第954話

俺は地面に倒れる魔王を見る。


何とか勝てたな‥

さすが魔族の王だ、とてつもない強さだった‥


俺のスキルが進化した事もあるが、おそらく魔王がスキルに飲み込まれたのが結果的によかったのだろう。


スキルに飲まれていた魔王は最適な攻撃をしてきていたが、それは機械的な攻撃で動きを読みやすかった。


魔王が他人の身体を借りて動いていた時の方が行動が読みにくかったからな‥




ようやく魔王を倒した‥


正人たち勇者や、世界のために必要な事だった‥


しかし‥


何とも言えない虚しさが込み上げてくる。


多分最後にした魔王の話が引っ掛かっているんだろう‥


1人1人それぞれに正義があるって事か‥


自分たちの住む国を求めて戦いを起こした魔王。


自分たちの住んでいる国を守るために戦った種族たち。


伝承では魔王は世界に混沌をもたらす存在だと言われていた。


しかしそれはこちら側からの視点なんじゃないだろうか?


スキル【魔王】に飲まれてしまった魔王は、確かに倒すべき相手だった。


しかしスキル【魔王】がもしなかったら‥



自分たちが住める場所を求めていたということは、魔王たちが今いる場所は人が住めるような場所ではなかったのだろう。



魔王たちからすると、自分たちは迫害され住むべき土地を追われたのだ。

豊かな大地を求めるのもわかる。

だが自分たちが住む国を作るためと言われても、それまで住んでいた人たちからするとその行為は悪だ。


お互いの正義が相手を悪と思い戦いを挑んだ。


何か別の方法があったのではないだろうか‥


今回のようにエルフの女王に嵌められるような形ではなく、もっと別な方法で会えば‥


考え出したらキリがないな。


世界のため、ではなく正人たちや仲間のために倒すべき相手を倒したのだ。


それでよしとしよう。



「よかったな正人。これで勇者としての責務は終わったぞ。」


「あざーっす。何かラッキーがすっげー重なって倒せたような気がするんすけどね。」


「ん?何がだ?」


「えっと‥こんな所に魔王さんが1人で来てた事や、何故か魔王さんが俺の前に転がって来た事や、スッゲー強いマルコイさんがほとんど戦ってくれたことやら、その他もろもろっす。」


「まあその辺も正人の運というか役得な所だろうな。」


本当に正人は勇者の力じゃなくて運だけでここまできたような気がするしな‥


ああ、それにしても頭がデカくて邪魔だなぁ‥


「まあとりあえずこれで何も気にせずにベアトリスさんと一緒になれるな。」


「そっすね。へへへ‥」


照れてるデカ頭‥


何かムカつく‥


でもよかった。


俺もそろそろアキーエと‥



「ん?何か揺れてないっすか?」


確かに地面が揺れているような‥


そう思った瞬間、立っていられない程の揺れが襲ってきた。


「な、なんだ?」


エルフたちが何かやっているのか?


俺はアキーエたちとエルフが戦っているであろう場所に目を向ける。


すると地面の揺れと共に、突然見た事もないようなサイズの巨人が現れた。


おいおい、あんなものどうやって召喚したんだよ‥


まずい、てっきり魔王の方が手強いと思っていたが、まさか女王の方が強敵だったのか?


「ガッツォさんここは頼んだ!」


俺がガッツォさんにそう告げる。

それと同時に突然激しい赤い光が辺りを照らした。


その後地面を揺らすほどの大きな音が耳をつんざく。


激しい爆発音と共に熱風が襲ってきた。


爆発か?


爆心地と思われる場所に目をやると、先程の巨人が遥か上空から何度も何度も腕を振り下ろしている。


い、いくらアキーエたちでもあれは手に余るだろ!


「はぁ‥アキーエ姐さんたち、また無茶苦茶してますね‥」


はっ!


あ、あれって女王じゃなくてアキーエたちなの?


そ、そう言われれば確かにそんな気が‥


と、とりあえず行ってみるとしようかな‥







----------------------------------------------------------------------

〇読んでくださった方へ

よろしければ、星をポチッとしていただけると、とても嬉しいです。

今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひよろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る