第22話 人は幾つもの顔を持つ
「あんた、親の前でそういう口答えできる?」
僕はオフクロの顔を思い出した。あのヒステリー。思い出すだけでムカっとくる。
口を開けば、進学のことしか言わない。というか、何言ってるのか分からない。
オマエの息子だ!
オマエが選んだオヤジの息子だ!
つまらない見栄で、僕にプレッシャーかけないでほしいな!
なんて口答えは……やったことない。だけど、キレたらできるかもしれない。
「できるさ」
努めて平然と答えてみせたけど、わざとらしかったかもしれない。
かすみ先輩は驚いたような顔で、へえ、と相槌を打ちはしたが、すかさず突っ込んできた。
「じゃあ、アンタんとこの担任には?」
確かに、あの担任は結構うるさい。態度や言葉遣いに細かい。ちょっと言い間違えたり、ちょっと気が緩んだりしただけなのに物凄く怒鳴られる。
いっぺんキレてみるのもいいかもしれない。……勇気いるけど、たぶん。
「できる……かも」
ちょっと勢いはなかったかもしれないけど、そう答えてはみせる。
そこに、かすみセンパイはもっともらしく頷きながら踏み込んできた。
「じゃあ、たとえば退学寸前になっても校長にそういう態度取れる?」
たとえの踏み込み方がが極端すぎる。できるわけない。
「それは……」
僕が口ごもると、かすみセンパイは真面目な顔をしてみせながら、トドメを刺してきた。
「二重人格者ってことになるよ、アンタ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます