第11話 お父さんとお母さん
「ハルのお父さんとお母さんのこと、聞いてもいい?」
ハルが小学6年生になって、冬休みに入った頃、ハルの屋敷で遊んでいた遥香がお菓子を食べながら、ハルに聞いた。
「どうして、また?」
ハルは急な質問に遥香に聞き返した。
「ハルとの付き合いも長くなったし、そろそろ聞いてもいいかなって思っただけだよ。」
遥香は少し気を遣った様子でハルに答えた。
ハルは特に気にする様子もなく、遥香に言った。
「ん〜お父さんとお母さんは4歳の時に死んじゃったから、実はあんまり覚えてないんだよね〜
うっすらとした印象はあるんだけど。」
「そっか〜でも、写真見るとやっぱり美男美女って感じで素敵な人だよね〜」
遥香と一緒に来ていたヨシコがハルの勉強机に飾っている写真立てを見て、言った。
「お父さんはすごい元気な人で、よく私と本気になって遊んでくれたよ。
本気でボール投げてきたり、おままごとでもの凄い迫真の演技してくれてたのは覚えてるな〜
結構、無茶してたから、お母さんによく怒られてた印象があるよ〜」
ハルは笑いながら、楽しそうに話した。
「なんか、ハルってお父さん似っぽいね。」
ヨシコも笑っていた。
「そうかもね。
逆にお母さんは落ち着いてて、ものすっごい優しかったの覚えてるよ。
怒られたことはほとんどなかったんじゃないかな?
もちろん、お父さんも優しかったよ。」
「お化けが見えることは二人とも知ってたの〜?」
ヨシコがゆったりとした口調でハルに聞いた。
「知ってたよ。
なんかやたらとすごいって褒められた気がする。
そのせいで私も勘違いしちゃったのはあるけど。」
「へぇ〜やっぱりハルの両親だけあって、変わってたんだね。」
遥香は悪びれもせず、失礼なことを言った。
ハルは遥香の失礼な言葉を一旦、無視して言った。
「…でも、今思えば、怖がらなかったのは私にとってはありがたいことだったって思ってるよ。
だって、両親に怖がられてたら、多分、かなり辛かったはずだから。」
「それはそうだね。
いいご両親だったんだね。」
「うん!」
ハルは満面の笑みで答えた。
遥香は少し迷ったが、気になっていることをハルに聞いた。
「…寂しくなったりする?」
ハルはまたも考えて、遥香に答えた。
「う〜ん…そりゃ、初めは寂しかったし、辛かったけど、この屋敷に来てからはそういうの忘れちゃった感じかな?
総一郎とか桜おねぇちゃんとかハイテ君とかいるしね。
それに遥香ちゃんとヨッシーがいるじゃん!
今はホント楽しいよ。」
遥香はハルの言葉が嬉しくて、安心した様子でハルに抱きついた。
「そうだよね〜私達がいるもんね〜
いや〜そうか〜そうか〜」
抱きつかれるのに慣れたハルはそのままお菓子を食べ始めた。
ふとハルは考えた。
(…あんまり忘れちゃダメなのかな?
…お父さんとお母さんはこんな私を天国でどう思ってるんだろ?)
しかし、声には出さなかった。
「…ねぇ、総一郎。
お父さんとお母さんってどんな人だったか、覚えてる?」
その日の晩、夕食後、ソファーに座って、桜がいつも通りゲームをしているところをぼ〜と見ながら、総一郎に聞いた。
「そういえば、あんまり話してなかったね。
ハルのお母さんにはあまりお会いしたことがないから、分からないけど、誠一兄さんの子供の時の話ならできるよ。」
ハルの隣で本を読んでいた総一郎はそう言って本を閉じた。
「面白そう!教えてよ!」
ハルはウキウキした顔で総一郎にお願いした。
「うん。前にも言ったっけかな?
