第10節 初代芝居バカたち

[東所沢駅前]


 鷹岡に電話をかける草鹿。


草鹿   「……もしもし洸ちゃん? なあなあ、忙しいって分かってるけど、ちょっとだけご飯に出てこれない? そう、育ちゃんも一緒! あ……!」


 草鹿の電話を取り上げる竜崎。


竜崎   「……長くはかからん。この間の詫びだけ入れさせろ」

鷹岡   『お前の詫びに使う時間はない』

竜崎   「お前……相変わらず社交力ゼロかよ」

草鹿   「ぶっきらぼう具合はどっこいどっこいだけどね」


 竜崎、草鹿を一瞥する。


竜崎    「……」

鷹岡    『詫びるつもりがあるなら、お前のところの役者をもっと伸ばせ、育。うちの5人が刺激を受けられるような存在に育ててみろ』

竜崎    「……ああ。その話もするつもりだ。今日やった公演動画がここにある。未編集だが、かなりできがいい。観たくないか? 叶と神之の、成長ぶりが映ってる」

鷹岡洸   『……いいだろう。追って連絡する』


 切れる電話。


竜崎    「……あとで連絡する、だそうだ」

草鹿    「オッケ~。それにしても、相変わらずだね~。洸ちゃんの“芝居バカ”」

竜崎    「……サクラ演劇コンクールで勝つためには、叶にも神之にも、まだ虹架の力が必要だ。叶は神楽を、神之はあの派手な4人を、避けては通れない。どうせ避けられないなら、俺の手の平の上で、できるだけ安全にぶつからせてやるだけだ。そのためなら、アイツに頭くらい下げる」

草鹿    「あれ、どしたの、急に。これまで、我関せずのテキトー顧問だったくせに~」

竜崎    「覚悟を決めたってだけだ。……いい役者を前に、黙ってられねーよ」


7章10節


草鹿    「……ここにもいたわ、芝居バカ」


<第7章本編終了>

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