第5話 付喪神(つくもがみ)

 小学三年生の夏休み、ハルが総一郎の屋敷にきて一年がたった頃、ハルは時間があるので、せっかくだからといつもより気合を入れて屋敷の掃除をしていた。


「よし!」


 ハルは額の汗をぬぐいながら、一階の物置で掃除をしていた。

 一年前はゴミ袋でいっぱいだった部屋も、ハルのおかげで今ではすっかりきれいになったものだった。

 今日は隅々までピカピカにしてやるぞと意気込んでいたハルはタンスの隙間に何かあるのを発見した。

「なんだこれ?」

 ハルは小さな隙間に手を伸ばして取ろうとしたが、届かず、ほうきを使って、ぐいっとタンスの隙間からその何かを取り出した。

 それは電気機器のようなもので、コンセントがついていて、何かをはめ込むような形状をしていた。

「…なんだこれ?」

 取り出しでもなお、いったい何なのかが分からず、総一郎の元に向かった。

「総一郎。これ何?」

 居間で本を読みながら、くつろいでいる総一郎にハルは尋ねた。

「ん?どれどれ?」

 総一郎はそう言って、ハルの持っているものを手に取って観察した。

 しかし、総一郎は小学3年生に掃除をさせといて、自分はゆっくりくつろいでいるとはとハルは呆れた。

「…ホント、まったくそういうとこだよ…総一郎は」

「えっ?な、何?急に?」

 総一郎は急に責められて、たじろいだ。

「別に…で、これって何なの?」

「これは多分、自動掃除ロボットの充電器だよ。どこにあったの?」

「あぁ~~あれの充電器か!やっと見つかったよ!でも、物置のタンスの間に挟まってたよ。

 なんで、あんなとこに置いてたの?」

 ハルは今までずっと探していた自動掃除ロボットの充電器であると分かって、テンションが上がりつつ、総一郎に聞いた。

「そうだ!そこに置いたんだった。すっかり忘れてたよ。

 結構前に友人にもらったんだ。「これなら、お前の家もきれいになるだろ」って。

 それで使ってたんだけど、だんだん掃除できるスペース自体がなくなっていったから、一旦、大事にしまっとこうと思ったんだよ。本体は行方不明になったんだけどね。」

 総一郎は事もなげに答えた。

「…で、なんでタンスの隙間にその大事なものを隠すように置いてたの?」

 ハルは頭を抱えながら、総一郎に聞いた。

「形状からいって、あそこが最もすっきり収まるところだったからだけど。」

「…理系っぽいことを言ってるけど、ただただ、だらしないだけだから!それ!

 すっごい出しにくかったんだから!

 これからは何かしまう時は私に言ってね!」

 ハルは総一郎のだらしなさを怒った。

 総一郎は未だに何が悪かったのか、分かっていないようだったが、反省した顔で答えた。

「はい。大変申し訳ありませんでした。」

「まぁ、とにかく早速、掃除ロボットを充電しよう!!これで掃除が楽になるぞ!!

 総一郎ももちろん手伝ってくれるよね?」

 ハルは少し脅し気味に総一郎に言った。

「はい!!喜んで!!では、取ってまいります!!」

 総一郎はシャキッとして、掃除ロボットを取りに行った。


「…でこのポコッと出てるところと、充電器の中心のここを合わせるように置けば…」

 総一郎は充電器のコンセントをさして、掃除ロボットを充電器にセットした。

 すると、ピロンと電子音が鳴って、掃除ロボットの緑のLEDが光った。

「おぉ!!動いた!!すごい!!」

 ハルはテンションが上がった。

「これでしばらく待ってれば、勝手に付近を掃除してくれるよ。

 …しかし、本当壊れてなくてよかった…」

 総一郎は随分動かしてなかったため、無事動いて良かったとハルに叱られずにすんで、安心したのだった。

 ハルは一瞬、また小言を言ってやろうかと思ったが、とりあえず、掃除ロボットを撫でてやりながら言った。

「これからは大事にするから、頼むよ~」


 それから掃除ロボットはハルの代わりに一階を掃除してくれるようになったのだが、気づくと椅子の下に挟まってたり、外に出て庭の草原で息絶えていたり、ハルはその度に充電器に戻す作業をして、楽になったどころか、むしろ運動量が増えたように感じた。

