第822話
うん。
ダリックは倒せたが、死にかけた。
ダリックのせいではなく、自分の蒔いた木偶爆弾のせいだが‥
魔力に余裕があったから、エンチャント:護る者を使って防御膜に助けてもらった。
あれがなければこんがりなっていただろう‥
まあ爆発の衝撃は防いだけど、炎で頭はこんがりアフロになったけど‥
爆発が収まったところで、ダリックがいた中心部を見に行く。
爆発前に蠢いていた肉塊は見当たらない。
とりあえず全てを焼き尽くす事ができたようだ。
魔族とは違い、光属性の攻撃以外不死というわけではなさそうだな。
もしこれで死んでいないのであれば、ギルドを襲った肉塊も心配になるところだった。
まあ多少は可哀想とは思うが、自分で選んだ道だ。
しょうがないだろう。
俺はダリックが死んだのを確認してギルドに戻ろうとしたが、ふと目に入った物があった。
嫌な予感がしたが、確認しないわけにはいかない。
俺は恐る恐るその場所に近寄った。
自分の目に入った物が信じられなかった。
俺はいったい何のために戦っていたのだ‥
思わず俺は絶叫した‥
「自動二輪車ー!」
自動二輪車はダリックに潰された後、俺が復活させるのを待っていたはずだ‥
それが‥
それがこんな黒焦げになるなんて‥
あまりに高温だったのだろう。
フレームなんかも原型を留めず、辛うじて自動二輪車だったものとわかる程度になってしまっていた。
これではスキル【創造】でも修復する事は難しく、新しく創り出すしかないだろう‥
くそっ!
許さないぞヨエクめ!
俺は頭のアフロと、自動二輪車の残骸にヨエクを討ち取ることを誓うのだった‥
かなりの爆音だったため、人が集まってくる気配がしてきた。
ここでヨエク兵と戦うのはあまり好ましくないので、一旦ギルドに戻る事にした。
魔力がすっからかんだからね。
リルは恐らく先に戻っているのだろう。
アイツ振り返りもせず逃げやがったからな‥
自動二輪車もないので、自分の足で歩いて帰ってきた。
やっぱり許さないからなヨエクめ‥
ちょうどギルド前についた時に、反対の方から歩いてくる人影が見えた。
どうやらアレカンドロのようだが、何かを引き摺っている。
アレカンドロが俺に気づいて小走りで走り寄ってくる。
引き摺っているものは、その途中で岩に当たったりしてバウンドしている‥
「おお!マルコイ殿!そっちは強い相手はいましたか?自分もそちらに行きたかったのですが、今回はリル殿が行かれるということだったので、自分は諦めて模擬戦をしておりました。」
「そ、そうか。ところでその手に持ってるものは何だ?」
「おお!そうでした、マルコイ殿の言いつけを守って偉い奴と模擬戦をしたのですが、念のために確認で持ってきました!」
そう言って引き摺っていた物をポイと投げるアレカンドロ。
おおう‥
なかなかボコボコにされているなぁ。
それでも命に関わるような傷はないみたいだ。
ただ目が死んでて息をしてるだけの生き物みたいになってるけど‥
「模擬戦して、傷を負ったらポーションで治してとしてたんですが途中で反応が悪くなりまして。」
おお‥
そ、それはお気の毒に‥
体力お化けのアレカンドロが気の済むまで模擬戦するとかもう死刑じゃないか‥
「ポーションはどうしたんだ?」
「あ、キリーエ殿が念のためとギルドに置いていたやつを使いました!」
なんて事だ‥
ボコボコにされて死にかけた後ポーションで治される。
しかもポーションをかけられるまでにしばらく時間がかかるなんて‥
その間のヨエク兵の精神状態を考えるとちょっとだけ可哀想になってくる‥
「この偉い奴はどうしますか?」
「ん?ヨエクの所の鎧きてるし、偉そうだったんだろ?だったら問題ないから、その辺に捨てときなさい。」
「わかりました!」
同情はするけど、それとこれは別問題です。
頑張って自分を取り戻してください。
アレカンドロがヨエク兵をポイと捨てるのを見届けてギルドの中に戻る事にした。
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