第843話
全ての攻撃がヨエクに直撃した。
ヨエクの腕はキリーエの銃弾で千切れ飛び、両脚はリルの剣撃で斬れかかっている。
とどめにアレカンドロが投げた2本のどデカい大斧がヨエクの身体を物理的に潰した‥
いや、どんだけなん‥
これで復活するヨエクも大概だが、普通だったら明らかに過剰攻撃だよな。
多分魔王辺りだったら死んでる気がするんだが‥
俺なら逃げてるけどね!
ヨエクは身体のいたる所から血を流し、血溜まりの中に蹲るように沈んでいる。
その血溜まりから徐々に黒い煙が上がってくる。
「『我が四面を荒野とかせ!灼眼の炎槍』」
アキーエが爆炎の魔法を練り上げている。
俺もアキーエに続くようにエンチャント:穿つ者を発動させて、火属性の魔法を使うために魔力を練る。
「『爆炎柱』!」
ヨエクを中心に爆炎の柱が立ち上がる。
これにアキーエの魔法が追い打ちをかければ、驚異的な再生能力を持つヨエクでも倒すことができるはず!
俺はアキーエに目を向ける。
アキーエの前に炎の槍が発現して‥霧散した?
アキーエが苦しそうな顔をしている。
まさか毒を吸ってしまったのか!?
アキーエが無理やり制御したのか、数本の炎の槍がヨエクに向かう。
しかし炎の槍は目標だったヨエクからずれて、後方に着弾して爆炎を上げる。
「アキーエ!」
俺はすぐにアキーエに駆け寄る。
「ごめんなさいマルコイ‥魔力を練ろうとしたら頭が割れそうに痛くなって‥」
毒を吸った俺と同じ症状だ‥
俺はエンチャント:慈愛ある者で回復することができたが、アキーエは毒に侵されながらも黙っていたのか‥
その時、急に身体が軽くなる。
アキーエの苦痛の表情も少しマシになったようだ。
どうやらリルが【刀纏水姫】を使ったようだ。
「すまないリル。助かった。」
リルは頷いているが、顔色が良くない。
まさかリルも毒を吸い込んだのか?
まずいぞ‥
「キリーエ!」
「マルコイさん、これ使うて!」
キリーエから瓶を渡される。
俺はすぐにアキーエに瓶に入っている液体を飲ませる。
キリーエの事だから毒耐性のポーションのはずだ。
これで回復すればいいが‥
「ありがとうマルコイ、キリーエ。かなりよくなったみたい。」
まだ苦しそうであるが、かなり持ち直したようだ‥
「キリーエ、リルにも頼む。」
「わかった!うちとアレカンドロちゃん、ミミウちゃんも飲んどくわ!」
「頼む!」
くそっ!
魔力に反応する毒なのか?
リルやアレカンドロもスキルを使うのに魔力を使ったが、痛みの度合いが違うようだ。
特に大きな魔力、たとえば魔法などを使おうとすると痛みが強くなる。
シエブラが自信満々に使うわけだ。
時間をかければ対処もできるとは思うが、初見だと難しい。
アキーエが魔法を放てなかった事で、ヨエクの身体が再生しつつある。
そして再生しつつあるヨエクの身体の周りには、あの黒い煙が充満している。
どうする!?
一旦風の魔法で辺り一帯を吹き飛ばすか?
異世界の知識に何かないのか‥?
ガスマスク?
スキル【創造士】で創造する?
素材がこの世界にあるもので創れるのか?
原油なんて『スペース』には入ってない‥
とりあえずゴム材で作るべきか‥
考えている間もヨエクの身体が再生していく。
時間が足りない‥
くそっ!
「女神の息吹よ!彼の地に慈愛と安らぎを!『女神の謳歌』!」
辺りに光の波が押し寄せる。
ヨエクの近くで渦巻いていた黒い煙が、まるで苦しむような姿を見せて四散していく。
「お困りのようですね。」
声のした方を振り向く。
そこには俺が後回しにしていた問題が佇んでいた。
「め、恵?」
「はい!恵です!みんなに置いて行かれて、泣きながら1人で野宿して、壁が壊れたから中に入ったら知らない人に追いかけられたところを冒険者の人に助けられて、マルコイさん達のいる所を教えてもらった恵です!」
「お、おおう。」
せ、盛大に怒ってる‥よね?
「街の外で待ってたら街で轟音がして、それを聞いた周りの人はみんな逃げてしまったけど、みんなの帰りを1人で虫と戦いながら待っていた恵です‥ふぇ〜ん‥怖かったんですよぉ!」
「えっと‥悪かった!あとで埋め合わせする!ところで今毒が消えたけど、恵の魔法か?」
「ぐすっ、ぐすっ‥‥‥え?埋め合わせ?本当ですか?絶対ですよ!」
「ああ、俺のできる範囲ならな。それで、さっきの質問の答えは?」
「はい!私の魔法です。周りの人の状態異常を回復して、辺りの毒なんかを無効化する魔法です!」
なんて事だ。
勇者パーティで1番有能かも‥
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