第912話

「俺たちにも褒美をくれるって?そりゃありがてえな。それで何をくれるんだ?」


護衛の男達がエルフに近寄る。


「お前たちは馬鹿か!申し訳ありません。品のないものを連れてきまして‥しかし商品の量が多かったもので、道中が不安で彼らを連れてきました。決して貴方方を警戒してではございませんので。」


「別に構わんよ。人族如きが何人いようと問題はない。」


「ありがとうございます。ところで商品の売買金以外の報酬とはどのような物でしょうか?」


まだ若い男が手を揉みながらエルフに近寄っていく。


「お前たちは私たちエルフをどう思っている?」


「エルフの方達ですか?そうですね‥魔力に長けた種族だと思っておりますが‥」


男がエルフからの質問に答える。


そうだな‥

エルフは魔力に秀でていて、引き篭もりで変態。


ここまで言ったら100点じゃないか?


「ふっふっふ。まずそれが間違っている。確かに我々は魔力に長けている。しかしそれ以外でも剣や弓だといった武力、そして知恵や体力なども人族や獣人族とは比べ物にならないのだ。」


そうかな‥?

引き篭もりだから体力はどうかと思うぞ。


しかし俺が知っている変態はSランク冒険者だった。


エルフ族全員があれ程の強さなのであれば、確かに他の種族から見たら脅威ではある。


まあそんな事はありえないと思うが‥


「そ、それは確かにそう思いますが‥」


「そうであろう。この世界で最も秀でているのは我々エルフ族なのだ。だがおかしいと思わぬか?」


「な、何がでしょう?」


「この世界だ。我々エルフが最も秀でている種族なのだ。それなのに人族や獣人族達は自分たちの国を持っている。そうではないであろう。この世界はエルフ族が治めるべきなのではないか?それに崇めるのは女神などではなく、我が国の女王ではないのか?」


おいおい‥


いくらエルフが優れていると言ってもスキルの恩恵には授かっているだろう?


そのスキルは女神からもらったものじゃないのか?


「この世界は間違っている。間違いは正さねばなるまい。まずはエルフェノス王国を滅ぼす。そしてロレッタス獣人国。その後は我が国に従う国のみ許そう。そうでなければ滅ぼすのみだ。」


やはり戦争をしかけるつもりなんだな。


しかも世界を相手に‥


どこからその自信がくるんだ?


引き篭もり過ぎて頭おかしくなったのか?


「そ、そんな事出来るはずがないっ!」


「おや?下等種族を相手にするだけなのに、我らエルフが出来ないと?そんなはずないであろう。心配するな、人族も獣人族も我らの奴隷として使ってやる。」


「は、話にならん!もういい、取引は終わったのだ。約束の金を支払ってもらおう。」


「はっはっは!おかしな事を言う。もうお主らには必要あるまい。金をどこで使おうと言うのだ?死んでしまっては使いたくても使えまい。」


「なっ!」


「先程も言ったであろう。褒美をやろうと。我ら高貴なエルフの手にかかって死ぬ権利をな!」


エルフの男が腰につけた剣を抜く。


「ひっ!お、おい!お前たち!こ、こいつらをやっつけるんだ!」


商人の男は護衛の男達に声をかける。


「へいへい。しかしエルフですぜ。こりゃ報酬に見合いませんよ。」


「心配するな!こいつらを倒せば特別報酬を渡す!今回の護衛の報酬を5倍にするぞ!」


「おお!そりゃありがてえ!お前ら聞いたか?報酬5倍だぞ!エルフって言っても魔法が強えだけだ!近接戦闘すれば何とでもなる!こっちの方が人数は多いんだ!1人に数人でかかるぞ!」


護衛の男の号令で動き出す護衛の男達。


1人のエルフを2人以上で囲む形になる。


おお。


気配を隠すのは雑だったが、敵と戦う時の動きはスムーズだな。


もしかして初めから気配を隠す気がなかったのか?

それとも傭兵のように戦う事がメインで気配を隠すような動きをする必要がなかったのか?


どちらにしろ、護衛の人たちはなかなかの手練のようだ。


これならもしかして俺たちの出番はないかもしれないな。


エルフがいくら強いとはいえ全員が変態ほど強くはないだろうし、手練を2〜3人同時に相手するのは無理じゃないか?


「はっはっは!下賎な人族如きがエルフに牙を向こうというのか?笑わせる、皆殺しにしてやるわ!」


そんな事を言っても数的不利は覆せないんじゃないか?


「思い知るがいい!エルフ族の力をっ!『火の精霊よ、我に力を貸せ!』」


エルフの周りに炎のトカゲのような精霊が現れた。


そしてその精霊は空中に炎の槍を十数本形成して護衛に放つ。


「ぐわぁ!」


護衛の男達は炎の槍に貫かれて地面を転がる。


「おやおやどうした?下級精霊の魔法を喰らった程度でこの様か?まだ上級精霊達が控えているんだぞ?」


「うわぁ!に、逃げろ!」


エルフの男の後ろに炎で形取られた大きな巨人が現れる。


「こりゃやばいな。アキーエ行くぞ!キリーエはメンバーに知らせてくれ!」


俺とアキーエはエルフ達の前に飛び出した。






----------------------------------------------------------------------

〇読んでくださった方へ

よろしければ、星をポチッとしていただけると、とても嬉しいです。

今後の執筆のモチベーションにもつながりますので、ぜひよろしくお願いします~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る