第909話
正人に渡す魔道具‥
正人が恥ずかしい思いをしつつそれでいて戦闘もこなせる、そんな素晴らしい武器を作る必要があった。
だが魔王を倒すためには、剣にはそれ相応の効果をもらたす必要がある。
光属性の増幅や、正人自身の身体能力の強化など詰め込む魔力回路が多過ぎて他の魔力回路を組み込む事が出来なかった。
しかしそれをそのまま渡すのは俺としては納得いかない。
魔王を勇者として倒してもらいたいが、人生謳歌者も俺は倒すべき相手だと思っている。
だが俺は考えついた。
深い迷宮のような思考の中で、一つの答えに辿り着いた‥
俺は『スペース』から一本の剣を取り出す。
大剣よりも少し小振りではあるが、かなり大きめ剣だ。
剣が収まっている鞘には女神像をあしらった装飾がしてあり、勇者の剣として相応しいものになっている。
「うっわ、スゲー!ちょーかっこいいじゃん!さすがマルコイさん!俺が持っててもめっちゃ勇者っぽく見えるんじゃね!」
お前は勇者っぽく見え‥‥ないな。
「はい!正人様とってもかっこいいです!」
ふんっ。
いつまでそんな事を言ってられるかな?
正人は俺から剣を受け取る。
「マルコイさん!これってどんな効果がある感じ?」
「そうだな、剣自体は対魔族に特化した剣だ。所持者の身体能力の向上や魔力の回復強化、消費魔力減少とか色々つけてるが、1番は光属性の強化だろうな。」
「光属性の強化?」
「ああ。元々光属性を持っていない人が魔力回路を使って光属性を扱える様にしてたんたが、それを光属性を増幅する回路に作り変えた。それを使えば、おそらく魔王とも渡り合えると思うぞ。」
「ふぉー!スゲー!ベアトリスちゃん待ってろよ。俺が魔王倒してベアトリスちゃんの勇者になってやるからな!」
何だよ、ベアトリスさんの勇者って‥
「マルコイさん‥今更突っ込むのもアレですけど、あれって余裕で国宝とか超える聖剣ですよね?あんなのって女神様とかが下賜するものじゃないんですかね?」
「は?だから鞘に女神像つけてるだろ?」
まったくラケッツさんは変な事を聞いてくるなぁ。
俺が作ったなんて言うわけないじゃないか。
もちろん女神様からの贈り物だよ。
俺は女神様から届いた想いを形にしただけだよ。
「そ、そうですか‥た、確かに女神像がついてるから女神様から下賜されたものには見えますけど‥」
そうだろうそうだろう。
ラケッツさんとそんな話をしていると、正人が剣の柄に手をかける。
「シャッキーン!」
変な掛け声と共に、正人が剣を引き抜いた。
それと同時に、今まで剣を収めていた鞘に魔力が流れて魔力回路が反応し光を放つ。
その光は幾何学模様を描きながら鞘の先端まで走ると、光は正人の頭部に移動する。
その光を受け、正人の頭部に生えている髪の毛が物凄い勢いで伸びていく。
そして地面に到達する寸前で、突然縮む様に丸まりながら頭部に戻った。
そして‥
そこにはとてつもなく大きなアフロを持った1人の男が立っていた‥‥‥
ぶふぉっ!
せ、成功だ。
ここに特大アフロ勇者が爆誕した!
「ふおっ!なにか急に頭が重くなったっぽいんだけど!?」
ぐふぅっ!
その通り。
今回正人に渡した剣は、『剣を抜いたら鞘が反応して巨大アフロになっちゃう君』だ!
今回、魔王を倒すと言う目的があるため剣は俺が思いつく正人を強化できる魔力回路を取り付けた。
流石にその剣にアフロを取り付ける訳にはいかず、途方に暮れていた時に俺は気づいたのだ。
鞘にアフロをつければいいんだと。
ただアフロにするだけでは満足できず、更なる進化を求めた。
そこで俺は自分の持つスキル【時空魔法】に目をつけた。
空間を固めるだけではなく、転移やその空間の時間の経過を操作する事ができる。
ならば頭部だけに集中する事で、加速的に髪の毛を伸ばす事ができるのではないかと。
結果としては見ての通り、正人自身の髪の毛を一瞬にして伸ばす事ができた。
それをアフロにする事で、対象者を巨大なアフロを持つ戦士にする事ができたのだ。
しかもこの剣は呪われており、剣を収めない限りアフロは解けない上、何度も使えば髪の毛が生えてこなくなり禿げてしまうという恐ろしい剣になってしまったのだ。
だが正人なら我が身と引き換えにしても魔王を倒すために使ってくれると信じている。
いざとなれば頭皮に回復魔法かけたら禿げも治る可能性もあるしな。
「ベ、ベアトリスちゃん‥‥お、俺の頭どうなってるかな?」
流石の正人も狼狽している。
いいぞ!
よし、そこでベアトリスさんトドメの一言を突き刺すんだ!
「ま、正人様‥‥頭が巨大なアフロになってます‥‥‥とっっっっても威厳があってカッコいいですっ!」
な、なにーっ!
「マ、マジで?俺カッコよくなってる?」
「はい!5倍はカッコよくなりました!」
「マジでぇ!オッケー!さんきゅーマルコイさん!」
ま、まじでぇ?
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