第4話

「和くん! どうして今朝はあんな酷いこと言うの!? お姉ちゃん、気にして授業をまともに受けられなかったんだよ!?」

「……」


 帰宅してから早々に僕に抱きついてくる姉さん。やめてほしい、と言ったはずなんだけどな……。何も聞いていなかったのかな。いや、聞く耳など持たなかったのだな。


 部活中と同じく胸を当ててくる。これ、完全に意図的に行なってるだろ。優しい感じでふにふにとしてくるのではなく、もう押し付けてくる感じだ。何だこれは! もしかして、これが巨乳の圧ってやつか!


「ね、姉さん、やめて……」

「やーだぁー! 和くんがイジワルしてくるのがいけないんじゃん! 義理の姉弟なのに、本当の姉弟かのように言ったのがいけないんじゃん!」

「別にイジワルのつもりで言ったんじゃなくて……」

「お姉ちゃんびっくりしたもん! 『義理ってことを知らないの?』って思っちゃったもん! でもよくよく考えたら、和くんとお姉ちゃんが姉弟になったのは、和くんが小学校三年生の時だし絶対覚えてるって思ったの! だから和くんがイジワルで言ってるって感じたの!」

「それって姉さんの早とちりじゃないか! 僕は、仮に義理でも姉弟っていう関係であることを言ったんだ!」

「知らないもん! 全部全部、和くんが悪いんだもん!」


 すごい責任転嫁だなぁ。


「だからこうやって和くんが嫌がることをしてるの! これは仕返しなの!」

「それはただの嫌がらせなのでは?」

「違うもん! ちゃんと嬉しがることもしてあげるもん! ほら、ソファに座って!」


 姉さんに無理やり座らせられた。道具棚から一本の棒状のような物を取り出して、『よしっ』と言って姉さんは隣に来た。すると僕の肩に手を置き、自分の方へ引き寄せながら、ソファで横にさせてきた。現在、僕の頭は姉さんの膝、というよりは太ももに乗っている。


 膝枕と言われるやつだ。


「横向いて!」

「いや、その前に何をするのかだけ教えてほしい。そしたら向くから」


 このシチュエーションだとだいたい分かるけど、一応聞いてみる。


「和くんのお耳のお掃除! はい言ったよ!」

「はぁ……。やっぱり……」


 またかよ……。この間もしてもらった気がするんだけど? こういうのって、あんまり何度も何度もするようなことじゃないはずだ。でも姉さんは例外だ。


「はいはい。これでいい?」

「うん! 和くん、お姉ちゃんに耳かきしてもらうの好きでしょ?」

「いつの話をしてるのさ? それは僕がまだ小学生だった頃のことで……」

「お姉ちゃんは……好きだよ……?」

「へ?」


 ドクン、と心臓が強く動いた。


「……耳かきがね」

「ああ、なんだ……」

「んー? なんだ、とは何かなー?」

「い、いいから! 早く終わらせなよ!」

「んふふ……和くん可愛い……!」


 なんだよ、期待しちゃったじゃんか……。


 ん? 期待? これは、なんの期待なんだ? この複雑な感情が、僕は分からなかった。



 ****



 やっと終わった……。結局、僕の耳の中をカリカリとしていただけだったじゃないか。この間やってもらったから、やる必要なかっただろ絶対に。


 僕が立ち上がろうとした瞬間に、姉さんは右腕を掴んできた。そしてまた隣に座らせてきた。なんだよ今度は。まさか、僕にやれなんて……。


「お姉ちゃんも耳かきしてほしいなぁー……。和くんにしてほしいなぁー……」

「だぁー、もう! 分かったよ! やってあげるよ! そのかわり、今晩僕の部屋に入るの禁止。分かった?」

「うん、分かった。じゃあお願いしまーす!」


 やけにウキウキな姉さんが可愛かった。だから可愛いとか思うな、感じるな。そんなふうに自分に言い聞かせた。


 ゆっくりと僕に膝枕をしてもらう姉さん。でも一つ、おかしなところがあった。


「姉さん? なんで僕の方向いてるの? それだと息苦しくない?」

「んー? そんなことないよ?」

「でも、それなら、顔が埋もれることはないと思うんだけど……。僕のお腹というか、下腹部のところにお顔が……」

「別にそんなこと気にしなくていいじゃん。早く早くー」

「う、うん……」


 とりあえず始めてみる。


「んっ……! あっ! はぁっ……!」

「ねぇ、やめてよ! 喘がないでよ! 変な気分になるから!」

「うぅー! 分かったぁー……。じゃあ……こうだ!」


 スンスンと僕の匂いを嗅いでくる。それも変な気分になるんだけど……。何も分かってねーじゃん。


「スンスン。はぁー! いい匂い! やっぱり和くんの匂い、お姉ちゃん大好きだよぉー!」

「それもやめてほしいんですけれども……」


 正直喘がれるのよりもこっちの方がよろしくないのだ。当たってはいけないところに、姉さんの顔があるため、直接刺激を加えられているからである。どちらもそこを刺激しているけれど、僕としてはこっちの方が反応しやすくなってしまう。


 現に今も変化しており、それに当たっている姉さんに気づかれてしまうのではないかと、気が気でない。感触的に『あれ? もしかして……』と思うだろう。マズいな。頼む気づかないでくれ!


「スンスン。和くん和くん和くーん! 好き好き大好きー!」


 グリグリ。やめてー! そんなに当てると、本当にマズいから!


「んふふー! かーずくーん! ……って、あれ?」


 あ、ヤバい。


「ね、ねぇ、和くん……。か、硬く……なってるよ……?」

「はい! 耳かき終わり! 僕、トイレに行ってきます!」


 逃げ込んだ先で、僕は座りながら心を落ち着かせた。心も、体も。




 ———————————————————————




 姉線香です。


 前作の癖で、勝手にエロに走ってしまう笑。このままにするか、路線を変更すべきか、どうすればいいのか分からないです。

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