僕と誠一兄さん、恵一兄さんの三人はハルと同じ西南小学校に通ってたんだ。
僕らは年が2歳ずつ違ってて、僕が1年生の時なんかは3人皆、同じ学校に行ってたんだよ。」
「へぇ〜なんかすごいね。
楽しそうじゃん!」
ハルは少し羨ましそうだった。
しかし、総一郎は苦笑いをした。
「…いや、それがそうでもなくてね。
恵一兄さんは長男らしく、賢くて、落ち着いてて、面倒見も良くて、良かったんだけど…
誠一兄さんは中々のヤンチャ坊主でさ。
あっちこっちに引きずりまわされて、僕はよく泣かされてたよ…」
「そ、それは気の毒だね…
確かに元気な人だったもんね。」
ハルは残念な顔をした。
「でも、誠一兄さんが構ってくれるおかげで、なんだか引っ張られて、明るい性格になったと思うよ。
それに誠一兄さんは僕のヒーローだからね。」
「ヒーロー?」
総一郎はニコッと笑って話を続けた。
「うん。僕って子供の頃は暗くて、所謂ガリ勉タイプだったんだけど、よくいじめられたり、不良に絡まれてたりしたんだよ。
でも、いっつも誠一兄さんが助けに来てくれてさ。
で、実は誠一兄さん、すごい喧嘩が強かったんだよ。」
「ほぇ〜なんか格闘技でもやってたの?」
ハルは少し意外そうな顔をして、聞いた。
「ううん。特にそういうことはしてなかったけど、何故か負けなしだったんだよね。
それで、街でも有名な不良に喧嘩を売られたこともあったけど、あっさり勝っちゃったりしてさ。
まぁ、言っても小中学生の頃の話だけどね。
ホントカッコよかったよ…」
総一郎はソファーにもたれかかって、上を向き、懐かしむように話した。
「そりゃすごいね。
あんまり覚えてないけど、そんなにガタイはよくなかったよね?
なんでそんなに強かったんだろ?」
ハルは不思議に思って、総一郎に聞いた。
「何回か兄さんの喧嘩を見たことあるけど、何が凄いって、相手のパンチを全部避けるんだよ!
だから、普通喧嘩の後なんて、ボロボロになるもんだけど、いつも綺麗な顔してたよ。
まるで、相手が考えてることが分かってたみたい…」
総一郎は何故かハッとした顔をして、考え出した。
ハルは急に黙った総一郎を見て、なんか嫌なことでも思い出したのかと思った。
「…どしたの?総一郎?」
しばらく、黙った後、総一郎は話し始めた。
「…ハルってさ。人の心が読めたりする?」
「えぇ〜?どして、急にそんな話になるの?
そんなのできるわけないじゃん。」
ハルは総一郎の素っ頓狂な質問に呆れたように答えた。
総一郎はハルの言葉を聞いて我に戻ったように慌てて、ハルに言った。
「い、いや。急に変なこと言ってごめん。
実はさ、誠一兄さんもお化けが見えてたと思ってるんだよ。」
「…総一郎、あのさぁ、話があっちこっちいって、よく分かんなくなってきたんだけど…」
ハルはじとっと総一郎を見た。
「ごめんごめん。一旦喧嘩の話は置いとくね。
一つづつ話すよ。
まずは、誠一兄さんがお化けが見えてたかもって話から。」
「うん。よろしい。」
何故かハルは偉そうに了承した。
総一郎はコホンと話し始めた。
「前に誠一兄さんに連れられて、この屋敷に来たって話したよね?その時、桜さんを見たんだ。
初めてお化けを見たんだけど、僕は恐怖よりも桜さんに見惚れて…」
「ちょっとまって!総一郎!」
ハルは総一郎の話を途中で遮って、ゲームをしている桜を見た。
桜はゲームに熱中していて、こちらの声は聞こえていないようだった。
ハルはホッとして、総一郎に言った。
「うん。いいよ。続けて。」
総一郎は桜が恥ずかしがって、ポルターガイストが起こるのをハルが嫌がったのだと気づいた。
なので、総一郎は気を遣って話すことにした。
「…えっと、とにかく、桜さんが見えたけど、不思議と怖くなくて、僕は固まってたんだ。
そこに誠一兄さんがやって来たんだけど、誠一兄さんは僕と同じ方向見て、言ったんだ。
「お前、見えてるのか?」って。
で、僕は「きれいな女の人のお化けがいるって」って言ったんだけど、誠一兄さんは笑って、「アホか。お前、どんだけ女に飢えてんだよ」って茶化されたんだよ。」
「…まぁ、女の人のお化けが見えるくらい女の子を欲してたって思われたんだろね…
ホント、男って下品だわ。」
ハルは呆れた顔で言った。
しかし、総一郎は考えた顔をして、ハルに言った。
「…僕もそう思ってたんだけど、違うかもしれないんだ。
初めに「何か見えてるのか?」って聞かれたけど、普通、何もないとこ見てたら、「何、見てるんだ?」とか「何かある?」って聞くと思わない?」
ハルは少し考えて、総一郎に答えた。
「う〜ん。どうだろ?雰囲気にもよるんじゃない?
