第867話

祝勝会も終わりに近づき、今はイェルンさんが会を締めようとしている。


何故イェルンさんなのか‥


始まりは新しい力を示すため、そして終わりは新しい力が、今までの力と協力して国を作っていくのを示すためとの事だ。


「‥‥‥という形でこの国の全ての貴族が一丸となって取り組む必要があるでしょう!それこそ神秘の塊であるタルタルソースのように、濃厚で芳醇な香りを出しつつも、1つの調味料として完璧なハーモニーを‥‥‥‥」


あいつに任せたのは誰だ?

王様か?


もう引き摺り下ろしてもいいと思うんだけど‥

まあみんながしきりに頷いているからいいのかな?

タルタルに染まらずに理性のある人が残ってくれるといいけど‥

それがないとこの国の未来は真っ暗‥いや、真っタルタルだな‥




まあそんなこんなで祝勝会も終わり宿に戻る。



普段しない格好をしていたから、戦ったりするのとは別の意味で疲れた。


いや、ある意味戦いだったような気もするけど。



普段着に着替えてベッドに座る。


ミミウの件はとりあえず現状維持のままだな。

もしかしたらミミウ王女って事になるのかもしれない。

もしそうだとしても、ミミウも俺たちも変わりはしないだろうけど。


しかし‥


それよりもエルフだよな‥


ロンギル共和国やライノズ帝国、それにトールルズにも手を出している『あのお方』とやらが絡んでいるんだろうか?


だがエルフがそう簡単に乗っ取られるだろうか?


引き篭もりだから、他種族をあまり国に入れたがらないだろうし、ましてや国の中核に外部の人を取り入れるとは思えない。


洗脳の事も考えたけど、洗脳をかける奴が国に入り込まないとそれも出来ないはず。


部外者が簡単に雇用されるとは思えないしな。


うん。

よく考えたら『あのお方』に対しては引き篭もり最強じゃね?


だからエルフの国についてはあまり心配しなくていいのではないかと思う。


一応獣王様に伝えた後に、獣人国でやりたい事を終わらせた後に覗きに行くくらいかな。


とりあえず魔王の件もあるし、そっちの準備がもう少し進んでからだな。



考え事をしている途中で眠ってしまい、目が覚めると窓の外が明るくなっていた。


顔を洗っているとドアをノックする音がする。


「マルコイ。ちょっといいかしら?」


「アキーエか?いいぞ。」


俺は顔を布で顔を拭き、開いたドアに目を向ける。


するとパーティメンバーが揃って俺の部屋に入ってくるところだった。


「みんな揃ってどうした?」


「え?トールルズでやる事も落ち着いたと思ったから来たん‥」


「いえー!作戦会議ですぅ!」


おお‥

そうだった。


俺1人で決めるんじゃなくて、みんなの意見を聞かないとな。


俺にはこんなにも心強い仲間がいるんだった。


「ちなみにミミウ。作戦会議ではなくて、『今後何する?』会だ。」


「今後何する?ですぅ?」


「そうだ。俺のやりたい事もそうだけど、みんなが何をしようとしているか、意見のすり合わせが必要だからな。」


「はい!」


「はい、恵さん!」


おお、恵は初めて参加するのにこの会が挙手制だとわかっているのか。


「マルコイさんと買い物に行きたいです!」


「うん。それはいつでもできるから、今後の展望ではない。却下だ。」


「う〜‥」


恵が地面に『の』の字を書いている。

まあ約束もあるし、そのうち行ってもいいが今は放っておこう。

触れると面倒だし。


「そうね、とりあえず獣人国に戻って‥はい!」


「はい、アキーエさん。」


途中で気づくとはやるなアキーエ。


「とりあえず獣人国に戻って正人さんたちと合流するべきでしょうね。それから魔王の動向を確認して討伐に向かうとか?」


ふむふむ。


「はい!」


「はい、キリーエさん。」


「うちも獣人国に戻って、各国のホット商会の報告を受けなあかんわ。よっぽどの事がない限りうちが出向く必要はないと思うんやけど、念のためやね。」


ふむ。


「はい!」


「はい、ミミウさん。」


「ミミウはいっぱいご飯が食べたいですぅ!」


うんうん。


「そうだな。獣人国の家に戻ったら、みんなでバーベキューでもしような。」


「マルコイさん、それも今後の展望とは違うのでは‥」


ふっ。

ミミウさんの食欲を放っておくと、1人で地竜とか倒しに行ったりするかもしれないので、ちゃんと次はどこでご飯をたくさん食べるのか伝えておかないといけないんだよ。


「はい!模擬戦します!」


アレカンドロの横で、リルが頷いている。


まあこの2人は訓練ができるならどこでもいいだろ。


「そうだな。俺も獣人国に戻って‥」


「マルコイさん、挙手がないですぅ!」


「おお!すまんすまん。はい!」


「はい、マルコイですぅ!」


「俺も獣人国に戻るのに賛成だ。王様にエルフの国を気にかけてくれと言われたので、それを獣王様に伝えないといけない。それにアキーエが言っていた魔王の討伐だが、今の正人たちでは難しいだろう。」


「え?でもわたしたちが手助けすれば大丈夫じゃない?」


「まあ確かにそうだな。だが今回のように別行動になる事もあると思う。だから、正人たちで魔王を倒せるようになってもらわないといけないだろう。」


「ふ〜ん。それで、具体的にどうするの?」


「ふっふっふ‥勇者狂化‥間違えた。勇者強化と勇者増殖‥間違えた。勇者増量作戦だ。」











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