 しかし、それでも懸命に掃除をし続ける不器用な掃除ロボットの様子を見ていると、ハルと総一郎はなんだか可愛くなってきたのだった。

「なんか、名前を付けたくなるね。」

 ある日、総一郎は掃除ロボットを見ながら、つぶやいた。

「確かに!何がいいかな?う~ん…」

 ハルは総一郎の案に乗っかって、すぐにロボットの名前を考え出した。

「…不器用とはいってもハイテクな機械だからな~

 ハイテク君?・・・いや、ハイテ君にしよう!」

 ハルは満面の笑みで掃除ロボットに名前を付けた。

「…そのネーミングセンスはどうかと思いますよ…」

 ゲームをしていた桜は微妙な顔をして、ハルに言った。

「い、いいじゃん!!かっこいいでしょ!!総一郎もそう思うよね!?」

 ハルは総一郎に詰め寄った。

「う、うん。かっこいいかは置いといて、とんちの効いた良い名前だと思うよ。」

 総一郎も微妙な顔をしていたが、ハルに賛同した。

「よし!お前は今日からハイテ君だ!!これからも頑張ってよ!!」

 ハイテ君は黙々と掃除をしていた。


 ハルは一層ハイテ君を大事に扱うようになった。

 すると、ハイテ君は徐々に椅子に挟まるようなことがなくなり、どこか分からないところで充電切れになることなく、ちゃんと充電器に戻ってくるようになった。

「AIってやつだね。この屋敷の状態を学習して、賢くなったんだよ。」

 総一郎はそう言ってハイテ君の成長をハルに説明した。

 ハルはロボットも学習するんだと驚いて、充電器に戻っているハイテ君を撫でたりしていた。

 その後もハイテ君は黙々と掃除をしてくれたので、ハルの掃除の手間を少なくなったのだった。


 夏休みが終わり、2学期が始まって少しした頃、ハルが帰宅すると、ハイテ君がまるで、待っていたかのように玄関にいた。

 それを見たハルは少しおかしくなり、笑ってハイテ君に言った。

「ただいま。ハイテ君。出迎えてくれたのかな?

