第929話

「黒目黒髪‥?確かに異質ではあるが‥だがあいつらもそうだぞ?」


俺は正人たちの方を向く。

黒目黒髪の男女4人。

1人は巨大アフロになっているが、黒髪といえば黒髪だ。


なんだろう‥

見れば見るほどアフロの違和感が半端ない。

あいつの方がよっぽど異質だ。


「確かに彼らも黒目黒髪だ。だが彼らは勇者なのだろう?認めたくはなかったが、あの強さは本物だ。昔の伝承で勇者は黒目黒髪だと聞いていたからな。だが‥」


段ボールは正人の方を見る。


あ、やっぱり正人は異様ですか?

同族が丸々1人頭の中に入ってしまうような髪型はやっぱり異様ですよね。


「あの男は黒目黒髪であったが、勇者ではなかった。どちらかと言うと、勇者や人族に恨みをもっているようだった。一言もしゃべりはしなかったが、俺が女王へ彼が勇者ではないのかとの問いかけた時にその場の空気が変わったからな。」


黒目黒髪で勇者じゃない?

この世界で黒髪はいる事はいる。

もの凄く少数ではあるが。

しかし黒髪黒目だとすると、それこそ勇者くらいしかいないのではないだろうか‥


「俺は女王に進言した。魔族との同盟や、人族を迎え入れる事に対して違和感があったからだ。他の重鎮たちも同じ意見だと思っていた。しかし進言したのは俺1人だったがな。そこにも違和感を覚えた。しかしその後、人族の男が話しかけて来たのだが‥それ以降は頭にモヤがかかり、何故かその男たちが旧知の仲のように思えたのだ。それからの事も覚えてはいる。その後は魔族の男とはよく話をした。エルフ国の未来や、世界がどうあるべきかなどな。今覚えばまるで自分が自分ではないようだったな‥」


まず間違いなく、その男たちが洗脳していたと思うべきだろう。


しかし人族の男か‥


『あのお方』とやらの手下は魔族だけではなく、いろんな種族がいるんだったな‥


おそらくエルフ国の背後にいるのは魔王ではなく、『あのお方』と呼ばれる奴だろう。


「わかった。しかし腑に落ちないのは何故お前が消されなかったのかだな。進言するのは1人しかいなかったのであれば、他のエルフたちはすでに洗脳かそれに近い状態だったんだろう。お前を排除してしまえば簡単だったろうに、何故ここまで深い洗脳をかけたのか‥考えられるのはお前が消えれば思考誘導しているエルフたちが違和感を覚えるような立場だったとか。まあそれはないだろうが‥」


「おそらくそれだろう。俺は王弟だ。国の式典なども参加しなければいけなかったしな。排除されてしまえば、何かしらの違和感が出る事になるだろう。」


「は?」


「む‥だから、俺が王弟だから‥ははん。さては俺が王族だと知って驚いたようだな。今までの不敬は許してやるから、跪いて俺を敬うがいい。」


こいつが王族だと?

だとしたらロメントも王弟だと言うことか‥


何だろう‥

エルフの国の事がどうでもよくなってきた‥

どうせこいつらの姉弟なら碌な奴じゃないはず。


「どうした?すぐに跪くがいい。おぼぼぼおぐげぇっ!」


とりあえずうるさい奴は光属性を流すとして、今後をどうするか‥


各国には商人たちのおかげで現状は伝わるはず。


しかし時間をかければもっと不利な状況になっていくような気がする‥


ここからの距離によっては、このまま一度エルフ国に行ってみるのもいいかもしれないな‥





「そう言えば、さっき戦ってた時も意識はあったんだよな?」


俺は段ボールが身体の状態を度外視して戦っていた時の事を問いかける。


「ああ。意識はあった。ただ今までかかっていたモヤが身体を支配するような感じで、自分の意思で身体を動かす事はできなかった。」


「それはそうだろう。自分の意思であれほど身体を酷使して戦うとは思えないからな。途中で使って跳躍力を上げていたのはスキルか?」


「そうだ。俺が元から持っていたスキルで【加重操作】と言うスキルだ。自分の体重を増加させたり軽くしたりする事が出来る。」


(ピコーンッ)


『模倣スキルを発動しました。スキル【加重操作】を模倣しました』


むふふ。

たとえ種族が違っても模倣できるんです。


ロメントのスキルを模倣した時は特に何も考えてなかったけど、エルフのスキルは模倣できるってロメントのおかげでわかってましたから。


久しぶりにスキルを模倣できた。


聞く事聞いたし、スキルも模倣したし、段ボール君にはもう用事はないな。


どうしようか、これからエルフ国に行くなら邪魔だから、この辺に縛っておくかな‥


「今自分が元から持っていたスキルって言ったわよね。だとしたらわたしと戦ってた時に使ったスキル【精霊纏】とやらは、あなたのスキルじゃなかったって事?」


あっ!

すっかり忘れてた!


「お前の【精霊纏】ってのは貸与スキルなんだろ?元々は誰のスキルなんだ?」


「‥‥‥恐ろしいな‥俺は一言も貸与スキルだと言った覚えはないのだがな‥だがそこまでわかっているのであれば隠しても仕様がないな。俺が使っていたスキル【精霊纏】は元は女王のスキルになる。」


女王のスキル‥?





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