第16話

 姉さんは息を荒くしていた。興奮状態であることなど、一目で分かるほどに顔が赤く、そして見るからに熱くなっていた。もっと密着するように、僕の体を抱き寄せる。姉さんの吐息が耳に当たる。やべえ、なんだこのエロい姉さんは。息の吐き方とか、その際にちょっとだけ出るエロい声とか、もうなんか色々とすごいぞ。


 でも状況や行動からは読み取れない。姉さんはさっき、『我慢できそうにない』と言っていた。何を? 何が? 我慢できない? いや、まさかな……。


 姉さんの体が動き、ベッドのシーツがシャカシャカと鳴る。


「和くん……。抵抗しないってことは、受け入れてくれるっていうことでもあるんだよね……? ねぇ、そうでしょ……?」

「その前に、姉さんは何をする気なの? それを教えてほしいな」

「子作りですけど……。でもちゃんと避妊するつもりだから、ただの性行為なのかな……?」

「へ、へぇー……」


 それで僕の初めてを……、とか言ってたのか。なるほど、完全に理解した。つまり僕は今から童貞卒業できるというわけだ。しかもその相手が姉さん。


「妙に冷静なんだね……。お姉ちゃんは興奮しすぎて、上手く言葉が出てこないよぉ……」

「僕も興奮してるんだよ。心臓も暴れてる。冷静に見えるだけなのさ。内心は恐怖心と警戒心と興味だけどね」


 覆い被さっている姉さんは、僕の腹のあたりに腰を移動させ、馬乗りの状態になっている。そして僕が喋った後に服を脱ぎ始めた。身動きが取れない僕は、ただその光景を下から見ているのみである。


「うわぁ、すげぇ、でけぇ」

「ふふふ……。和くんの大好きな、お姉ちゃんのおっぱいだぞぉー……?」


 柔らかそう。下着を取った姉さんは自分の胸を両手で持ってアピールしながらそう言う。


「和くんも脱ごうねー……」

「自分で出来るよ。わざわざやらなくても……」

「あれれー? 和くんもだいぶヤる気になってきたのかなぁー?」


 その言葉に身が硬直する。僕は、ヤりたいのか? 姉さんと、ヤりたいのか? ここで、この姉さんの部屋の姉さんのベッドで姉さんと、ヤりたいのか?


 僕はどうしたいんだ? どうすればいいんだ? 分からない。


「困惑してるの? ねぇ、どうするのぉ……?」

「ぼ、僕は……。いや、でも……」

「もう……。和くん? 和くんも納得してたじゃない。バレなきゃいいんだよぉ……。何も考えずに、何も気にせずに、自分のしたいようにすれば、いいんだよぉ……」

「ッ……!」


 その言葉に、僕は動かされた。身動き取れなかったけど、力づくで姉さんを押し倒して、今度は僕が覆い被さった。


 もうどうしようない。どうしようもないくらいに、僕は姉さんのことが好きなのだ。大好きなのだ。


 そして僕は、姉さんの唇に自分の唇を近づけて、キスをした。


 そのあと、最終的には、気持ちいいことをした。


 タガは外れてしまった。



 ****



 分かっていると思うけど、気持ちいいことと言っても、それは耳かきやマッサージといった類いのものでは断じてない。完全に性的な快感のことを指しているのだ。つまり、そうだな、僕は姉さんと性行為に及んでしまったのだ。ヤった、というよりは、ヤっちまったと表現した方がいいだろう。いや、もっと厳密に言えば、ヤられたというのかな?


 しかし僕としても、多少は乗り気だったから、そういう風には思えないか。とにかく、僕はベッドで激しいことを姉さんとしたってわけだ。


 まさか本気で襲ってくるなんてな。すごかった。あんな力、一体どこから……。なんて考える暇があるほどの余裕はなかった。まあ、それは最初の方のことだけで、結局のところ僕が襲うようなことをしたわけだが……。


 そして現在、すべての行為が終了し、とても長い休憩をとっている最中だ。隣には姉さんが、僕の腕を枕にして横になっている。疲れて寝るのかもしれないな。


 ああ……。僕も、疲労感がかなりあるな……。姉さんと同じように、同じベッドで……。


 寝れるかぁぁぁぁあ!!! いや、よく考えてみろよ! 初の性行為の後に、何も感じずにいられるかぁぁぁぁあ!!! 無理に決まってんだろ! しかも色々とヤバいだろ! 僕たち、姉弟でやったんだぞ! これからどうすんの? 姉さんはバレなきゃいいって言ってるけど、もしバレた時のこととか考えてんのか?


 チラリと横を見る。気持ちよさそうに寝てる。さっきまでもっと気持ちいいことしてたけど、今は、なんか違う感じで気持ちよさそうだ。


「んぅぅ……。和くぅん……」


 静かに体をくっつけてきた。起きてるのだろうか。それとも寝言かな?


「んぅ……。だぁい好きぃ……」


 可愛すぎるだろ、姉さん。僕は童貞を卒業したのか、姉さんとヤって。現実味がないな。でも横にこうして姉さんが裸で寝ている。


「はぁ……」


 こてん、とこちらを向いている姉さん。僕はなぜだか無性にキスがしたくなったため、姉さんに顔を近づけた。


「んっ……」

「可愛すぎ……」

「ん……」

「僕も好きだよ、姉さん……」


 何度も何度もした。散々した。散々した上で、僕は無性にしたくなった。


『ちゅっ……』


 両親が帰ってくるまで、時間はまだまだたくさんあった。でも流石に、姉さんの体力がもたないから今日はもうおしまいだ。


 おしまいのはずだった。しかし性欲というものは底なしであり、僕たちは親が仕事から帰って来ても、バレないようにヤったのであった。


 そしてその後もズルズルと、タガが外れた僕たちは、快感に溺れていくようになる。問題になるまで、毎日、毎日のように。

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