第944話

「正人、その盾はどうした?」


「これ?ラタチさんに借りたっす!ずっと攻撃受けるなら、剣より盾の方がマシな感じがしたっぽいんで!」


確かに攻撃を受け取るだけなら盾の方がマシだが‥


ラタチが持っていた盾は、おそらく街で売っているものではかなり良い物だったのかもしれないが、今はもう原型を留めていないほどボロボロになっている。


多分値段もぼちぼちしたはずだ。

だってラタチの顔が原型を留めていないほど、涙でボロボロになっているから‥


「正人さんの‥勇者の命を救えたのなら、俺のアンディも本望だったはず‥」


お前自分の盾に名前をつけてたのか‥


わかる。

わかるぞ!

この戦いが終わったら、お前には盾の魔道具を作ってやろう。

素敵な特殊効果がたくさんついた、素晴らしい物を作ってやるからな。


俺はスキル【創造士】を使い、その場でオリハルコンの盾を作る。


「正人!何の効果もつけていないが、オリハルコンの盾だ。ないよりマシだと思うから、とりあえず持っておけ。」


俺は丈夫なだけの無骨な盾を正人に投げ渡す。


俺とした事が、あんな何もついてない盾を作る事になるとは‥


全てお前のせいだぞ、魔王。



しかし何故、魔王の攻撃を正人は盾で防ぐ事ができたんだ?


俺が正人を守るために、魔王の爪を攻撃した時はあっさりと躱された。


普通なら、正人が構えていた盾も躱してから直接正人に攻撃を当てる事は出来なかったのか?


それとも盾ごと正人を倒そうと思ったのか?


わからない‥



しかし今の攻撃はおそらく何らかのヒントになるはず。


確かめてみないとな。


俺は再度エンチャント:勇敢なる者を発動をさせ、魔王に迫る。


魔王の前で足を止め、剣を握る手に力を込める。


「おっしゃ!」


魔王に向けて、剣を縦横無尽に叩きつける。


「おりゃあぁぁぁ!」


剣筋なんてめちゃくちゃで、とにかく速く叩きつけるように剣を振るう。


魔王は最初はそれすら躱していたが、徐々に剣が身体に触れていく。


魔王は剣を避けられないとみるや、手を使い剣の軌道を逸らし始めた。


しかし斬る事を目的としておらず、とにかく速さを追求した剣を逸らした所で俺の体幹はブレたりしない。


剣を受けた箇所に小さく亀裂が入る。


だがどれだけ攻撃を与えたとしても、この斬り方ではダメージを与える事は出来ないだろう。


俺は剣を引き、魔王から距離を取る。


「ぷはぁ!」


無呼吸で打てるだけ剣をぶつけてやった。


躱すのは躱されていたが、俺のスピードを上げていくと何とか攻撃が届くってところか。


しかしダメージを与える攻撃となると難しいかもしれないな。


おそらく全ての動作は見えていたのだろう。


しかし身体がついてこなかったので、躱す事ができなかったんじゃないのか?


これだと倒せない事はないのかもしれないが、かなり難しい戦いになる。


「正人!光属性の攻撃を広範囲に出来るか?」


「ん〜、ちょい難しいっす。魔王が避けれない程の範囲ってなると、俺の魔力じゃ無理っぽい感じがするっす。多分ぶっ倒れるっすね!」


やっぱりそうだよな。


それにそれだけの範囲となると、周りを巻き込みそうだな‥


俺の魔力でやってみるか?


俺の魔力全開でやれば何とかいけるか?


しかしそれで倒せなかったら後がやばいしな‥



その時、魔王の近くにある木から一本の枝が落ちた。


おそらく戦闘で傷ついた枝が耐えきれず落ちたのだろう‥


魔王はその枝を半歩身体をずらして躱す。



それすら躱すか?


身体に当たっても気にならない程度の小さな枝だ。


意識外からの攻撃ですらない、小さな枝だぞ。


ん?


‥‥‥もしかしてその小さな枝ですら躱さないといけなかったのか?


攻撃を受けないために躱しているんじゃなくて、自分の近くに来たものに反応しているとしたら‥


俺は近くに落ちている木の枝をとる。


それを魔王に向かって軽く投げる。


俺だったら、次の攻撃に備えて避ける真似はせずに受け止めるだろう。


その程度の木の枝だ。


しかし魔王は飛んできた木の枝を身体を捻り躱す。


やはりそうか‥


魔王は攻撃を読んでるんじゃない、何かしら普通には見えないものが見えているみたいだな‥







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