不気味なところで変なとこ見てたら、なんか見えてんのって聞きそうだけど。」
「そうかもね。でも、誠一兄さんは特に怖がってる様子もなくて、むしろ楽しそうに探索してたから、今考えると変だなって。
もし、誠一兄さんにも桜さんが見えてたとしたら、ひょっとしたら、「お前にも見えてるのか」ってことを言いたかったのかも。
で、女のお化けに興味を持つなんて、どれだけ女に飢えてるんだって、思われたのかもしれないんじゃないかな。」
「なるほど。まぁなくはないかな。
普段もお父さんはお化けが見える素振りはあったの?」
ハルは屋敷の話は納得して、総一郎に次なる質問をした。
「それが特に気になるところはなかったね。
ただ、ひょっとしたら、無理やり元気に見せてごまかしてたのかもしれない。
それくらい小学生の時は、常にハイテンションだったから。
中学生になるとだいぶ落ち着いたけど、お化けに慣れたってことなのかも。」
「…お化けが見える私からしたら、テンションでごまかすのは分からなくもないかも…」
ハルは妙に納得してしまった。
「でだ。ここで誠一兄さんの強さについてなんだけど、本当に心が読めるのかと思うくらい攻撃を避けるのが上手だったんだよ。
それでひょっとしたら、お化けの見える人って心が読めるんじゃないかなって思ったんだよ。」
総一郎はこれまでより楽しそうな顔をして、説明しだした。
「…また、なんか思いついたんだ。
折角だから、聞いてあげるよ。」
ハルは父親の話をしていたのにどうしてこうなったと思ったが、とりあえず、総一郎の話を聞くことにした。
「えっとね。お化けの見える人は「お化けの波」、所謂「思い」とか「心残り」を感知するアンテナを持ってるってのは今まで散々話してきたよね。
じゃあ、別にお化けだけじゃなくて、人の「思い」も感知できるってことだ。
ただ、普通はそんな感じれるほどの強い「思い」を発していることがないから、感知できないけど、喧嘩の時の殺気みたいな強烈な「思い」は感じ取ることはできるんじゃないかな。
それで誠一兄さんは喧嘩で百戦錬磨だったのかもしれないなと。」
総一郎は喜々とした表情で説明した。
「だから、ハルにもそういうことができるんじゃないかと思ったんだ。
例えば、ハルって初めての空手大会で優勝したけど、決勝戦の最後、華麗に相手の突きを避けて、上段蹴りを見事に決めたでしょ?」
「うん!あれは一生忘れないね。
めちゃくちゃ気持ちよかったもん!」
ハルは昔のことを思い出して、うれしそうな顔をしていた。
「それがちょっと不思議なんだよ。
僕は格闘技の経験がないから、恐らくになってしまうけど、攻撃を避けるって、経験が何より大事だと思うんだ。
肩がこう動いたから、こういう動きで突きがくるとか、要は初動を感じ取って避けないといけない。
それはたくさんの実戦経験を積むことで養われていく技術だと思う。
でも、空手を初めて間もないハルがあんなに見事に相手の突きを避けることができだのは相手の殺気に敏感だったからなのかもってね。」
ハルは心当たりがあるのか、何かを思い出すようにつぶやいた。
「確かに…言われてみると、私、相手の攻撃を読むの得意だわ。
今でもカウンター型というか相手の攻撃を避けてから、次の攻撃に移るスタイルだし。」
「納得してくれたようでよかったよ。
…あれ?でも、なんの話してたんだっけ?」
総一郎は説明を終えて、すっきりしたが、元々の話題を忘れてしまった。
「お父さんの話だよ!」
ハルは怒った様子で、総一郎に言った。
「あ、あぁ、ごめん!ちょっと脱線しちゃったね。
まとめると、誠一兄さんはとにかく元気で楽しい、喧嘩の強い人で、僕のヒーローみたいな人だったよ。」
総一郎はすごく簡単に誠一について、まとめたのだった。
「まったく、そういうとこだよ。総一郎は。」
ハルはムスッとしたが、面白い話だったので、許すことにした。
総一郎はそういえばとハルに問いかけた。
「でも、どうして、お父さんとお母さんのことを聞いてきたの?
…ひょっとして、寂しくなっちゃった?」
総一郎は不安そうな顔をしていた。
ハルは慌てて、総一郎に言った。
「ち、違う違う!もう6年生なんだよ!大丈夫だよ!
今日、たまたま遥香ちゃんとヨッシーとそういう話してさ。
ちょっと気になっただけ。全然寂しくないよ!
たださ…」
ハルは物憂げな顔をして、話を続けた。
「…もうお父さんとお母さんがいなくなって8年も経ったじゃん?
それで、二人の声とか顔とかもうっすらとしか覚えてなくてさ。
それって、いいのかなってふと思ったんだよ。
こんな忘れちゃって、お父さんとお母さんは悲しんでないかなって。」
総一郎は優しく微笑んで、ハルの頭を撫でた。
「ハルはやっぱり優しいよね。
そういうことを考えられるってのはハルの本当にいいところだと思うよ。」
「そうなのかな?」
ハルは頭を撫でられて、少し恥ずかしそうにしていた。
「僕が思うに、人間の記憶っていうのは今、その人に必要なことだけを頭の中にためていくことなんじゃないかな。
楽しかった記憶は将来もこうやって生きていこうって考えるための記憶。
辛かった記憶は将来は二度とそんな思いにならないように考えるための記憶。
それで、忘れてしまった記憶は忘れた方が将来の枷にならないような記憶なんだと思うよ。
だから、忘れるっていうのは決して悪いことじゃないんだよ。」
総一郎はハルに優しく説明した。
そして、撫でていた手を止めて、ハルを見つめて総一郎は言った。
「だから、ハルに必要な分のお父さんとお母さんの記憶は絶対になくならないよ。
優しかったこと、楽しかったこと、怒られたこと。
そういうのを時々思い出すだけで、十分、誠一兄さんもハルのお母さんも嬉しいと思うよ。」
ハルは総一郎の言葉を聞いて、少し考えた後、総一郎に言った。
「…いや、まだ納得できないな…」
「えぇ~そ、それは困ったな…」
総一郎はせっかく良いことを言ったのにと、頭を掻いた。
「良し!実際に死んだ人に聞いてみよう!」
「えぇ~」
元気よくとんでもないことを言い出したハルに総一郎は驚いた。
「桜おねぇちゃん!死んで、誰かに忘れられるって悲しくない?」
ハルは突拍子もない質問をゲームをしている桜に聞いた。
すると、ゲームをしている桜は視線をゲーム画面に維持したまま、答えた。
「…あなたは最近、益々大胆なことを言うようになりましたね…」
ハルは胸を張って、桜に言った。
「だって、他の人のこと気にしすぎって、桜おねぇちゃんに言われたから、思ったことはどんどん言おうと努めてるんだよ。」
桜はため息をついて、呆れた様子でハルに言った。
「私も余計なことを言ってしまったかもしれませんね…
…で、忘れられるのが悲しいかどうかでしたっけ?
