第876話

なるほどなるほど。

確かに俺たちは冒険者だ。


ミミウのやり方が正しいお金の稼ぎ方なんだ。


いつからかわからんが、おかしくなったのは俺の方だったというわけか‥


まあいい。

今気づけたんだ。


今から稼げばいいさ。


手始めに自動で動く鉄人形を作って、モンスターの討伐と素材回収をさせればいいだろうか?


そうすれば俺はここから動かずにお金持ちになれるはず。


「ゴーレムはダメよ。」


「な、何がだアキーエ!?」


「どうせマルコイのことだから、自動で動くゴーレムを作ってモンスター素材を集めようとか思ったでしょ?」


な、何故わかる?

思っていた事が口から出てしまっていたのか?


「何驚いた顔してるのよ?言わなくてもわかるわよ、そんな悪そうな顔してたら。どうせ碌でもない事考えてたんでしょ?でもマルコイが作ったゴーレムを野に放したら、確実に討伐対象になるわよ。それにマルコイの元から離れたゴーレムが大人しくしてるとは思えないし。もしかしたら素材集めじゃなくて、魔王のところに乗り込むかもね。」


酷い言われようだ‥


でも確かに普通の冒険者が街の外で鉄人形に会ったら、モンスターと思うよな‥


う〜む‥

やっぱり地道に稼ぐしかないのだろうな‥


今度魔道具でも売りに行ってみよう‥







お昼は出店で串肉を買って食べる事にした。


あまり出店していないが、屋台も多少は出ており、まだ暴食さんの魔の手が及んでいなかったので何とか購入する事ができた。


この店も今日の夕方には閉まっているだろうな‥


「何?ミミウ様が帰ってきてるのか!?それならありったけの仕込みをしないと!」

「うはっ!今日1日で1週間分の売上が上げれるぞ!」


何かお店で働く人たちからそんな会話が聞こえてくるが、とりあえず気にしない。


ミミウ様って‥


いや、気にしない。



いつもと違い、少しざわつく大通りを通り抜け城に向かう。




城に到着して、門番の人に声をかける。


「すみません、今日獣王様に謁見する予定になっているマルコイです。」


「おお!SSランクのマルコイ様ですね!獣王様がお待ちです。よろしくお願いします!」


はえ?

俺SSランクになったのって今日午前中なんだけど?

俺が驚いた表情をしていると、それに気づいた門番さんが理由を教えてくれた。


「ああ、すみません。獣王様とエッケン様が嬉しそうにマルコイ様がSSランクになられたと。そしてマルコイ様がお昼から城に来られると言って回られておりましたから。」


何やってんのあのおっさんたち。


「余程嬉しかったんじゃない?自分たちの国で活動している冒険者からSSランク冒険者が出たんだからそうなるわよ。まあマルコイの事を自慢したくなるのはわたしもわかるけどね。」


「そんなもんなのか?」


「うん。どうだ!これがわたしのマルコイなんだぞ!ってみんなに言いたくなるし、見てもらいたくなるわ。」


「お、おう。」


私のって言われると少し照れるな‥


「ま、まあそれなら少しわかる気がするかな。俺もアキーエの事自慢したくなるから。どうだ!これがアキーエだぞって!優しくて綺麗で仲間思いで‥」


「もう。」


「ちょっとおっちょこちょいですぐ物を壊したり、爆破したり‥」


「えっと‥」


「冒険者には爆殺女神として恐れられてて、逆らう者には容赦せず、通った後には草一本生えていない‥」


「ねえ‥」


「暴力と言う名の交渉術でどんなお偉いさんも黙らせてきた‥」


ん?


何か不穏な気配が‥


「マルコイ‥?」


ぬおっ!


ちょ、調子に乗り過ぎたか?


「そんなにわたしと語りたいのね‥わかったわ。」


アキーエから赤いオーラが立ち昇る。


あら?


それって結構マジなやつじゃないですかね?


アキーエの魔力が右腕に集まる。


あ。

あれって多分死ぬやつだ。


「マルコイ〜。」


一発回避すれば生き残れるか?

だったらエンチャント:守護する者で‥


いや、あの拳を連続で放たれたら死が確定だ。


『転移』でこの場を離れるべきか。

しかし転移を使う時間を与えてくれるのか?





「おうマルコイ!待っておったぞ!」


その時、獣王様が俺を見つけて駆け寄ってきてくれた。


獣王様の声で我に返ったのか、アキーエの右腕に集まっていた魔力が霧散する。


「じゅ、獣王様!ありがとうございます!俺、獣人国に住んでてよかったです!」


「お、おう。それはこっちの台詞だが、どうかしたのか?」


「いえ、何もありません!早く城の中に入りましょう!」


危なかった!


死以外の選択肢が見えなかった。


何とか回避する事ができた。

ありがとう獣王様、ありがとう獣人国。



「マルコイ。後で部屋でお話しましょうね。」


急いで城の中に入ろうとする俺を見て、にっこりと笑うアキーエ。


そ、そうですよねぇ。


おそらく正座で数時間はお話し合いがあるはずだ。


スキル【創造士】で、足が痺れないように足に挟むクッションでも作る事にしよう‥









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