第873話

イザベラさんがギルドの受付カウンターを飛び越えてこちらに向かって来た。


やばい‥

どうする?

とりあえず牽制で魔法を放つか?


それとも最初から全力でエンチャント:勇敢なる者を使い近接戦闘に持ち込むか?


どうす‥‥いかんいかん。


そういえばこの人味方だった。


でもムキムキのウサ耳のおじさ‥間違えたお姉さんが突っ込んできたら、誰でも本能で戦おうとするだろ。


「マルコイちゃ〜ん!」


何故この人は唇を尖らせて俺に突っ込んでくるのだ?


やはり倒した方がいいのではないだろうか?

倒せるなら‥だが。


俺はイザベラさんの攻撃を辛うじて避ける。

まさかスキル【予測変換】まで使って避ける事になるとは思わなかった。


イザベラさんと戦った事はなかったけど、何度も飛びかかられているから、【予測変換】の経験として貯まったのだろう。


「もう。マルコイちゃんのいけず!久しぶりの再会なんだからハグくらいいいじゃない!」


う〜む‥

イザベラさんのハグか‥


エンチャント:護る者を使って一度弾き返せば‥

いや、その後に永続的に締め上げられたら終わりだ‥


やはり、今まで通り全力で逃げるのが最善の手だろう。



「そんな事はどうでもいいんだけど、とりあえずプリカの件で報告にきました。」


「あん、いけず。」




俺はプリカで起こった事を詳細に話した。


ただ、魔肉化の件などは獣王様にも話すため、冒険者たちにどこまで伝えるかは獣王様と話をしてから決めてもらう事にした。


「そう。まさかトールルズの内乱に魔族が関わっていたなんてね。それに国を使った実験をしていたなんて‥」


「ああ。プリカで戦った相手は倒すことが出来たが、あれが実験の完成形ではないと思う。だから別の所で他の実験をしているのかもしれない。ただ、今の段階では戦場に出てくる事はないと思うけど、注意だけはしといてもらったほうがいい。」


「そのモンスターを倒せるのはマルコイちゃん達くらいかしら‥?」


「そうだな。多分普通に戦って勝てるのは俺たちのパーティだけだと思う。プリカの冒険者たちでは相手にならなかったからな。」


手強かったし、俺一人だったら更に苦戦しただろうしな。


「わかったわ。そのモンスターが出たら、とにかくマルコイちゃん達に伝えるようにしておくわ。詳細を伝えなかったとしても、危険なモンスターとして登録はできるから。」


「すまない、よろしく頼む。」


実際あれがすぐにどこかを攻めてくるような事はないだろう。

もし大量に作り出す事ができるなら、プリカの兵士とか皆んな魔肉化してただろうし。


制限があるのかわからないけど、片腕もぎってやったから、完成は更に遅れるだろうしな。


「昼から登城して同じ内容を獣王様に伝えるから、その後に冒険者ギルドと国とで話をしてくれ。

多分他の国にも伝えてもらわないといけないと思うからな。」


これから先は国同士の話になってくる。

俺たちは所詮ただの冒険者だ。

国のような大きな力や発言力はないからな。


「わかったわ。ところでマルコイちゃん。」


「ん?」


「今更なのはわかってるんだけど、マルコイちゃんたちの冒険者ランクを上げさせてもらう事になったから。」


「唐突だな。なんで急にそんな事になったんだ?」


「本来はもっと早くランクを上げるべきだったんだけど、マルコイちゃんってば何か大きな事をする時にずっと姿隠したり変えたりしてたでしょ?神聖国の件や、帝国の件も思いっきり関わっているんでしょうけど証拠がなかったのよ。それじゃあランクは上げれないってなってたの。今回の件もトールルズの王様が亡くなってたら公にならなかったと思うけど助けた上に王座を取り戻しちゃったものね。それで私やトールルズのギルドマスター、王国のギルドマスターの推薦があって、マルコイちゃんは晴れてSSランクになったのよ!それにアキーエちゃんとミミウちゃんはSランクになったわ!」


「ふ〜ん。」


「ふ、ふ〜んって‥今世界にSSランクはマルコイちゃん合わせて3人しかいないのよ!国王の数より少ないのよ!」


う〜む‥

SSランクまで上がった事で、何かいい事があるんだろうか‥?


名声は特に必要としていないし、富はキリーエのお陰で十分すぎる程になってるみたいだからな。


俺の財布にはそんなに入ってないけど‥


それよりも俺以外にいるSSランク2人の方が気になるけどな。


「ほ、本当に感動してないわね‥とんでもなくすごい事なのに‥でもこれでマルコイちゃんの発言が力を持つ事になるわ。これからマルコイちゃんの発言が国を動かすような事もあるかもしれない。重責も大きいかもしれないけど、今のマルコイちゃんなら、動きやすくなるんじゃないのかしら?たとえば他国に入る時も特に問題なく入れると思うわよ。姿を変えたりしなくてもね。」


なるほど。

それは助かる。


これからの事を考えるとランクが上がった事は利点になるのかもしれない。


もしかしてそこまでイザベラさんは考えてやってくれてるのか。

仕事のできるガチムチウサ耳‥おそるべし。









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