第832話

ヨエク兵たちとの戦いが始まった。


ヨエク兵たちは50人以上いるようだが、何人いようが相手にはならない。


問題はこのうち何人くらいが肉塊に変化するかって所だな。


するとすぐ横から不穏な気配がする。


俺に飛びかかってきて首を落とした奴だが、さっそく変化しそうだ。


そう思っていると、キリーエに胸に風穴を空けられたやつも変化している。


いや‥‥


おいおい、どんだけだよ‥


リルやアレカンドロが倒したやつまで起きやがってきていやがる。


これは死んで発動するやつか‥


本人が知らない間に身体に埋め込まれてたんだろう。



まあヨエクについた代償として受け入れる事だな。


死んだ後だから本人たちも気づく事はないんだろうけど。


しかし数が多い。


肉塊となったやつが他のヨエク兵を倒し、そのヨエク兵が肉塊となっている。


これだけの数を相手にすると負ける事はないが、倒すのに時間がかかる。


そうなると、ヨエクに時間を与えてしまうことになるな‥


奇襲の予定だったが仕方ない。


「みんな一体ずつ倒して行くぞ。みんな肉塊を攻撃してくれ。俺とアキーエで再生しないように燃やし尽くす!」


「マルコイさん?あれはいいお肉ですか?」


おお!

ミミウさん目が覚めましたか!


「いや、ミミウ。あれはどう見ても食べれないお肉だよね。紫色だし、食べたら絶対お腹壊すぞ。」


「食べれないお肉ですか‥食べれないお肉は悪いお肉ですぅ!ノームさん!」


ミミウの声に反応して土の精霊ノームが現れる。


お、おいおい。


1、2、3、4‥‥‥いっぱい。


あれぇ?

ミミウが呼べる精霊ってこんなにいたっけ?


もうね、うじゃうじゃいるんだけど‥

好き勝手してて、俺にしがみついてるやつまでいるし。


しばらくノームがわちゃわちゃしていたかと思ったらら突然地面が揺れる。


そして肉塊の周りに土の壁が迫り出した。


「食べれないお肉は目に毒ですぅ。こうすれば見えなくて済むですぅ。」


すげー!

これって魔法なのか?

人が使う魔法の域を完全に超えてるよな。


しかし食べれない肉ね。


確かにその通りですけど‥


あっ!


「アキーエ。あの囲いの中に炎の魔法をぶち込んでくれない?」


「え?あ!なるほど。わかったわ。」


俺の意図をわかってくれたアキーエは、すぐに魔力を練り上げ魔法を放つ。


「弾けよ!灼熱の爆炎!」


肉塊はアキーエの放った数発の魔法の炎に包まれる。


そして通常なら四散して消えるはずの炎も四方が壁に囲まれている事で消えずに燃え続けている。


少し中を見てみるか。


時空魔法を使って土壁の中が見えるところまで浮かぶ。


うわぁ‥


敵ながら同情するくらいな事になってるんだけど‥

再生はしてるいんだけど、再生した先から炎に燃やされている。


生存本能なのか、炎から逃れようとしているようだが土壁が邪魔をして動けないでいる。


肉塊は重なるように動きをやめ、次第に炭化していく。


しばらくしてノームが解除したのか土壁が消える。


中には真っ黒な炭のような物が残っていたが、風が吹くと砂のように消えた。


「なるほど。こうやって倒すと効率がいいのね。」


「ほんとね‥でもミミウとノーム次第だとは思うけど。」


「そうだな。」


凄まじい数の精霊を召喚したミミウの方を見る。


「マルコイさん!お腹空いたですぅ!」


ミミウの精霊召喚はお腹に直結なのね。


「ミミウ。これから敵の根城に突っ込もうとしてるんだけど‥」


俺がそう言いかけるとミミウが涙目になっていた。


「そ、そうだよな。やっぱり敵の所に突っ込むとしてもお腹が空いてたらダメだよな。」


うちの腹ペコ大魔王の空腹は無視してはいけない。


下手な魔王よりも世界を壊してしまうかもしれませんから。


「ミミウ。外だから簡単なやつでいいか?」


「はいですぅ!でもマルコイさんが作ったやつがいいですぅ!」


あ、スキル【創造】で作ろうかと思ってましたけど、先手をうたれました。


俺は『スペース』から調理台を出して準備をする。


結局普通に倒すのと同じくらいの時間がかかる気がするんだけど‥







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