第930話

「女王のスキルだと?それをお前は無条件で使う事ができるってことか?」


貸与か‥

普通であれば特に特出したスキルではないのだろう。


通常はスキルは持っていても1つか2つ。

そのスキルが貸与であれば使い道はない。


貸すスキルがなければ貸与もできないんだからな。


しかし女王は貸与スキルを使って人に貸す事ができる他のスキルがある。


しかもそれがかなり強力なスキルだとすれば、話は変わってくる。


無条件で貸せて、しかも回数制限や人数制限までなければ最強に近いスキルだろう。


段ボールが持っている【精霊纏】のようなスキルを、エルフ族全員が持っていたら俺たちも苦戦する。


いや、下手したらこちらが負けてしまう可能性もある。


だがこの人数のエルフの中で、段ボールしか使えなかった事を考えると、恐らく人数制限はあると思っていていいだろう。


「段ボール。お前が女王から借りたスキルは回数の制限はあるのか?」


「いや、特に回数に気をつけるような事は言われていない。俺がスキルを貸与してもらってから女王には数回しかあっていないし、その時も特にスキルに関して話はなかったしな。」


なるほど。


回数制限はないと思った方がよさそうだな‥

 

「ただ、もともと【精霊纏】がそうなのかもしれないが、スキルの使用消費魔力がとてつもなく高い。エルフの中でも高い魔力を持つ俺でさえ、そこまで長時間使用する事ができないからな。」


そこは検証する事はできないな。


それにだからといって【精霊纏】は長時間使用する事が出来ないって決めつけもよくないだろう。


魔力量は人によって違うからな。


「そのスキルを貸与された人数はわかるのか?」


「スキルを貸与される時は式典をするのでわかるが、秘密裏にも貸与されている可能性はあるだろう。それに俺が貸与されたのは【精霊纏】だったが、他のスキルの可能性もある。」


「なるほどな。ところで段ボールは女王のスキルを知っているのか?」


「まあ姉弟だからな。しかしここ最近女王が俺の知らないスキルを使用しているところを見たことがある。本来女王は3つのスキルをもっていたはずだが、身体能力を上げたり我らエルフ族の精霊術ではなく、人族が使うような魔法を発動する際に精霊の力を借りない魔法スキルを使用していたところも見ている。その時は女王がエルフ族にとって神のような存在だと思っていたから何とも思わなかったが、モヤがとれた今となっては不自然な事だな‥」


スキルが増えるか‥


俺と同じようなスキルを持っている奴がいて、そいつも人にスキルを渡す事ができる。


『あのお方』が女王の影にいるってことの証明だな。


「わかった。重要な情報助かった。段ボール・可燃物。」


「ダンボール・レイノネンだ!だいたいお前が言うダンボールも何か含みを持ってそうで気になっているのだぞ!」


同じようなものじゃないか。


「ところで頭のモヤがとれたみたいだが、今後はどうする?俺たちはこれからエルフ国に行く事になるかもしれない。そうなるとお前の同族と戦う事になるだろう。ロメントの手前一度は助けたが、もしお前がエルフ側につくのであれば、次会う時は容赦はしない。それを踏まえてどうするか決めるんだな。」


「‥‥‥俺はエルフ族である事に誇りを持っている。もちろん今でも人族は下等な生き物だと思っているし、変な病気も持っていると思っている。」


変な病気を持っているのはお前の弟だ。

責任持って治療士の元に連れて行くがいい。


「だが頭をいじられていたのがわかったのに今のエルフ国を命をかけてまで護ろうとする気持ちはない。」


そりゃそうだよな。

信じていた人たちに裏切られたようなものだからな。


「そうか。だったら、しばらく身を隠すんだな。俺たちが国に行ってどうなるかわからないが、それを確認してから行動する事だ。」


段ボールはしばらく考え、口を開く。


「いや、お前たちと一緒に行動させてもらう。この目で、エルフ国に起きている事を見たいのだ。」


「それは構わないが、俺たちと行動するって事は、同族には裏切り行為に見えるんじゃないのか?それに敵にまわりそうであれば、容赦なくアキーエさんが火だるまにするぞ。」


アキーエさんは容赦なんてしないぞ。

怪しい行動をしたら、秒で火だるまになると思うがいい。


「構わない。」


「そうか。」


その覚悟があれば勝手にするがいい。

俺だったらアキーエさんが怖いから、ちょっと離れてついていくけどな。


「マルコイさん。忍びが戻ってきたで。」


よし。

それじゃあ行動するとするか。







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