第850話
アレカンドロの上段から振り下ろされた斧がリルに向かって迫る。
リルは迫ってきた斧に対して刀をたてる。
斧と刀だ。
重量の違いによりぶつかったら刀が折れると思ったが、斧と刀が接した瞬間に刀がスッと力を逃すように斧の振り下ろし先を誘導する。
力が逸れた事により、斧が地面を叩く。
隙が出来たアレカンドロに向かい、斬り返したリルの刀が迫る。
勝負あったと思った瞬間にアレカンドロは斧を地面に叩きつけた反動で、身体を前転させる。
リルが追撃しようと刀を振るうが、アレカンドロは体勢が崩れた状態にも関わらず斧の握りの部分で刀を受け止める。
通常の斧であればそのまま斬り落とすところだろうが、アレカンドロの斧はスキルで作成された斧のためか、リルの刀の勢いをそのまま受け止めた。
反動でアレカンドロの身体が地面を転がるが、間合いが開いたためかアレカンドロはすぐに体勢を整えてリルと再度対峙した。
リルは身体に砂埃がついているが、アレカンドロに至っては、砂埃以外にたくさんの擦り傷や切り傷を受けている。
はぁ‥
君たち毎回こんなハードな模擬戦をしてるのですか?
多分枷は幾つかつけてるんだろうけど、真剣勝負さながらじゃないですか。
絶対この2人とは模擬戦しない方がいいな‥
いや、負けないよ。
リルの刀が速すぎたり、アレカンドロのパワーが脅威だったりするけど、スキル全開でゴリ押し勝利はもぎ取れるはず。
でも素の力で勝負したら負けそうな気がするんだもの‥
「2人とも、いつもこんな模擬戦してるのか?」
「あ!マルコイ殿!戻られたのですか?‥‥ところで、いつもこんなとはどう言う意味でしょうか?」
「え?いつもこんな感じで模擬戦してるのかってそのままの意味なんだけど‥」
するとアレカンドロは言ってる意味がわからないような顔をしてこちらを見ている。
え?
何故通じない?
「アレカンドロ‥たぶんマルコイはスキルもつかわないで手をぬいてるっておもってる‥」
「あ!なるほど!」
いや、リルさん何を言うんですか?
そんな事全く思ってませんよ!
このハードな模擬戦にスキルまで使ったら、もう模擬戦レベルじゃないですよ!
「もちろんスキルを使っての模擬戦もやっております!ですが、地力を上げるためには、素の力を上げる事も必要かと思いまして!スキルを使うと戦い方が変わりますから!」
「アレカンドロがスキルつかうと、もっとつよい‥ごかくのしょうぶになる‥」
確かにスキルを使ったら、アレカンドロに関しては空中戦になりそうだしな。
そして空中から魔力が尽きるまで斧投げ放題。
どこの魔王様だよ‥
でもそれと互角ってリルも大概だな!
「スキルに頼り過ぎずに強くなる。そうしないとマルコイ殿と共に戦う事ができませんからな!」
えっと‥
む、胸が痛い‥
スキルどころか爆弾でも何でも使って勝てばいいと思っている身としては胸が痛い。
「マルコイ‥スキルにつかわれてない‥」
「そうですな!マルコイ殿はスキルに振り回されず、スキルを使いこなしてある!そんなマルコイ殿に並ぶためにも、自分はもっともっと強くならねばならぬのです!」
いや、もう充分過ぎるほど強いと思うのですが‥
血塗れで戦う姿は、戦乙女ではなく狂戦士でしたけど‥
「マルコイ‥いつかたおす‥」
だから何故君は打倒俺なのかね‥
「いや、もういいです。張り切って模擬戦してください。ところでちょっと聞きたい事があるんだが‥」
「何でしょうか!マルコイ殿の知らぬ事を自分が知ってるとは思えませんが、お力になれるのであれば粉骨砕身でお答えします!」
ただの質問に力の限り答えなくていいんですけど‥
「例えば生き別れになった親子がいるとするだろ?それが15年ぶりに再会したとして、本人たちはそれを知らないんだよ。でも第三者が親子かも?って思ってるんだけど、本人たちに伝えるべきかな?」
「そうですな‥‥‥どちらの力が上か、しっかりと戦わせるべきではないでしょうか!」
「なんでだよ!」
「親子とはいえ15年も離れていたのであれば確執があるでしょう。お互いが思う事があるかもしれませぬ。ですが戦ってどちらが上かわかればその後の話を進めやすくなるはずです!」
「はい、アレカンドロさん。それは何故ですか?」
脳筋の答えに続きがあるとは思わなかった。
ちょっと気になる。
「はい!お互いどちらの力が上かわかれば、勝った方は自分より下の者を労わることができます。また負けた方は、相手を敬う気持ちを持ちます!そうする事でお互いを思いやり、気持ちが通じると思います!」
無茶苦茶な理論だが、なるほど‥
でもね、それだと王様が確実にぶっ飛ばされちゃうんですよね‥
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