第932話

見つかった?


【察知】に反応があったので誰かが城から出てくるのはわかっていたが、まさかこちらに気づいているとは思わなかった。


みんな好き勝手に意見を言っていたが、とても城まで聞こえる音量ではなかったし、あの場所から俺たちが見えるとは思えない。


何かしらのスキルを持っているのかもしれないが‥


いや、それよりも‥

待っていた‥だと?


「勇者御一行様がいらっしゃるとわかっておりました。この城の城主が丁重に連れてくるようにとの事です。こちらには攻撃の意思はございませんので、よろしければ我が王にお会いしていただいても宜しいでしょうか?」


勇者たちが来ると予測していたのか?


しかし今回来るのが勇者だといつわかったのだ?


「ご心配いりません。勇者御一行様のお話は以前から聞き及んでいましたし、今回作戦に参加したエルフの中にスキル【念話】持ちがいただけになりますから、そう心配なされずとも大丈夫かと思います。」


なるほど。


しかし本当かどうかはわからないな‥


「アキーエ、俺と一緒に来てくれ。あと正人たち4人も。他はこの場で待機。戦闘音が聞こえたら乗り込んできてもらって構わない。ガッツォさん待機組を頼んだ。」


「わかった。こっちは出来るだけ暴れないように見張っておく。だが暴れたらどうにもならんから、キリーエさんにもお願いしてくれ‥」


ふむ。

ガッツォさんでもアレカンドロとリルの暴走コンビを制するのは無理か‥


俺はキリーエを見る。


「はいはい。ちゃんと御守りしとくわ。でも、うちも暴走したらほっとくで。」


2人にここまで言われるとは‥


「むむ!自分はお留守番ですか!わかりました!戦い始まりそうな時は一番槍で突っ込みます!」


アレカンドロが素敵な笑顔でそう告げる。


「いや、戦いが始まってからな。始まりそうな時はやめてくれ。」


「リルは‥どうする?もう‥行く?」


「いや、問答無用で攻め込もうとするのはやめなさい。」


まあ怪し過ぎるから、ぶっちゃけそれでもいいような気がしないでもないけど‥


「2人ともとりあえずは我慢してなさい。何か爆音がしたりとか、異変があったら突っ込んでいいから。」


「承知しました!」


「心得て候‥」


リルが拗らせている‥


正人たちの方を見ると、あやめが顔を背けた。


お前が犯人だな。


後で覚えておくがいい。



「わかった。勇者たちと勇者に助力していた俺ともう1人いるけどいいか?」


「ええ、大丈夫ですよ。報告ではもう数人いらっしゃったと思いますが、その方達は宜しかったですか?」


「ああ。彼らはここまでの道案内と荷物持ちの人たちだ。非戦闘員だから、このまま国に戻ってもらう。」


「ほう。それを私達が了承すると?」


「お前たちの目的は勇者だろ?だとしたら彼らは関係ない。もし彼らに被害を及ぼすつもりなら、今すぐここで戦闘開始となるが?」


「ははは。それは物騒ですね。確かに我らの目的は話し合いです。サポートの方達が戻られるの結構ですよ。用があるのは人族代表の勇者の方々ですから。」


城門前で佇んでいるエルフは、顔に貼り付けた笑顔を崩す事なくそう述べた。


「それじゃあお邪魔するとしよう。」


俺とアキーエ、正人たち4人は城門をくぐり城の方に向かった。




中は城外とは違い、木々に覆われる事なく綺麗にしてあった。


高そうな絵画や壺なども置いてある。


とても他種族に見つからないよう急ピッチで作った城には見えない。


「美しいでしょう?これら全てエルフが長年かかって集めた物です。もちろんエルフが以外が作ったものもありますよ。文化は大切です。それこそ人よりも‥」


ばかな。

どれたげ素晴らしい調度品だろうと、命より重いものはないに決まっている。


こんな事を平然と言えるやつらだ。

やっぱり狂ってるとしか思えないな。


話し合いをしたとしても分かり合える事はないだろう。


「こちらでございます。皆様お待ちしておりますので、宜しくお願いいたします。」


皆様‥?


どっしりとした扉が開き、中の様子が見える。


そこには3人の男女が座っていた。


「おお!そこにおるは我が番ではないか!わざわざ俺に会いにこんな場所まで来るとはついに番になる気になったも言う事だな!」


はあ?


その男はアキーエを見ながらそう言い放った。


何故お前がここにいるのか知らないが、やはり死にたいらしいな‥


魔王ジェズアルド!







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