第21話 サブカルの常識は舞台に通用しない

 アニメやマンガにはちょっとうるさい僕には、僕なりのこだわりがあった。


「キャラには一貫性が……」


 その瞬間、かすみセンパイの一喝が僕の反論をアタマ打ちする。


「キャラに一貫性があるのと変化がないのは違う!」


 そしてセンパイが説明したのは、こういうことだった。

 キャラは一貫しているもの。しかし、状況の変化は最初とは異なる側面を引き出す。

 だけど、その、一人の人間に二つの性格があるということが理解できなかった。


「それは二重人格……」


 再びの反論はムダに終わった。また、アタマ打ちの一喝だ。


「二重人格と内面の矛盾は違う!」


 センパイはしつこく説明する。

 同じ状況下で違う行動をとれば二重人格だが、少しでも違いがあれば、その違いが変化を引き出したと見るべきだ、と。


 でも、やっぱり僕は納得できなかった。


「でも、キャラが決まっているから、それに応じて行動も決まってくるんじゃないんですか?」


 途中でキャラが今までと違うことをしたら、アニメでもマンガでもラノベでも、読者はついてこられない。

 でも、それを口にすると、かすみセンパイはぴしゃりと言い返した。


「最初から相反する性格があったのよ」

「相反する性格があったら、二重人格じゃないですか」


 なおも食い下がる僕の前で、かすみセンパイは、また目の前で机をぶっ叩いた。


「くどい!」


 目を怒らせたセンパイの顔が近づく。それは鼻と鼻とがぶつかるほどの距離まで近づいた。


「……え?」


 艶のある、可愛い唇が目の前に迫って、思わず息を呑んだ。

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