第931話
「それでキリーエ。その逃げた奴らってのはどこに向かったんだ?」
キリーエの背後には、数人の黒っぽい衣装を身に付けた人たちが左の片足だけ立膝して跪いている。
なんか強そうな人ばっかりなんですけど‥
どこでスカウトしてきたんだろう‥
キリーエが人材発掘に関しても特出しているのだが‥
「ここから東に行ったところやね。誰も気付かれてへんから、罠って事はないと思うんやけど‥」
キリーエの歯切れが悪い。
「ないとは思うが、他に気になることがあったって事か?」
「そや。うちも影から聞いて信じられんやったんやけど‥城があったらしいんや‥」
「城?なら逃げたエルフたちはエルフ国の城に逃げ込んだって事か?」
「違うんよ。エルフ国の王城はもっと奥地にあるはずや。うちも商人やから取引した事ないんやけど、エルフ国のだいたいの場所は知っとるんよ。」
どういう事だ?
「ふん。今までの奥地にある城とは違い、他国を攻めるために新しく魔族と共に作ったカラダーロレ城だ。戦争のために作った城だからな。他の種族には秘密裏に作っていた。この戦争を始めるきっかけのひとつは、その城が完成したためだ。」
なるほど‥
確かに森の奥地にあるよりはいいとは思うが、わざわざ城まで作る必要があるのか?
もしかして何かしらの秘密が城にあるのだろうか‥
「まあいい。距離的に近いのであれば見に行ってみよう。基本的には売られた喧嘩だ。きっちりと高値で買い取ってやるつもりだ。しかし相手は未知数なところがあるからな。あまり無理せずに偵察だけにしておこう。いきなり魔法ぶっぱなしたり、城に突っ込んだりしないようにしような。」
俺はアキーエたちを見てそう告げる。
「なんでわたしを見て言うのよ。わたしよりマルコイの方が無茶するんだから、自分を見ながら言ってよね。」
ふむ。
自分を見ながら言う事は出来ません。
「マルコイさん、鏡ならうち持っとるで。」
なるほど、その手があったか。
いやいや、そうじゃなくて‥
「とにかく余程の事がない限りこっちから攻撃はしないぞ。そのつもりで行こうか。」
皆が頷く。
まあそうは言っても、この人たちが大人しくするとは思えないんだけど‥
段ボールたちと戦った場所からしばらく東に進むとキリーエが言っていた城のような物が見えてきた。
「あれだけの城をよく他種族に見つからずに作る事が出来たな。」
「この距離まで来なければ遠方からは木々に囲まれているので城は見えん。それにエルフの事を知っている他種族が、ここまで入ってくるわけもないからな。もし入ってきた他種族がいれば捕まっている。」
確かにわざわざ森の中をここまで入ってくるメリットがない。
ダンジョンでもあれば別なのだろうが、特にこれといったものもないしな。
「ここまで近寄ったのに見張りがまったくいないのは助かるが、いつもこんな感じなのか?」
「普段は見張りを立てているのだが‥ここまで誰もいないとは‥何かあったのかもしれん。」
俺の【察知】にも全く反応はない。
何かあったかもしれない‥か。
さっき逃げ帰ったエルフたちが報告して騒ぎになってるとは思うが、それにしては対応が早すぎるし、見張りをなくすなど意味がわからない。
罠か‥?
そうだとしても、俺たちを狙ってだとは到底考えられない。
俺たちがここに来たのは、キリーエの兄貴が関わっていたから来ただけで、ここに来たのはたまたまだ。
そのまま誰とも会う事なく、城門近くまで進んできた。
「どうするのマルコイ?このまま城に入ってみる?それともとりあえず魔法撃ってみる?」
誰とも会わずに城門まで来るとは思わなかったので、色々と考えていた作戦をまた1から考える事になった。
まあ作戦を考える上で、とりあえず魔法を撃ってみるという作戦はありませんからねアキーエさん。
こら勝手に魔力を練らない。
撃つならラケッツさんに撃ちなさい。
「やはりここは堂々と城門前で宣戦布告をするのはどうでしょうか!しかもその役を自分にさせてもらうと言う事で!」
何がと言う事でだ。
「リルも名乗りの口上‥する‥」
する‥じゃない。
何故俺の仲間はこんなにも自己主張が激しいのだろうか‥
「このまま人の出入りを少し確認しよう。何もなければメンバーを分けて中に入ってみるぞ。」
「「え〜‥」」
え〜じゃない。
聞き分けのない子は置いていきますよ。
「そんなにコソコソしなくても大丈夫ですよ。貴方方が来られるのをお待ちしておりました。どうぞお入りください。」
城門の方を見ると、顔に笑顔を貼り付けたエルフがこちらを見てそう声を上げた。
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