第842話

「ぐ‥ガ‥コロす!こロッス!」



ヨエクのやつ、かなり錯乱しているようだが‥


しかしこちらもヨエクの変化がわからないから迂闊なことはできないな‥



ヨエクの身体から噴き出した血が地面に流れ落ちる度に、黒い煙が立ち上がる。


ヨエクの周辺に黒い煙が充満する。


風に乗って煙が徐々に近寄ってくる。



気味が悪いな‥


俺はエンチャント:穿つ者を発動して風の魔法を使う。


こちらに近寄ってきていた煙が四散する。


薄まった黒い煙が周りの空気に同化して徐々に色を失っていく。


空気に乗って俺の近くまで来た時には、ほぼ無色になっていた。


「うっ‥」


鼻の奥に痛みが走る。


なんだ?


「マルコイ!これ毒よ!」


アキーエの叫び声が聞こえた時には俺は後退していた。


周りの空気を全て吹き飛ばす威力の風の魔法を使うために魔力を練る。


頭の奥で鐘を鳴らされるように痛みが走る。


くそっ!


無理やり魔力を制御して風の魔法を発動させる。


「『斬風壁』!」


風の刃の壁を作り出し、周辺の空気ごとヨエクに叩き返す。


風の壁は周辺の空気を吹き飛ばし、ヨエクの身体を斬り刻む。


風の刃で傷ついたヨエクの身体から血が流れ出す。


「『氷封柱』!」


ヨエクの血が地面に流れ落ちる前に、氷の魔法でヨエクの身体ごと氷漬けにする。


すぐにエンチャント:慈愛ある者に切り替えて身体の毒素を抜く。


頭痛が少しずつ回復していく。


「こいつはヤバいな‥」


「マルコイ、あれっていつまで待ちそう?」


「もって数分だ。もう少しずつ動き出してるからな。」


ヨエクは氷の中に封じ込められているが、腕や足が徐々に動き出している。


魔法をかけ続けて時間を稼ぐ事ができると思うが‥


おそらく今のヨエクは万全ではない。


変化が完了する前に攻撃したからな。


もし時間を与えたら氷の魔法でもって数秒とかになるかもしれない‥



しかし何ださっきの煙は‥


かなり薄まった状態であれ程のダメージを受けるとは思わなかった。


あれをまともに喰らったらどうなるかなんて想像もしたくない‥


「どうするのマルコイ?」


「全火力を持って一気に勝負をつけよう。」


俺の魔法ではとどめを刺す事はできないかもしれないが、アキーエと同時に攻撃したら可能性はあるかもしれない。


「キリーエ、リル、アレカンドロはヨエクが動き出したら一斉に遠距離から攻撃してくれ。その後に俺とアキーエの魔法で焼き尽くす!」


まさかシエブラの置き土産がこんな凶悪なものとは思わなかった。


こんな物放っておいたら、プリカが死の街になってしまうぞ。


自分が王となろうとしている国を滅ぼすような存在に変化させられるとはな‥


ヨエクはそれすらもうわかっていないのだろうが‥


ミミウじゃないが、シエブラは絶対に許せんな‥





ヨエクが氷を壊すタイミングで攻撃できるよう、それぞれが攻撃の構えを取る。


ちなみにミミウは遠距離攻撃がないので、予想外の事が起きた時に対応してもらうため盾を持って待機している。


決してさっきのドラゴンとの戦いで魔力を使ったから眠くなってる訳ではない。


あの鼻提灯はフェイクである。


まるで眠っているように見せかけているのだ。

どこからどう見ても本当に眠っているようだがな‥


あ、首がコクってなった。


そ、それでもきっとあれは寝たふりなんだ‥





ヨエクの動きが大きくなっていく。

それに伴い、身体を包んでいた氷にひびが入り少しずつ剥がれていく。


「行くぞ!」


遠距離からの攻撃を任せた3人が同時に動く。


「アサルトフルバレット!」


キリーエがプロミネンスから数発の銃弾を放つ。


銃声が聞こえないからわからないが、1つの動作で数発の弾を放った。


な、なんだそりゃ‥


いつの間にそんな技を使え‥


「斬:風狼【刀牢】」


リルが俺の目にも捉えられない速度で刀を振るう。


まるで網の目のような斬撃がヨエクに向かって飛ぶ。


おおい?


だからなんで君たち‥


「どっせーい!『飛斧刃聖魔両拳』!」


アレカンドロが巨大な大斧を両手に持ち、それを信じられない程のスピードでヨエクに投擲した。


アレカンドロも‥


いや、だからお前は斧飛ばしてるのに、何故拳って言ってるんだよ!

そこは地獄極楽両斧投だろ!


アレカンドロのネーミングセンスはさておき、投げたのが、片方でヨエクの巨大化した身体と同じくらいの大きさの斧なんだが‥


さ、三人ともびっくりするくらいの火力なんだが‥


いかんいかん。

思わず見惚れてしまった


よし、次は後は俺とアキーエの番だ!









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