エピローグ

 二十日以上に及んだ王都攻防戦は、竜の発動した落雷を機に、戦況は逆転、反乱軍は壊滅し、首謀者ゲラルフ・ゲシュリエクトと、その協力者セス・カークラスの捕縛をもって、終結を見た。


 王宮と王都の人々は解放され、宰相がスレイベンで戦う王に向けて、終戦を報告する伝書を飛ばした数日後、南から飛んできた鳥が伝えたのは、王の馬人族鎮圧とオルダス州候ジャラド・ゲイについて知らせるものであった。




「お父様から帰還の連絡が来たわ!」


竜卵宮の部屋に飛び込んできたステラは、開口一番こう言った。


「馬人族の鎮圧が完了したって?」


まだ朝食の途中だった正行は振り返りながら言う。


「ええ。でも、こちらが落ち着いたから、予定よりもゆっくり帰ってくるって」



 王は馬人族鎮圧後、即座に王都に帰還する計画だったが、既にその必要はなくなった。戦で疲れた兵達を休ませながら、余裕を持って帰ってくるだろう。しかし、まだ全ての問題が解決したわけではなかった。

 

 馬人族の鎮圧後、王都からの鳥でジャラドの背信を知った王は、即座に鷲騎士隊百をオルダス州に差し向けた。ほぼ全ての鷲を王都に送り、そこで失ったジャラドは国王の鷲騎士隊を見て、即座に降参、そのまま捕縛された。


 捕縛されたジャラド、さらに王都にて尋問を受けたゲラルフの口からは、彼の妹ギサ・ゲシュリエクトの名前が出たが、王たちの主軍がイノダに到着した時、既に彼女はイノダの居城から姿を消していた。




(お前の勘が当たってたな)


正行は木陰の下、空を見上げながら、いつかアイトラが言った言葉を思い出していた。


(ゲラルフの妹が黒幕だった)


アイトラは芝生に体を横たえて、眠たそうに正行を振り返った。


(あいつはまだ、どっかで生きてる)


(そうだな――)


 しかし、ゲラルフの乱は終わった。反乱に加わったディメリアとオルダスは首謀となったスレイベンと共に、州候以下、一新され、安定化がなされるだろう。ギサは逃亡したが、既に力は失った。



――今はそれでいい



 夏が終わる頃には王が帰還し、再び風竜国には穏やかな風が吹くだろう。爽やかな、白縹色しろはなだいろの風が。




第一部 完


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