 それにしてもこんなところで充電切れなんて珍しいね。」

 ハルはハイテ君を充電器に戻そうとしたが、緑のLEDが点灯していたので、不思議に思った。

「あれ?まだ、充電切れてないじゃん。

 なんで動いてないんだろ?…まさか、壊れた!!」

 ハルは慌てて、ハイテ君を持ち上げて確認したが、吸い込み口に物が詰まっていたり、ローラー部分に何か挟まってる様子もなく、動いていない原因が分からなかった。

 とにかく一旦充電しといて総一郎が帰ってきたら、聞いてみようと、ハルは充電器にハイテ君をはめた。

 そして、2階の自室に行き、ランドセルを置いて、桜とゲームでもしようかなと、また、1階に向かった。

 すると、ハイテ君が階段下で動いていたのだった。

「よかった!やっぱり、充電が切れてただけだったのか。」

 ハルは安心して、居間に向かうと、ハイテ君がハルの後ろを追尾しているかのように動くのだった。

 ハルは自分の足がそんなに汚れてたのかと立ち止まって足裏を見たが、そんなことはなかった。

 その時、ハイテ君もハルと同時に止まっていた。

 ハルはもしやと思い、動いては止まり、動いては止まりを繰り返すと、ハイテ君もハルの後ろを同じように動いては止まり、動いては止まりを繰り返すのだった。

「すごい!ハイテ君!賢いね!」

 ハルはその姿を可愛く思って、ハイテ君を撫でた。

 すると、ハイテ君は赤のLEDを点滅させて、クルクル回ったのだった。

 ハルはそれを見てゲラゲラ笑いながら、AIってやつは凄いなと、改めて感心した。

 ひとしきり楽しんだ後、ハルは居間に行き、ゲームをしている桜に言った。

「見て見て!ハイテ君、すごいんだよ!」

 ハルは居間をグルグル回って、後ろをついてくるハイテ君を桜に見せた。

 それを見た桜は少し驚いたものの、無表情で言った。

「確かに。驚きましたね。これ程まで技術は進んでいるのですね。」

 桜はゲームに視線をすぐに戻した。

 言葉よりも驚いてない様子の桜を見て、つまらない表情をしたハルは桜に聞いた。

「…もしかして、桜おねぇちゃんが動かしてるの?」

 桜はそのままゲームをしながら、答えた。

「そんなこと出来ませんよ。私はそれを動かそうとしたことはありますが、動かせたことはないですよ。何故か出来ないんです。」

「そうなんだ。じゃあ、やっぱりハイテ君はすごいんだ!」

 ハルは桜が意地悪でハイテ君を動かしてると思ったが、どうやら違うようで安心した。

 その後、ハイテ君とひとしきり遊んだのだった。


「ただいま〜」

 総一郎が帰ってきたので、ハルは早速ハイテ君の賢いところを見てもらおうと、総一郎の元に向かった。

「おかえり〜ハイテ君、すごいんだよ!」

 テンションの高いハルを見て、総一郎は笑って聞いた。

「ただいま。ハイテ君がどうしたの?」

「まぁ、ちょっと見てて!

 ハイテ君!おいで〜!」

 ハルが呼ぶと、その呼びかけに応じるようにハイテ君が玄関にいるハルのところまで来たのだった。

 そして、ハルが玄関をグルグル回るとハイテ君はハルの後ろを追いかけるようについてきた。

 その様子を見た総一郎は言葉を失っていた。

「どう?すごいでしょ!!ハイテ君、賢くない?」

 ハルは満面の笑みで総一郎に言った。

 総一郎は今までで一番驚いているようで、真剣な顔で呟いた。

「…ありえない…一体どうやって…?」

 総一郎の様子を見て、ハルは少し戸惑った。

「そ、総一郎?どうしたの?AIってやつじゃないの?」

 総一郎はハッとして、いつもの笑顔で答えた。

「い、いや。ごめんごめん。ちょっと凄すぎて、びっくりしちゃった。

 とりあえず、一回落ち着いてから、説明するね。」

 そう言って、総一郎は自室に着替えに行った。

(今までお化けやら、何やらあったのに、それよりもそんなにびっくりすることなのかな?)

 ハルは不思議に思った。


「いや〜これは本当に凄いよ。ハル。こんなことってあるんだね。」

 居間のソファーに座って、総一郎は先程とはうってかわって楽しそうな表情をしていた。

「そんなに凄いことなの?これって。」

 ハルはハイテ君を撫でながら、総一郎に聞いた。

「うん。ハイテ君はロボットと言っても掃除用ロボットだ。

 そのハイテ君が掃除ではない目的で動いていることが普通じゃありえないんだ。」

「そうなの?AIってやつで賢くなっただけじゃないの?」

「AI、つまり人工知能っていっても、種類があってね。

 掃除ロボット用のAI、データ管理用のAI、人型ロボット用のAIとかね。

 で、ハイテ君の場合は掃除についてだけしか賢くならないはずなんだ。その分野に詳しくないから、恐らくになるけど、空間的な把握しかできないはずなんだよ。

 例えば、どこに行ったら物にぶつかるかとか、どこに段差があるとか、どういうコースが省エネになるとか、そういうことしか学ばないはずなんだ。」

 総一郎は携帯で掃除ロボットについて調べながら、説明した。

「じゃあ、ハイテ君は掃除のこと以外で賢くならないってこと?」

 ハルはなんとなく理解して、総一郎に聞いた。

「そういうこと。だけど、ハイテ君は明らかに掃除とは関係のない動きをしている。

 まるで感情があるかのように動いている。

 人型ロボットならまだしも、掃除用ロボットがこんな挙動をするのはおかしい。

 これは科学者からしたら、ありえないことなんだよ。

 だから、びっくりしたんだ。」

 総一郎はハイテ君の様子を見ながら、目をキラキラさせて説明した。

「でも、今まで桜おねぇちゃんが機械動かしてるの散々見てきてるから、そんな驚かないと思ってたよ。

 むしろ、そっちのがすごくないの?」

 ハルは桜がゲームをしているところを見ながら、思った。

(総一郎には何もないのに、ただ画面が動いている様に見えてるんだろうけど、絶対こっちのがおかしいと思うんだけど…)

