第866話
「お爺ちゃ‥王様どうしました?孫‥ミミウとの話はもう良かったんですか?」
「マルコイよ‥知っていると思うが、私はお爺ちゃんではないのだが‥」
いや、知ってますけど、さっきの光景は10人が見たら10人がお爺ちゃんと孫と思うと思います。
「ま、まあそれはいいのだが‥」
ふっ、俺の視線に負けたようだな‥
「マルコイよ。改めて礼を言う。貴公がいなければこの国は滅んでおったかもしれん。こうやって皆と話す事もできなかったであろう。」
そうですね、お爺ちゃん。
「マルコイよ。貴公が獣人国にいたと言うことは、獣王から連絡があった、各国に魔族関連の者がいるかもしれぬという話は知っておるか?」
「ええ。私が獣王様に報告させていただきましたから。」
「そうか‥貴公が獣王に伝えたのであれば真実なのであろうな。実際我が国でも起こった話なのだからな。」
魔王は今戦力を溜めているのか、前回の侵攻後は動きがない。
どう言った理由かわからないが、今各国の中核に入り込み国を乗っ取ろうとしているのは、おそらく『あのお方』の指示なんだろう。
帝国もそうだが、他にもそんな国があるのかもしれない。
「そこで私からも貴公に伝えておきたい事がある。」
「伝えておきたい事?」
「ああ。エルフの国の事だ。」
エルフ‥
エルフかぁ‥
エルフにはあまりいい思い出がないんだけど。
だって1番交流があるエルフがあの変態だもんな‥
「我らドワーフはエルフと仲が悪い。戦争はしないが、嫌がらせの魔道具を送ったり、特殊な珍味を送り合ったりしておった。」
どこの子供だ‥
国同士でそんなくだらないことするなよ‥
「まあそれでも腐れ縁でな。ずっとそんな事をしていたのだが‥この国で反乱が起こる少し前からおかしくなってな。」
「おかしくなった‥?連絡が途絶えたとかですか?」
「いや、そうではないのだが‥贈り物がな、普通になったのだ。」
「普通になった?」
「ああ。私が特注で作らせた、開けると破裂する箱には『楽しい遊具でした。』とか、珍味も『美味しくいただきました。』など返事してくるようになったのだ。」
「それって単に面倒になったからじゃないですか?」
「なっ!?」
あ、しまった。
思わず思った事をそのまま口にしてしまった。
「そ、そうかのぅ‥」
なんで寂しそうなんだよ。
「しかし奴らは希代の引き篭もり民族だ。だからこそ、我らドワーフとの些細なやり取りを楽しみにしておったはず。それをまるで終わらせるかのようなやり方をするとは‥」
何かだいぶ捻じ曲がった信頼と言うか何と言うか‥
「わかりました。獣人国に戻った時に獣王様にも伝えておきます。それに‥」
「それに‥?」
「はぁ‥‥時間がある時にエルフ国の様子を見てきますよ。」
「おお!そうかそうか!貴公が気にしてくれるのであれば、これほど嬉しい事はない。」
「異変があればすぐに向かいますけど、特になければ本当に時間がある時になりますからね。」
「うむうむ。それで構わん。あの永く生きてるエルフの婆さんの事だ。もしかしたらその時の気分だったのかもしれん。あの婆さんはドワーフである私が子供の頃から女王だったからな。暇を持て余していつもと違う事をしながらこちらの反応を見ておるのかも知れぬしな。」
エルフかぁ‥
長寿で顔立ちが美しい引き篭もり種族のはずなんだけど‥
いくら美しくても変態はなぁ‥
全てのエルフが変態ってわけじゃないんだろうけど、あいつのインパクトが強すぎるからな。
変態に話を聞くべきか‥
まあ獣人国に帰ってから、獣王様と相談して決めようかな。
「エルフ族にはあんまりいい思い出がないので、気乗りしませんけど、王様の頼みなので頭の中の耳の側で、ポロッと落ちそうな所辺りに入れておきます。」
「そ、それは落とす前提ではないのか‥?それにエルフにいい思い出がない?エルフ族はあまり外に出ない引き篭もりだがら会う機会も少ないと思うのだが‥?」
「いえ、私が出会ったエルフ族は氷のように理詰めで迫ってくるギルドマスターと、獣人国の闘技会に出た時に対戦したSランク冒険者くらいなんですが、そのSランク冒険者が変態だったもので‥」
「ふむ。エルフ族の冒険者か‥確かロメントと言う名ではなかったか?」
「えっと‥多分そんな名前だったと思います。基本変態としか呼んでなかったので、名前まで覚えてませんでした‥」
「ロメントか‥確かあやつは王族であったはずだぞ。冒険者になった事で王位継承権はなくなったはずだが、元々王が変わらないような国だがらな。継承権などあってないようなものだが‥‥‥ど、どうしたマルコイ!目の球が飛び出そうな顔をしているぞ!」
「あ、あの変態が王族なんですか‥」
やっぱり余程の事がない限り行かない事にしたいなぁ‥
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