?」
真尋 「ううん。少し緊張してるけど、楽しみだよ。有希人はずっと成長し続けてる。きっと今回も、たくさん刺激をくれるから。ロキは? 緊張したりする?」
ロキ 「フン。するわけないだろ。真尋が刺激されるほどの芝居かどうか、俺があいつらを見極めてやるよ」
真尋 「ふふ。頼もしいな」
開演のブザーがなり、客席の明かりが落とされる。
真尋 (有希人……。俺はあの時も、夏の合宿でも、きみの前から逃げ出してしまった。でも今は、これまでで一番、芝居が楽しいんだ。ロキとみんなのおかげで、また戻ってこられた)
真尋 (だから、きみに謝らなきゃ。あの時きみを傷つけたこと、ちゃんと。そして今度こそ、前に進みたい。合宿が始まったら、一番に有希人に伝えよう。俺はもう、怖がらずに芝居ができる、出遅れてしまったけど、きみと同じように芝居と向き合って生きていけるって)
ロキ (……真尋、まっすぐ舞台を見てる。迷いなんかないって顔で。……俺も、斜に構えるのはやめだ。認める。あいつらの芝居は、悪くない。だから今回は、まっすぐに観てやる)
ロキ (けどコンクールで勝つのは俺と真尋だ。トールにも、ユキトにも、邪魔はさせない)
ロキ 「……見せてみろよ。神5」
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