第945話

おそらく魔王は俺たちの目に見えないような空間の動きが見えたり、または肌で感じているのではないだろうか‥


そうだとすれば自分の周りに迫るものを躱す事ができる。


しかし恐ろしいのは、その見える動きの中に魔力の流れまであるところだな。


多分魔法の発動タイミングまでわかるんだろう。

だから俺やあやめの攻撃すら躱す事が出来たんじゃないのか?


予測ではなく、見えるだけなので速さのある攻撃に関しては全て躱せなかったのだろう。


しかし魔王の体術があれば、動き出しがわかれば通常の攻撃なら余程の速さがなければダメージを与える事ができないはず。


そして動かないものに関しては特に動きを察する事ができなかったため、正人が最初から構えていた盾に関してはわかりづらかったのではないだろうか?



確かにとんでもないスキルだ。


しかしその程度であれば‥



‥‥‥‥どうやって攻略すればいいんだろう‥?



アキーエさんの無差別絨毯爆撃魔法なら何とかなりそうだけど、俺の手持ちの攻撃でどうにかできるか?


う〜む‥


属性をつけず、ただ垂れ流すように固めた魔力を撃ち込めば当たりはする。


しかしそれでは、あの鎧にダメージを与えられるとは思えない‥



1つ考えがありはするのだが、あまりにも無理やり過ぎてスマートさにかけるんだよな‥


「「ぐわぁっ!」」


正人とラケッツさんが、また仲良く宙を舞っている。


髪の毛はそんなに重くないはずなんだけど、あれだけの量になるとやっぱり重いんだろうな‥


2人とも宙に浮いたけど、正人の方が先に落下している。


それに爆発した時に、かなりの量の髪の毛が焼け焦げたはずなのに数秒で元通りになっている。


正人が閃光の勇者になる日もそれほど遠くない未来だろうな‥



正人に渡した盾もぼろぼろになってるし、ラケッツさんの火薬の残量も厳しくなってきてるよな‥


はぁ‥


しょうがないやるとするか‥



俺は『脚がいっぱい速いぞ君』を使い、さまざまな角度から魔法による攻撃を放っている卓を呼ぶ。


「ぬおっ、これすらも避けるか!許さんぞ!マルコイ様から授かりし魔道具を使った攻撃を躱すとは、万死に値するぞ!」


こっちもヒートアップしてるな‥


「卓、ちょっと来てくれ!」


「はっ!すみませぬマルコイ様!不甲斐ない某をお許しください!」


侍?いや、こいつの場合何か違うぞ‥


「むふぅ!申し訳ありませぬ。マルコイ様の魔道具はこのフォルムといい、性能といい完璧であります。某が不甲斐ないだけで‥魔道具は最高です!この素晴らしい曲線美なんかもう素晴らしすぎて‥はぁはぁ‥」


あ、やっぱりただの危ない奴だった。


「卓。攻撃力度外視で広範囲の風魔法を使ってくれ。


「広範囲の風魔法ですか?」


「ああ。竜巻みたいなもんだな。」


「それは可能ですが‥モンスターなら倒せると思いますが、魔王には通じないと思われます。あの鎧にダメージが通るとは思えないので。」


確かにそうだろう。


それに竜巻に巻き込まれている間に遠方から攻撃したとしても、それが見えるなら躱す事は容易だと思う。

行動を制限できるならまだしも、足留め程度にもならんだろ。


「わかってる。それで構わない。」


「わかりました。」


そう言いながら、卓はすぐに魔力を練り始める。


「みんな!今から卓が広範囲に風魔法を放つ。巻き込まれないように注意してくれ。」


「準備できましたぞ。」


「おう、それじゃ放ってくれ。」


卓は頷くと、魔王に向けて魔法を放つ。


「風の刃。無数の刃。集まり巨大な風の牙となりたまえ。全てを斬り刻む嵐となれ。『嵐牙の檻』!」


魔王は魔法の範囲が広いと察したのか、回避行動ではなく防御態勢をとる。


魔王を中心に嵐が巻き起こる。


魔王は自身の鎧にダメージを与えきれない魔法と判断して、すぐに防御態勢から攻撃に転じようとする。


「そうはさせるか!」


俺は卓が放った魔法の中に飛び込む。


「おわっ!マルコイ様!」


そう。


ちょっと脳筋すぎるが、空間の動きが見えるのであれば見えてても問題ない状況に持ち込めばいいって事だ。


それにちょっとした秘策もあるしな。


「魔王!ちょっとばかり付き合ってもらうぜ!」


俺は嵐の中、魔王と対峙した。







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