第925話
ちっ!
洗脳されている奴は負傷なんて関係ないってか。
やっぱりこの洗脳している奴を見つけ出して倒さないといけない。
スキルなのかわからないが、もしスキルなのであればレベルが上がればもっと取り返しがつかない事になるかもしれない。
段ボールの跳躍はさっきよりも高い位置まで上がっている。
こっちはエンチャント:守護する者があるから、ダメージはあるが致命傷は受けないだろう。
しかし段ボールは次の攻撃でもっと酷い傷を負うだろう。
それこそ致命傷となるかもしれない。
こっちを襲ってきた奴だし、精霊術で俺の仲間を攻撃してきた奴だ。
人を殺そうとした奴は自分が殺される可能性があるのは当然だ。
だが洗脳された状態ではあまりにも悲惨じゃないか?
人の生死を裏で操っている奴がいる。
それは決して受容できるものではない。
変態の兄弟ってのもあるけど、そこまで悪い奴じゃないってわかってるのであれば尚更だ。
いや、こいつ人族如きがって連発してたな‥
それにアキーエも怒らせてたし、やっぱり悪かもしれない‥
まあ色々理由を並べたが、俺が殺したくないのだ。
話がしてみたい。
それでやっぱり俺たちとは相容れないのであれば、その時改めて戦えばいい。
しかし問題はこれをどう止めるかだよなぁ‥
「敵を撃ち滅ぼせ『爆炎球』!」
アキーエから放たれた魔法が段ボールにぶち当たる。
おお‥
アキーエさん容赦ないっすね‥
段ボールは顔が煤けて鼻水垂れ流しているが、剣は離さず落下してきている。
爆炎で少し落下速度が落ちたようだが、それでも無事ではすまない速度だ。
「すぐ放てる魔法じゃ勢いを止められないみたい。避けるしかなさそうだけど、どうするのマルコイ?」
「そうだな‥」
アキーエが勢いを止めるために放ったとはびっくりだ。
てっきり仕留めるためかと思った。
成長したんですね‥いたたた、足を踏まないでください。
「ちょっと止めてみるよ。アキーエは下がってて。」
「無理しないでね。」
俺はアキーエに向かって頷くと段ボールを見上げる。
まだかなりの高さにいるが、あの勢いで地面に衝突したら、その衝撃で近くにいる人もかなりのダメージを受けそうだ。
さてどうしたものか‥
よし!
俺は【時空魔法】を使い、上空に駆け上がる。
段ボールに近づくにつれ、周囲が熱くなってくる。
これは凄いな‥
まさに隕石ならぬ隕エルフだ。
とりあえず勢いを止めるために横から力を加えてみるか‥
俺はエンチャント:勇敢なる者を発動して力一杯段ボールを殴りつける。
オーク辺りなら上半身吹っ飛ぶくらいの勢いで殴る
。
「ぐっ!」
段ボールに向かって放った拳は簡単に弾かれ、腕がちぎれるかと思うくらい体勢を崩された。
くそっ!
思ってた以上にやっかいだぞ。
なんとかして速度を落とさないと‥
俺はエンチャント:守護する者を発動して段ボールの前に出る。
激しい衝突音がして俺は地上に叩き落とされる。
しかしその甲斐あって、段ボールの落下速度はゼロに戻る。
あそこから落下したとしてもそこまでの速度は出ないはずだ。
俺は弾かれて落下したため、かなりのダメージを受けたがこの程度ならポーションがあれば動ける程度には回復する。
「マルコイ大丈夫?すごい勢いで落ちてきてカエルみたいに潰れてたけど‥」
心配してくれてありがとう。
でもカエルみたいにはやめてください。
「なんとか大丈夫だ。でも空中で速度を落とさせたから、あそこから落ちても‥なにっ?」
段ボールは落とした速度を急激に上げて地面に向かってくる。
流石にそこから速度が上がるのはおかしいだろ‥
そうか!
確か【技能眼】で見た時に【精霊魔法】と貸与スキル以外にもう一つスキルがあったな。
【加重操作】か。
自身にかかる重力を操作する事ができるスキルだったな。
使い道がなさそうなスキルだと思っていたが、こういった形で使われると手がつけられない。
どうする‥
「マルコイ様!お困りのようですね!この恵に任せてください!ラブアーマー全開!『多重ラブ防壁陣』」
恵の放った広範囲防壁決戦魔道具、通称ラブコレクションズが段ボールの落下位置に防壁を構えていく。
なぜラブコレクションズなのかわからないし、聞きたくないからわからないままでいいと思っている。
そんな顔してこっち見ても絶対聞かないからな。
段ボールは急降下して迫ってくる。
最初の結界に触れる。
甲高い音がして結界が割れる。
次々に結界が割れて落下してくるが、速度はかなり落ちている。
今なら俺が攻撃して意識を狩りとる事が‥
「必殺!ジェットブーストキーック!」
銀色に青い線が入った美しい鎧を着た奴の蹴りが、段ボールの横腹に入る。
速度が落ちて上がる前だから見事に横に吹っ飛んだ。
「マルコイ殿ずるいですぞ!あんな楽しそうな奴と戦ってるなんて!自分も混ぜていただきたい!」
そして段ボールを蹴り飛ばしたアレカンドロは胸を張りそんな事を言い出した。
えっと‥
結構必死だったんですけど、アレカンドロさんには楽しそうに見えたんですですね‥
さすが脳筋さん‥でもありがとうございます。
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