第874話

「まあそう言う事だから、冒険者ギルドと獣王様の話し合いにはマルコイちゃんも出てもらうと思うわよ。」


「え?それは嫌だよ。」


「なんでよ!その後の各国との話し合いにも出てもらわないと!どの国の王様もSSランクの言葉なら無視しないわ。新しいSSランクなら尚の事。逆に参加しない国の方が疑われるから殆どの国の王かそれに近い人が参加するはずよ。」


新しいSSランクがどんな奴か見に来るってことか。

でもそんなに偉い人がいっぱい来る所に行きたくないんだけど‥


「おそらく場所は神聖国になるわ。距離がある国は王の代行者として王子か王女が来る事になるとは思うけど、世界の脅威に対しての話し合いになるから、さっきも言ったけど来ない国は魔族との繋がりを疑われると思うわよ。」


そりゃそうだな。

でも魔族との繋がりを自覚していない国があるかもしれないし、繋がってても堂々と来る国もあるんじゃないのか?


「もし魔族との繋がりがある国だったらマルコイちゃんに何かしら動きがあると思うわよ。魔族のやってる事を散々邪魔したんだから。」


なるほど‥

マルコイホイホイって事か‥


ちょっと酷くない‥?


「こっちの都合でランクを上げて悪いと思ってるわ。でもマルコイちゃんはそれだけの力を持っている。力には責任がついてくるわ。ただ力を振るうだけならモンスターと同じよ。できればマルコイちゃんの力を世界のために使って欲しいの。こちらのワガママだけどね‥」


俺が好き勝手できるのは、まだ世界が平和だからだ。


だからこそ、その世界を壊そうとしている奴は見過ごせない。


確かに俺には力がある。


最初は仲間を守れるだけの力を求めたつもりだったんだけどな。


「わかったよ。でも条件がある。」


「条件?」


「ああ。俺はSSランクで構わない。ただ、魔王を倒すのは勇者がメインになるだろう。だから話し合いの場には行くが、あくまで勇者の協力者にしてもらえないだろうか?」


そう。

わかっている‥

もう後戻りできないところまで来ている。

今更正人を矢面に出したところで焼け石に水だ。


だけど崇め奉られるような事は、タルタル神だけで十分なんだ‥


「ふ〜ん。いいんじゃない。正人ちゃん達の事も異世界から魔王を倒すために召喚された勇者だって大々的に世界に発信するみたいだしね。その方が今までよりも他国からの支援が得られるみたいだしね。」


「そんなものなのか?」


「ええ。神聖国で産まれた勇者って肩書よりも、世界を救うために異世界から来た勇者の方が、宗教を超えて伝わるみたいよ。それを利用して各国で協力して魔王と戦う準備をするみたいね。」


なるほど。

神聖国は国名も聖王も変わったけど、それまでの印象が悪過ぎて他の国が協力的ではなかったからな。


「それならいいよ。それじゃあ俺たちは獣王様のところに行ってくる。さっきの勇者の件も同じ話を獣王様にもするから。」


「それでいいわ。エッケンさんなら上手に組み込んでいくでしょうから。」


そうだな。

その辺の事は政治が上手な人に任せとけばいいだろ。


「それじゃあ。」


俺はイザベラさんに手を振り別れを告げる。


よし、油断したな‥


俺はイザベラさんに対してスキル【技能眼】を発動させる。


さて‥

どんなスキルを‥

なっ!

イザベラさんがいない‥?


「マルコイちゃん‥乙女に対して何かしようとしたわね。ゾクゾクして気持ちよかったけど、もっとお互い仲良くなってからがいいと思うわ。肌と肌をくっつけるくらいにはね。」


その声は俺の真横から聞こえてきた。


な、なんだと‥


俺が見失うほどのスピードで移動したのか‥?


「マルコイちゃんが何かしようと眼を瞑ったでしょ?そしたら魔力が絡みついてきたからその隙に愛するマルコイちゃんの側に来たの。」


説明ありがとう。


しかし耳元で喋らないでほしい。

悪寒がものすごいから‥


俺は顔に笑顔を貼り付けたまま、ギルドの扉を開けて外に出る。


「マルコイちゃん!私はいつでもいいわ。待ってるから!」


やはりこのギルドにはあまり近づかない方がいいだろう。


俺はそう心に決めて逃げるようにギルドを後にした‥




あー、怖かった。

しかし相変わらず得体の知れない人だな。


「ちょっと気分転換にご飯でも食べていくか?」


俺は隣で歩くアキーエに声をかける。


「そうね。マルコイの顔が真っ青で心配だけど、ご飯食べる元気があるなら大丈夫ね。」


そんなに顔色悪かったですか‥?


昼から登城する予定だけど、少し時間もあるし飲食街に寄る事にした。


何度か来た事のある場所なのだが、いつもと様子が違う‥


ちょうど昼時なのにあまりにも閉まっている店が多いのだ。


辺りを見渡しながら原因を探していると、理由は簡単に発見した。


まだ開いている店があったので、その店に近寄ると中から聞き覚えのある声が聞こえたからだ。


「このお店のメニューに書いている料理を全部10人前くださいですぅ!」








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