第868話

「正人さんの強化と正人さんの増量?」


「アキーエ‥そこは正人じゃなくて勇者にしておいてくれ。正人が増えるとか気持ち悪いから。」


いや、意外と面白いかもしれないな‥

でもどうやって正人を増やしたらいいだろう‥

『影法師』で正人そっくりのゴーレムは作れると思うけど、光属性が使えなければ意味がない。


だとしたら光属性の武器?いや光属性の‥


「‥‥コイ、マルコイ!」


「んあっ!どうしたアキーエ?」


「どうしたじゃないわよ。また遠くに行ってたわよ。どうせまた変な事考えてたんでしょう?」


変な事とは失礼だな。

ちょっと正人で面白い‥げふんげふん。

間違えた、正人を強化できないか考えていただけなのに‥


「本来正人たちは神聖国で強くなるためにダンジョンに潜ったり、魔道具を揃えたりして強くなって魔王との戦いに臨むはずだったんだ。それを俺が途中で拉致したから中途半端なままになってるんだよ。」


でも放っておいたら戦争で死にそうだったけどね。


「だから正人たちを強くするために、魔道具を揃えるのと‥」


「模擬戦でありますかっ!」


で、出たな模擬戦バカ。


「くっくっくっ‥わがよう刀が‥ちをほしがっておるわ‥」


おいリルに変な事教えてる奴は誰なんだ?

いい加減出てこい。


「まあ模擬戦で能力を上げるのも必要だけど、スキルのレベルアップも必要になる。だから装備を整えてモンスターを倒してもらおうかと。」


「モンスター?」


「そうだな。ドラゴンとかどうかな?」


「ドラゴンさん?ミミウも行くですぅ!」


だよな。

でも相手が地竜ばかりになりそうな気がしないでもないけど‥


「ミミウが一緒にいくなら心配もないしな。」


「ふ〜ん、マルコイはどうするの?」


「俺か?」


ふっふっふ‥

俺の趣味‥間違えた。

実験‥間違えた。


「俺は勇者と共に戦える人たちの準備を進めるよ。これまでの実験‥げふんげふん。これまで開発した魔道具を使って勇者以外で魔族と戦える人を揃えたいんだ。」


「そういえばマルコイがトールルズに転移してくる前は魔族と戦ってて、そこで盛大に実験したんでしょ?」


実験とは人聞きの悪い‥


全く俺が何のために魔道具を開発してると思ってるんだ。


「そうだな。あの戦いで光剣が下位魔族には十分な効果が得られたからな。それにリルに渡していたオリジナルに関しては上位魔族も倒すことができたし。」


リルに渡したのは量産型じゃなかったから、作るのに魔力と時間がかかった。


でもスキル【創造士】を持っている今なら、もう少し時間も短縮できるだろう。


それに今まで作った装備や新しく考えている魔道具を装着させて、魔族と戦う‥いや、もういっそのこと魔族の住む大陸に突っ込ませても面白い‥間違えた、突っ込ませても充分戦えるんじゃないだろうか?


でも多分魔族だけじゃなくてモンスターもたくさんいるだろうし、そうなったらアウローラとガルベストに魔道具渡せば‥


うん。

凄く面白そうだ。


でも無闇に戦いを挑んで負傷させるわけにはいかない。

ちゃんと相手の事を調べてからにするとしよう。

大事な実験体を怪我させる訳にはいかないからな。


「ふ〜ん、マルコイがニヤニヤしてるから、碌でもない事なんでしょうけど、とりあえず獣人国に戻ってからの話になるのね。」


碌でもないとは失礼だな。

碌でもないかどうか判断するの実際魔道具を使ってくれる人たちだ。


きっと嬉しくて泣いて喜ぶはず。

ラケッツさんとかよく泣いてたしな。


「それじゃあ、みんなで獣人国に帰るとしよう。王様には俺の方から言っておく。みんなも会いたい人がいれば帰る前に会っといてくれ。くれぐれもタルタル神殿にだけは近寄るなよ。あれこそ碌でもない事が起こりそうだからな。」


みんな頷いているけど、ニマニマしている。

頼むよ本当に。


しかし挨拶しておく人か‥

王様にはするとして、後はイェルンさんには世話になった‥‥‥‥なったか?


まあいい。

挨拶しに行くと何かに巻き込まれそうな気がするから、タルタルソースだけ送っておこう。


タルタルソースを魔法で凍らせて、樽に入れて送れば少し時間が経っても問題ないだろ。


俺がプリカにいる間には送りたくないからな。

奴の事だ。

送った後に俺を探しに来るはず。


何となくだが、タルタル神殿の事をある程度諦めて、タルタル騎士団とか作って魔族の大陸に送り込んだら、どちらも消えてなくならないだろうか‥


タルタル騎士団が空からタルタルを振りかけて、魔族の大陸を真っ白にしてくれないだろうか‥

もちろんその時はイェルンさんに1番に行ってもらうけどな!


俺はプリカの建物の中で、1番大きな神殿を見ながらそう思った‥









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