 総一郎は笑って答えた。

「もちろん。桜さんのしてることもありえないし、びっくりしてるよ。

 でも、実はゲームとかPCとかのボタン操作って、物理的にみるとすごく単純な物なんだ。接点を繋げてオンオフさせてるだけだからね。

 だから、やれないことはないのかな〜くらいには思ってたんだよ。」

 ハルは確かに桜がやってるのは実質、ボタンを押してるだけかと少し納得した。

「ハイテ君を動かそうと思うと、数kgの筐体を動かさないと行けないから、よりエネルギーがいるし、内部の命令信号に干渉するっていっても感情的な動きなんて、めちゃくちゃ複雑な命令になるしで、ボタン操作とは難易度がまるで違うんだよ。

 多分、桜さんもハイテ君を動かすことは出来ないんじゃないかな?」

「うん。桜おねぇちゃんも動かせないって言ってた。

 そういうことだったんだ。」

 ハルはハイテ君の動きの凄さを少し理解した。

「じゃあ、なんでハイテ君はこんな動きが出来る様になったんだろ?」

「さすがにそれは僕も何も説明ができないよ。

 本当に世の中まだまだ分からないことはたくさんあるね〜」

 ハルは分からないのに楽しそうな総一郎の顔を見て、変なやつだなと呆れた。

 すると、珍しくゲームをやめた桜がハイテ君のところに来て言った。


「所謂、「付喪神(つくもがみ)」ってやつじゃないですか?」


「つくもがみって?」

「物に人の精神が宿るってやつですよ。

 髪の伸びる人形とか、聞いたことないですか?」

「あぁ〜聞いたことある。

 じゃあ、ハイテ君に人の精神が宿ったってことか…

 なんか、それっぽいね。

 …でも、なんで?」

 ハルはハイテ君が人の精神が宿った付喪神だと、納得はしたが、全く原因が分からず、すぐに桜に聞いた。

 桜も興味を持ったのか、考え出した。

「…一般的に言われている付喪神というものは、長い年月使用されたものだったり、作り手の気持ちが乗り移ったものだったりします。

 要は物を大切に扱うことで、その人の精神が宿ると言われています。

 元来、人をたぶらかすものの意味合いが強かったそうですが、今ではそれほど悪い印象を持つものではありませんね。」

 桜は付喪神について、ハルに説明した。

「ハイテ君の場合は私の精神が宿ったってことになるのかな?」

「恐らく、そうじゃないかと。」

「そっか〜ちょっと嬉しいかも。」

 ハルは笑顔でハイテ君を撫でた。

「なるほど。付喪神か…」

 総一郎はハルと桜との会話の内容を大体予測して考えていた。

「そういうことなら少し納得できるかもしれない。

 ハルがお化けとコミュニケーションできる専用のアンテナを持ってるとすると、ハル自身も電気機器に干渉しやすい性質はありそうだしね。

 ハルの思いは他の人よりも機械に伝わりやすいのかもね。」

 なんだか急に難しいことを言われて、ハルは戸惑ったが、なんとなく理解した。

 ふと、ハルは総一郎の言葉で気になったことを総一郎に聞いた。

「他の人って、普通の人の思いも機械に、というか物に伝わるものなの?」

 総一郎は笑って答えた。

「僕はそうだと思ってるよ。例えば、携帯や車を買い換えようとか思ったら、調子が悪くなったりって、結構あるあるだしね。

 僕の場合、子供の頃、プラモデルを雑に扱った時、そのプラモデルのパーツを踏んで、すっごい痛い目に遭ったことがあるよ。

 あれはきっとプラモデルが僕に仕返ししたんだよ。」

 ハルはなるほどと思ったが、最後は違うと思い、総一郎に言った。

「それは、総一郎がただちゃんと片付けなかっただけでしょ。」

「はは…そうかも…」

 総一郎は苦笑いした。

