第841話

なんだなんだ?

何が起こったんだ?


魔肉ドラゴンが突然消えたぞ!


恐る恐る壁から身体を出して確認してみる。



どうやら魔肉ドラゴンは大きな穴に落ちたようだった。


穴の中から呻き声が聞こえている。



あんな所に穴なんてなかったはずだけど‥


あ!


ノームたちが魔肉ドラゴンの後ろで何かしていたみたいだけど、この落とし穴を作っていたのか!


なるほど!


しかしこの短時間であんな穴を作るとは、さすが土の精霊だな。


でも魔肉ドラゴンを穴に落とした後はどうする‥


ミミウさんが『召喚鎧装:ノーム』の駆動型多腕マシンで動かしていた土壁が魔肉ドラゴンの落ちた穴に崩れるように落ちていった。


えっと‥


生き埋めですか‥?


でもこれだとどうにか出て来そうなんだけど‥


「ノームさん!お願いするですぅ!」


ノームたちが魔肉ドラゴンが落ちた穴の上に群がっている。


すると穴の上に落とした土が固まっていく。



あ、なるほど。

きちんとトドメを刺すわけですね。



し、しかし凄いな。


俺が倒すのに苦労しそうだと思ったモンスターが、一瞬にして討伐されたよ。


あ、でも念のため。


俺は固まった土に近寄り、地面に手を添える。


「『創造:コンクリート』」


魔肉ドラゴンが落ちた穴一帯が灰色の硬質化した物に変わる。


「よし、これで出てこれないだろ。」


ノームさんたちも土の中にある空気を抜いて土を固めたりしてたけど、こっちの方が確実だろ。


ノームさんたちの仕事を取ったかなとも思ったけど、飛び跳ねて喜んでるからやってよかったって事だよな。


俺の脚にしがみついてスリスリしてるのもいるしな‥



セメントの素材である石灰石やけい石、赤鉄鉱などはヨエクの鉱山からノームさんたちがたっぷり持って来てくれたからな。


それにミミウさんが使った土壁の砂利なんかを混ぜて固めてみた。


別に何かに使うつもりもなかったんだけど、せっかくノームさんたちが持って来てくれたから『スペース』に入れてたのがよかった。


人生何が役に立つかわからないよね!


「マルコイさん、ありがとですぅ!目に毒ドラゴンさん討伐完了ですぅ!」


えっと‥


「そ、そうだな!討伐完了だ!」


結構シエブラの奴がドヤ顔で投入してきた戦力だったと思うんだけど‥


確か戦力を削らせて‥みたいな事を言ってた気がする。


う〜ん、蓋を開けてみたら戦力どころか魔力も大して減ってないんだけど。


あ、リルたちのやる気は大幅に削がれたみたいだ。

地団駄踏んだり、ガックリと落ち込んでる。


みんなしてドラゴンと戦いたかったんだろうな‥


どこの戦闘狂集団だよまったく‥



でも食べ物関連の相手だから、みんな黙って見守ってたみたいだな。


触らぬミミウに祟りなしだ。


さすがにシエブラもこんな事になるとは思っていなかっただろう。


あれだけ上から目線で色々言っておきながら、腕は吹っ飛ばされて奥の手で出してきたドラゴンは生き埋めにされる‥


逃げられた事は残念だが、少し胸がスカッとしたぞ。



魔肉ドラゴンが落ちた穴は、ドラゴンが落ちてすぐは唸り声が聞こえていたが、今は物音ひとつ聞こえてこなくなった。

と、討伐完了だ!



さ、さて。


それじゃあサクッとヨエクも倒してしまいましょうかね‥





ヨエクはシエブラに液体をかけられた場所から移動していなかった。


今のうちに討伐した方がいいのかな?


ゆっくりとヨエクに近づく。


「ぐっ‥‥ぐガ‥‥」


何か今のうちっぽい。


俺が目配せすると、アキーエが頷く。


「弾けよ!灼熱の炎矛!」


アキーエの前に数本の槍状の炎が浮かび上がる。



わざわざ敵が強くなりそうな状態なのに待つなんてしませんよっと。


槍状の炎は勢いよくヨエクに向かって飛んでいく。


そしてヨエクに突き刺さり爆発を起こす。



うわぁ。


さすがアキーエさん‥

容赦ない素敵な爆発です。



爆発の煙が晴れてくると、ヨエクが姿を現す。

爆発のせいで身体の至る所に傷を作り、ドス黒い血を流している。


ヨエクの流した血は地面に滴り落ち、その場に血溜まりを作る。


しばらくすると血溜まりから黒い煙が立ち上がった。



まあこれくらいじゃ倒せないよな。


別に変化もないようだから、一斉に攻撃するか!



ん?


血溜まりに黒い煙‥?


さっきまでは触れた物を徐々に溶かす酸性の血だったはずだ。


何か変化が起きた?

可能性としてはシエブラの液体だが‥


煙の色が変わったくらいでとは思うが、シエブラが仕掛けた物だ、用心しておいた方がいいかもしれないな‥







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