第8話 ギター

「林檎ちゃん元気かな?」


有田 林檎。


その女の子は一の初恋の人でした。


「私ね遠い場所に行くの」


そう言って林檎は一の前から消えました。


一は別れの言葉が言えなかったことを今でも後悔しています。

泣いてばかりいたあの頃。

一にとって林檎との別れはかなしみでしかありませんでした。


友達のいないひとりぼっちな世界。


護や美姫と仲良くなったのはそれから暫くたったあとのことでした。


「……」


一は誰かの視線を感じます。

でもそれは気のせいだと思っていました。

もしかしたら数ある視線のうちひとつくらいは林檎からのものであるように……

そう願って今日も帰宅します。


「久しぶりにギター弾こうかな」


一は自分の部屋に戻るとギターをベローンと奏でます。


「チューニングしなくちゃだね」


一はそういってギターをベッドに置きます。

一の指からは血が流れていました。


弦が切れたのです。


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