 そして、また少し考えて総一郎は言った

「そう思うと、お化けっていうのは案外、皆で作り出してる物なのかもね。」

「急にどゆこと?」

 ハルは総一郎のいきなりの方向転換に聞かずにはいられなかった。

「生きてるどんな人間でも「思い」ってのは持ってて、それは物に伝わるほど強いものがある。

 で、お化けってのは死んだ人の強い「思い」の塊みたいものかもって話はしたよね?

 じゃあ、生きてる人でも「思い」が集まれば、お化けみたいな「思い」の塊を作り出せるんじゃないかってことだよ。生霊なんてものもあるくらいだしね。」

「つまりはお化けの中には、私たちが勝手に作っちゃってるものもあるかもってこと?」

 ハルはなんか変な話だなと思いながら、確認した。

「そうそう。というか、世間で言われているお化けの大半がそうなんじゃないかな?

 都市伝説とか妖怪とかが最たる例で、皆が共通した姿を思い浮かべることで、その「思い」が重なって、お化けになる程の塊になるんじゃないかと、ふと思ったんだよ。」

「なるほど。確かにそうかもね。」

 総一郎の話を聞いて、ハルはうんうんと唸って、納得した。

「…しかし、お腹減っちゃったよ。そろそろ、ご飯にしない?」

 総一郎はお腹をさすってハルに頼んだ。

「そだね。じゃあ、サクッと作りますか!」

 ハルはそう言って、ハイテ君を連れて台所に向かった。

 桜は気づくとゲームに戻っていた。


 食事を食べ終えて、ハルが食器を洗っていると、珍しく、総一郎が手伝いに来た。

 そして、お皿を洗いながら、真面目な顔でハルに言った。

「…今日の話だけど、お化けは僕達が作ってるのかもって話。

 あれね。最初に思いついたのは実は龍君のことがあった時なんだ。」

 総一郎の言葉を聞いて、ハルは手を止めて、総一郎の方を見た。

「あの時、川田師範が龍君を道場に縛っていたって話したけど、もし、生きている人間にそんなことが出来るとしたら、恐ろしいなと思ったんだ。」

「恐ろしい?」

 ハルは少し怖くなって総一郎に聞いた。

「うん。川田師範は優しかったからよかったけど、世の中にはもっと汚い、醜い強い「思い」を持っている人もいると思う。

 そういう人の「思い」が化けて出たお化けとハルが出会ってしまったら…もしくは、日常的に出会ってるんだとしたら、怖くなって、心配になってね。」

 総一郎も手を止めて、心配そうな顔をして話した。

 ハルは黙って総一郎の顔を見て聞いていた。

「前にハルに軽はずみに「理解すれば、怖くないよ」と言ったけど、理解できない考え方を持っているお化けも少なからずいるはずだ。

 だから、そういうお化けに出会ってしまったら、必ず逃げること。理解しようと頑張らないこと。

 これを約束して欲しいんだ。」

 そう言って、総一郎は右手の小指をハルに出した。

 ハルも右手の小指を総一郎の小指にかけて、言った。

「うん!心配してくれて、ありがと!

 分かった!約束するよ!

 今まで、そういうお化けにあってるけど、逃げれてるから、心配しなくて大丈夫だよ!」

 そして、二人は笑いながら、指切りをした。

 ハルはお化けが見えることをこんなに心配されたのは初めてだったので、嬉しかった。


 翌朝、ハルは学校の準備をして、自室から一階に向かうと、階段下にハイテ君が待ち構えていた。

 ハルは笑ってハイテ君に言った。


「おはよう!ハイテ君!出迎え嬉しいけど、掃除もちゃんとしてね〜」

 ハイテ君はハルの言葉を聞いてか、慌てて、周囲を掃除し始めるのだった。


 続く

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