第941話

「攻撃が当たらないだと!?」


魔王はラケッツの魔道具を使った攻撃を紙一重で躱している。


黒い外骨格を纏った魔王は、まるでラケッツの攻撃を先読みしているかのように全て躱す。


「これでどうだ!」


魔王の死角に回り込んだガッツォが魔道具で攻撃を放つ。


攻撃が背中に当たる直前で魔王は身体を捻り、光線を上腕部の骨格に擦らせて逸らす。


逸らされた光はその進行方向を変え、ラケッツに襲いかかった。


「なっ!?」


ラケッツの魔道具は全て魔王を攻撃しており、突然飛来した光を防ぐ事が出来なかった。


光がラケッツに当たると思われたその時、甲高い音を立てて光が上空へ跳ね返された。


「よかった、間に合いました。」


若い女性の声と共に3人の人影が正人の側に駆け寄ってきた。


「恵!」


正人の仲間である恵、あやめ、卓の3人だった。


「すまない、恵ちゃん。助かった。」


ラケッツが魔王を攻撃しながら恵に声をかける。


「何とか防げてよかったです。マルコイさんの魔道具での攻撃だったのでどうなるかと思いましたけど‥」


魔王が弾いた光を防いだのは、恵がマルコイから譲り受けた盾の魔道具の力だった。


「でもまさか盾が壊れるとは思いませんでした‥」


恵の盾で、ガッツォの魔道具の攻撃を防ぐ事は出来たが、オリハルコンでできた魔石板が1枚破損してしていた。


「てか魔王の鎧って反則っぽくない?マルコイさんが作った魔道具の攻撃を防いでるじゃん。しかも弾き返して、そのままラケッツさんに攻撃したりしてるし、マジパねぇ。」


「いや、正確には防いでるわけじゃない。攻撃を逸らしてるんだ。おそらく直撃したら、魔王の鎧じゃ防げないのだろう。その証拠に攻撃を逸らすのに使用した部分は破損していた。まあそれも時間と共に修復されているみたいだがな。」


正人が注意深く魔王の鎧を見ると、先程ガッツォの攻撃が当たった場所に亀裂が入っていた。


しかしそれもゆっくりと修復している。


「うげぇ‥だったらガッツォさんの魔道具を連射したらいいっぽくないっすか?そしたら鎧もぼろぼろになるっしょ。うん、やっぱ俺天才。」


「そうもいかんぞ。後方に逸らすだけならまだしも、攻撃を任意の方向に弾けるのであればとんでもない事になる。どの程度弾けるかわからんが、恵が防げる数じゃなければ博打になるぞ。」


「うっ‥」


先程のレーザーが何十も飛来する想像をして言葉に詰まる正人。


「そうですよ、正人君。でも魔王は許せません!絶対倒しましょう!」


「お、おう?ど、どうした?恵が相手を倒そうとか言うなんて、めっちゃ珍しいじゃん。」


「魔王はマルコイさんから貰った愛のこもった大切な魔道具を傷つけました。万死に値します!」


「はぁ‥恵‥」


恵のすぐ隣であやめが深いため息をつく。


「やっぱり敵はマルコイかしら‥」




あやめがそんな事を呟いていると、すぐそばで爆発が起きる。


「ふはははは!やるな魔王!こうでなくては!」


爆煙から、正人に抱き抱えられた形でラケッツと正人が飛び出してくる。


「お話はその辺でやめとけ!俺とラケッツだけじゃ手に余る。勇者パーティ全員も戦ってくれ!準備はいいか!」


「「はい!」」


魔王と勇者チームの戦いは過酷化していく‥






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