第910話
「ベアトリスちゃん!もしエルフが襲ってきたら俺の後ろに隠れるんだぜ!俺がこの女神様の加護で敵を倒す聖剣『ゴッデスキラー』で護ってやるって感じだからさ!」
「正人様!ありがとうございます!私正人様の側を離れません!」
馬車の中で正人とベアトリスさんがイチャイチャしている‥
ベアトリスさんの一言のせいで正人の心を折る事ができなかった俺は、生暖かい目でそれを見守っている‥
巨大アフロで正人の心を折れなかった事や、第二第三の人生謳歌者滅殺魔道具を作ってなかった事に後悔しながら家に戻ると、すぐにキリーエから取引が行われるとの連絡が入りエルフ国の国境に向かう事になった。
何故かベアトリスさんも一緒に来る事になり、国境付近まで数台の馬車で向かっている。
一台の馬車に5〜6人は乗るはずなのだが、巨大アフロのせいでこの馬車には4人しか乗っていない。
俺とアキーエ、ベアトリスさんとアフロだ。
はっきり言って頭が邪魔である。
剣を鞘に納めれば元に戻るのだが、ベアトリスさんからの受けが良かったためかアフロは巨大アフロのままになっている。
そんな巨大アフロを見た時のガッツォさんの目がいまだに忘れられない‥
てか、『ゴッデスキラー』って女神殺しだからな!
よし、女神様お願いです。
この不届者に特大の天罰を当ててください。
お礼はタルタルを頭からぶっかけますので‥
取引まで、まだしばらく日にちがあるだろうと思っていたが、こちらが調査しているのに気づれたのか、それともこちらの目論見が甘かったのか予想よりかなり早く動いてきた。
まあ王国も気づいて調査してたくらいだから、早まったのかもしれないけど‥
まあ俺としては、キリーエにちょっかい出してきたゴロつきをアキーエさんが爆殺魔法つかって返り討ちにしたのが1番原因だと思っているのだが‥
しかもゴロつきは商人とは全く関係のない奴らで、ただキリーエとアキーエに下心から声をかけたらしい。
それをアキーエが刺客と思い、魔法でぶっ飛ばしたとの事。
しかも街中で‥
多分それを各商人の諜報員とかが見てしまって「
危険人物がいるから取引を早めた方がいい」とか言われたんじゃないだろうか‥
俺はそう思っ‥いたタタタ、アキーエさん何故尻を抓るんですか‥?
貴方もついに読心術を得たんでしょうか?
「何故かマルコイが碌でもない事思ってそうな気がして。」
第六感でしたか‥
そんなこんなでエルフの国に急いで行く事になった。
キリーエの兄貴が先行しているようだが、荷物をこれでもかと運んでいる馬車に追いつくのは難しくない。
おそらく同じくらいに目的地に着くと思われる。
「マルコイさん!ついたらどんな感じ?エルフ見かけたら攻撃するパターン?」
「いや、とりあえず様子見だ。そのまま取引が終わる様であれば、後は王国の仕事だな。もしエルフたちがキリーエの兄貴を襲うようであれば、その時制圧に動くってところかな。」
いきなり襲うとかアフロになって気が大きくなったか?
大きくなっていいのはアフロだけだぞ。
いや、これ以上大きくなっても邪魔だけど‥
「それと偵察するのは俺とアキーエとキリーエだ。他のメンバーは俺が声をかけてから出てきてもらう。」
「んあ?何でまた?あっ!ベアトリスちゃんの心配してんの?大丈夫だって。ベアトリスちゃんは俺が絶対護るからさ。」
いや、別にベアトリスさんを心配してるわけではない。
単にお前の頭が偵察に向いていないだけだ‥
「お前は剣を鞘に納める気はないんだろ?」
「もちろん!俺の新スタイルを気に入ってるベアトリスちゃんのためにも、俺はこのままでいくよ。」
「だったらそう言う事だ。」
正人が意味がわからず不思議そうな顔をしている。
俺が巨大アフロにしたんだが、単純に邪魔なんだよ‥
本来はアフロになるのを苦しみながら選択する正人を見たかったんだよ‥
そんな巨大アフロで自信をつけたお前なんか見たくないんだよ‥
「馬鹿話はここまでみたいよ。目的地周辺に着いたみたい。キリーエの部下の人たちが正確な場所を調べてくるみたいだから、それまで静かに待機してましょう。」
ふむ。
もうそんな場所まで辿り着いていたか。
しかしキリーエの部下って‥?
キリーエって商人だよな?
そんな諜報員みたいな人も雇ってるんだろうか?
「マルコイは知らないかもしれないど、商人の世界は情報が大事なんだって。だからそれに特化した人たちも結構数いるみたいよ。」
やはりアキーエさんは読心術を持っているようだ。
しばらく待っていると黒っぽい衣装を着た女性が近寄ってきた。
「マルコイ様。ここから北東に1キロメートルほど進んだ場所にエルフたちが集まっている様です。おそらくそこで取引があるようですね。まだアルトス様は到着されていません。」
「わかった。少し離れているけど、他の皆んなはここで待ってもらおう。何かあればアキーエが合図を上げる。それじゃあ当初の通り3人で偵察に行くぞ。」
俺たちは目的地に足音を殺して進み出した。
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