答えは「別に」です。」
ハルは桜のシンプルな答えに納得できずに、再び聞いた。
「ホントに?親しかった人に忘れられるって悲しくない?」
「私が死ぬ頃には親しかった人などいませんでしたから。
唯一の理解者である健次郎様は先に逝かれてしまわれましたし。」
桜は食い気味にハルに答えた。
ハルはしまったと思い、桜に丁寧に謝った。
「え、えっと、ごめんなさい。
無神経なことを言ってしまいました。」
桜はまたもため息をついて、ハルに言った。
「私は他の人を気にするなとは言いましたが、何でもかんでも考えずに喋るのは違うと思いますよ。
礼儀はしっかりしてください。」
「…はい。反省してます。以後、気を付けます。」
桜の指摘を真摯に受け止めたハルだった。
しかし、ハルはふと気になって、桜に聞いた。
「でもさ、ご主人様の奥さんも優しくしてくれてたんだよね。
その人は生きてたじゃん。
奥さんが桜おねぇちゃんのこと忘れてたら、悲しくない?」
桜はゲームの手を止めて、ハルの方を向いて、言った。
「むしろ、逆ですね。
私のことなんか早く忘れてほしかったですよ…」
桜は悲しそうな顔をしていた。
ハルは何かを察して、桜に聞いた。
「…奥さんに何かあったの?」
桜は少し考えて、ハルに言った。
「…これは私にとって、死んでから最もきつかった話です。
この機会に話しておきましょう…」
そう言って、桜は話し始めた。
「…私が死んで、この屋敷にお化けとして現れた時、初めて聞こえてきたのは奥様の泣き声でした。
恐らく、奥様が私たちの第一発見者だったようです。
奥様は健次郎様の遺体と私の遺体を抱きながら、泣いていました…
それはもういたたまれませんでした…」
「それから、奥様は私達の葬儀を行ってくれていました。
なんて優しい人でしょうか…
あれだけのことをやってしまった私達に対して、これほどまで…
…ですが、それから奥様は心身を病んでしまい、私たちが死んで約1年後に亡くなってしまいました。」
これまで見たことのない悲しそうな桜を見て、ハルは泣きそうになった。
そして、桜は表情をいつもの無表情に戻して、ハルに言った。
「だから、生きている人間が死んだ人間について思い悩むなんてことはやめておきなさいと、いつも言っているのですよ。」
桜の話を聞いて、ハルは俯いて黙ってしまった。
隣にいた総一郎はハルの悲しそうな顔を見て、黙って肩を抱いてあげた。
桜はハルの様子を見て、しょうがないとハルに軽く言った。
「要は総一郎の言う通り、お墓参りとか何かのきっかけがあって、時々思い出してくれるだけでいいんですよ。
それだけで嬉しいものです。
お化けだって、残された人間には幸せになってほしいものもいるんですよ。
例えば、私のような優しいお化けは。」
ハルは桜の方を向いて、しかめ面をして言った。
「桜おねぇちゃんが優しいお化け?」
「…それ以上言ったら、リモコン飛ばしますよ…」
桜はリモコンに指さして、ハルを脅した。
ハルは頭を手で防御しながら、桜に言った。
「うそうそ!冗談だって!!
…でも、ありがと!!
なんか、良く分かんないけど、話聞けて、嬉しかったよ!!」
桜はフンと言って、ゲームに戻った。
ハルは気づいたような顔をして、桜に聞いた。
「お葬式があったってことは、桜おねぇちゃんのお墓ってあるんだよね?
今度行ってみようよ!!」
「嫌ですよ!
なんで自分の墓に行かないといけないんですか。
そもそもお墓参りとは成仏した人のことを思う行いであって、私は成仏してませんからね!」
桜はハルの方に振り返って、突っ込んだ。
「そ、それもそうだね。失礼しました。」
「まったく!」
そして、桜は再びゲームを再開した。
「桜さんはどう言ってた?」
総一郎はハルに桜と話した内容を聞いた。
「やっぱり、死んだ人のことをずっと思い続けるのはダメだってさ。
お化けも生きてる人に気にせず、幸せになって欲しいって。
時々、思い出すだけで十分みたい。
私はそれで納得したよ。」
ハルはすっきりした顔で総一郎に答えた。
「それは何よりだよ。
やっぱり、桜さんは本当にす…」
総一郎が最後まで話そうとしたところをハルが口を抑えて止めた。
「だからさ、総一郎…
学ぼうよ…」
ハルは呆れた様子で総一郎に言った。
総一郎はもごもごと、はいと言いながら、頷いたのであった。
続く
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