第940話
爆発音と共に2人は宙を舞う事になった。
その原因を作った男も大きな爆発に巻き込まれていた。
しかしその男は爆音と共に舞い上がった煙の中から特に傷を負った様子もなく歩み出てくる。
(無傷か‥‥)
男は爆煙により標的を見失ったようで、その場に立ち止まっている。
(ふっふっふ‥面白い!さすが魔王‥)
「魔王よ!貴様こそこの『魔道具の勇者』であるラケッツに相応しい相手だ!」
魔王は声に反応してラケッツ達の場所を把握する。
「ちょっ!何やってんすか、ラケッツさん!気づかれたじゃないっすか!」
ラケッツと一緒に宙を舞っているデカ頭‥もとい正人が慌ててラケッツに注意する。
「正人君!俺たちは勇者なんだ!魔王は倒すべき存在!今更臆してどうする!」
「いや、臆してとかじゃなくて、気づかれてない間に不意打ちとかできたっぽい感じじゃないっすか!」
「ふっ‥不意打ちなど必要ない!俺たち勇者は真っ向から魔王と相対して倒すべきだ!」
(ラケッツさんってこんな人じゃなかったじゃん!車か?車と同じで何かに乗ったり纏ったりすると、急に気が大きくなる人っぽい感じ?)
正人とラケッツが地面に落ちると同時に、魔王は2人の元に駆け出していた。
魔王は正人が城で会った時と違い、全身を黒い昆虫の骨格のようなもので覆っていた。
「勇者‥コロす!」
魔王は正人を睨みつけて尖った爪の外骨格を振り上げて襲ってきた。
「ちょっ!なんで俺?俺何もしてねーじゃん!」
慌てて剣を抜き、振り下ろしに備える正人。
「勇者は2人いるんだぞ!」
ラケッツは正人と魔王の間に滑り込むように身体を入れて割り込む。
魔王の振り下ろし攻撃に持っている剣を合わせるラケッツ。
しかし魔王の攻撃は軌道を変え、ラケッツの剣を避けながらラケッツの腹部に直撃する。
魔王の爪がラケッツの腹部に当たると同時に大きな炸裂音と共に爆発が起こる。
「ほんげっ!」
そんな声を上げながらその場から吹っ飛ぶラケッツ。
そして正人の眼前に割り込んだせいで、吹っ飛んだラケッツの身体は回転しながら正人の腹部に直撃する。
「ふごっ!」
正人も胃の中の物をキラキラと吐き出しながら吹っ飛ぶ。
「ふっ、やるじゃないか。さすが魔王!」
「やるじゃないかじゃないっすよ、ラケッツさん!食べた飯が全部出たじゃないっすか!」
「ふむ。ならばもう出るものはないから大丈夫だな。」
「確かに!もう胃の中は綺麗さっぱり。これからは何があっても出る物ないじゃん!あ、胃液と内臓は出るけどね!内臓出たら戻すのが大変ってなんでそうなるのっ!」
「ふっ‥さすが『異世界の勇者』素晴らしい返しだ‥」
「お前らは何をやってんだ?」
吹っ飛んで転がった先に煌びやかに光頭が現れる。
「おお!『目潰しの勇者』ガッツォさん!」
「誰が目潰しだ!ほら、遊んでないで魔王を止めるぞ。」
魔王は先程の爆発でも傷一つ負わずに3人の方に悠然と歩みを進めている。
「マルコイさんの魔道具で傷を負わないとは驚きだな‥ありゃなんだ?」
ガッツォは目を細めて魔王を見やる。
「おそらくあの昆虫のような外骨格が爆発を防いでいるみたいだ。マルコイさんの魔道具の爆発を防ぐなんてとんでもない強度だな。それにどうやら魔王が標的としているのは正人君だけのようだ。」
ラケッツは広域型殲滅魔道具を起動しながらそう告げる。
「なるほどな。それなら魔王から身を守るのは正人1人でいいな。それじゃあ俺とラケッツで攻めるとするか。」
「正人君は基本防御態勢で頼む。俺とガッツォさんで魔王を攻略する。いくら強力なスキルとはいえ、弱点はあるはずだ。それにマルコイさんの魔道具をずっと防ぐなんて無理に決まっている。何かわかるまで休まず攻めよう。行くぞ!」
ガッツォは頷き、ラケッツと共に魔王に向かって駆け出す。
「くらえ!」
ラケッツの掛け声と共に背中に背負っている魔道具が反応して、6本の腕が攻撃を始める。
しかし魔王は体術により、そのすべての攻撃を躱す。
「ちっ!なんて奴だ。これでどうだ!」
ガッツォの魔道具から閃光が放たれる。
ラケッツの攻撃を躱している魔王の胴体に閃光が迫る。
(よし、当たる。)
しかし魔王はラケッツの魔道具を躱しながら、片手を閃光に向ける。
そして手の甲の骨格を使い、閃光を後ろに逸らした。
「なっ!」
さらにその後も最小限の動きでラケッツの魔道具を躱す魔王。
「マルコイさん‥こりゃ簡単にはいきそうにないぞ‥」
ガッツォは思わずそう呟いた‥
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