第924話

「これが高貴なるエルフの力だ!お前たちひと族如きが敵わぬ強さだと知れ!」


段ボールは腰に帯刀していた細剣を手に持ちそれを振るう。


するとその剣から炎が迸り俺とアキーエに迫る。


「『氷壁』」


俺は炎がこちらに届かないよう氷の魔法で壁を作る。


炎は氷の壁に勢いを止められたが、壁の側面に進みまるで生き物のようにこちらに迫ってくる。


「随分とやっかいな火ね。まるで生きてるみたい。周りの木々にもそんなに被害を与えていないみたいだし、わたしの魔法と根本的に違うのかしら?」


アキーエが段ボールが放った炎を見ながらそんなことを言っている。


「でも火の魔法って事には変わりないのよね‥わたしもできるようになるのかしら?」


いえ、多分ですけどできると思います。


あそこに突っ立ってる精霊に命令したら、喜んでするんじゃないですかね?


「アキーエ、一旦下がれ。このままじゃこっちまで炎が来そうだ。その前に俺の氷の魔法で消火できるか試してみる。」


俺が魔法を練り始めると、アキーエがそれを手で制する。


「火の魔法なら、わたしの魔法で止めれると思うから大丈夫よ。」


え?

火の魔法に火の魔法ぶつけても酷くなるだけじゃないですか?


「原初の炎よ、爆炎となり大地を塵とかせ『爆炎塵』!」


アキーエが魔法を放つと、目の前の景色が突然爆発した。


「ぐわっ!」


突然の衝撃波に吹っ飛ぶ段ボール。


俺もアキーエが魔法使うって言わなかったら飛んで行った自信がある。


爆発が収まると、近くにあった木々や段ボールが放った炎が根こそぎ消え去っていた。


ちなみに近くにいたラケッツさんも何か抵抗しようとしてたみたいだけど、飛んで行ってたみたいだ。

離れたところにラケッツさんの足だけが見える‥


「な、なんですと?」


「魔法で地面を爆発させたの。燃えるものがなくなったら、火も消えるでしょ。」


消えるでしょって‥

これだったら俺の魔法で消したほうが安全だったんじゃ‥


「な、なんなのだお前は!その出鱈目な力は!人族の魔法使いが使える力ではないはずだ!」


多分人族だとは思うんですけど‥


もしかしてアキーエさんは爆殺女神の二つ名の通り、神族にでもなったんでしょうか?


「魔法って仕組みを理解したらまだまだ強くなるのよ。精霊術が使えるエルフは勝手に上限を決めてるみたいだけど。人族はエルフみたいに永くは生きられないけど、短い人生で強くなれるように努力できる種族なのよ。のほほんと永い時間を生きているエルフには理解できないのかもしれないけどね。」


おお。

かっこいいです、アキーエさん。


「ふざけるな!人族がエルフ種より強いなどという事があるはずがない!喰らえ!」


段ボールが精霊の炎を纏い、アキーエに突っ込む。


そしてさらに細剣にも炎を纏わせ、アキーエに向かって刺突を繰り出す。



アキーエは自身の腕に気を這わせて、段ボールの刺突を逸らす。


そしてすれ違い様に段ボールの腹部に拳を放つ。


爆発音と共に吹っ飛ばされる段ボール。


段ボールはそのまま地面を転がり離れた木にぶつかって止まった。


「ぐ、くおあ‥」


おお、生きてる。


アキーエの爆殺拳を喰らって生きているとは大したものだ。

纏っていた炎は鎧の役目にもなったのかな?


「くそが‥女王が‥女王が‥ぐあっ!」


突然頭を抱えて苦しみ出す段ボール。


まあそうだよな。

段ボールは女王に傾倒してる感じゃなかったもんな。

何かしら保険的なものをされてるとは思っていた。


魔族と繋がりがあるって時点でそうなるだろうなと思ってたし。


痛みから解放されたのか、立ち上がった段ボール。

その目から光が消えていた。


「ふっ!」


段ボールはその場で飛び上がった。

かなりの高度まで一瞬で到達する。


なんだ?

いくら身軽なエルフとはいえ、その跳躍力は異常じゃないか?


そして段ボールはアキーエ目掛けて細剣を振り下ろしながら落下してきた。


異常なスピードで。


「アキーエ!」


俺はアキーエの前に立ち、エンチャント:守護する者を発動する。


段ボールの身体は炎に包まれ、まるで遥か彼方から降ってきた隕石のような状態になっている。


段ボールとエンチャント:守護する者を発動した時に発生する防御膜が触れる。


なんて圧だ‥


落下の衝撃は防御膜で防ぐ事ができたが、その衝撃波で俺とアキーエは吹き飛ばされる。


「女王の敵は抹殺する。」


ちっ。


リルがされた時よりも洗脳が洗練されてないか?


リルの時は洗脳されて明らかに弱体化していたのに、段ボールに関しては強くなり過ぎている。


しかしさっきの技はかなりの大技だったのだろう、段ボールの身体にも幾つもの傷ができている。


腕なんて、下手すれば折れてるんじゃないか‥?


さっきのをもう一度ってのは無理だろうが‥


「敵は‥‥殺す。」


俺の思惑は外れ、段ボールはその場でもう一度跳躍した。






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