第14話 バイトとバイトとバイト

「では私も帰ります」


みさきが言います。


「あ、そう言えばみさきちゃん」


葉月が帰ろうとするみさきを呼び止めます。


「はい?なんでしょう?」


「部活決まってないならウチ来ない?」


「え?」


みさきの表情が固まります。


「そんなに固まらなくても……」


「あ、いえ。

 私はバイトがあるのでクラブはちょっと……」


「そっか。

 気が変わったら来てね」


「はい。では失礼します」


みさきはそう言って部室を出ました。


「なんかあの子。何かあるね」


葉月がそう言います。


「なにかって?」


「なんか潰れちゃいそうな不安を感じる」


「え?」


「まぁいいや。

 私もバイトあるから失礼するね」


「みさき先輩バイトなんかしてたっけ?」


「スーパーでお惣菜を売ってるよ」


「そうなのですか」


「うん」


「じゃ、私がいなくても泣いちゃだめだからね!」


葉月はそう言って小さく笑うと部室を出ました。

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