第814話

アレカンドロは悠然と男たちの元に進む。


「く、くそっ!な、なんで当たらない!?」


「ふむ、諦めが悪いですな。スキルの恩恵で、その程度の飛び道具は通じないと言ったはずですぞ?さっさと諦めて近接での戦いを楽しもうといっているのだぞ。」


「ええい!うるさい!火薬球を準備しろ!早くコイツを殺すのだ!」


数人の男が、背中に背負っている袋を外して中から火薬球を取り出す。


「一斉に投げろ!外すなよ!」


男たちは球状になっている鉄の球を手に持ち、投擲しようと構える。


「どっせい!」


アレカンドロがその綺麗な顔立ちには全く似合わない掛け声で手に持つ大斧を投擲しようとしている男の1人に投げつける。


大斧は凄まじいスピードで男の手元を通り抜ける。



大斧は男の後ろにある建物をまたしても吹っ飛ばしていく。


その勢いに驚きはしたものの、外れた事に安堵して火薬球を投げようとするが手元に違和感を感じる。


「あ、あ、あ‥お、俺の手があぁぁアアア!」


男の腕は手首から先がなくなっていた。


「だからさっきから言っておるだろう。戦士なら近接ガチンコで来いと!」


「ぎゃあぁぁ!」


「むう!此奴も話を聞かないのか‥?」


アレカンドロは手首から先がなくなった男に進みかける。


「は、早く投げるんだ!」


手首を切られた男以外は手に持つ火薬球をアレカンドロに放り投げる。


アレカンドロの近くに着弾して、爆炎と爆風を巻き起こす。


「は、はは‥はははははは!ば、ばかめ油断しやがった!これだけの火薬球を喰らったら無事で済むまい!」


数個の火薬球は連鎖爆発し、辺りに砂塵を舞い上げた。





少しずつ砂埃が晴れてくる。


「お、おい!し、死体を確認しろ!」


「は、はいっ!」


周りにいた2人の男がアレカンドロの姿を確認するために爆発の中心部に歩いて行く。


「隊長!死体はありません!跡形もなく吹き飛んだようです!」


「そ、そうか!はは‥ははははははは!ば、ばかめ!俺たちを舐めるからこうなるんだ!」


隊長と呼ばれた男は爆発のあった場所まで駆け寄り、その場の土を蹴り上げながら高笑いを上げる。


「はははははははは‥は?なんだあれは?」


高笑いを上げ、空を見た男の目には何かが浮いているのが見えた。


それは徐々に大きくなってくる。

それが落ちてきているのだと思った時には、それは目の前に降り立っていた。


空から降りてきたものは、大斧を持つ白銀に輝くフルアーマーをつけた自分より大きな女だった。


「なかなかの攻撃だったが、遠距離では物たらんな。さてもう終わりか?それでは近接戦闘を楽しもうじゃないか。」


「な、な、なんで?吹き飛んだんじゃなかったのか!?」


「ん?」


男は驚き地面に尻餅をついた状態で、地表に降り立ったアレカンドロに対して声をあげる。


「そんなわけないだろう。爆発物を投げたのがわかったから空に上がっただけだ。マルコイ殿に気をつけろと言われていたので念のために避けたが、喰らっても問題なかったみたいだったがな。マルコイ殿が気をつけろと言うくらいだから、マルコイ殿の魔道具くらいの威力があるかと思っていたぞ。」


「そ、空に上がった‥?」


男はアレカンドロに目を向ける。

アレカンドロの白銀に輝く鎧の背中には2対の羽根が生えていた。


「そ、空を飛んだというのか‥」


「ん?飛べるし戦えるぞ。自分は地上で戦うのが好きだが、ドラゴンと戦った時は重宝したな。あとはリル殿を運ぶのに便利だ!」


「ド、ドラゴンと戦うだと‥」


「さあ!そろそろ近接戦か?自分はいつでもいいぞ。30対1の方でもいいが、我こそはという者がいれば1対1でも構わんですぞ。」


「こ、攻撃しろ!は、早く!」


突然空から降りてきたアレカンドロを見て呆然となっていたヨエク兵だが、隊長の男の号令で手に持つ武器で攻撃を始める。


「どっせい!」


アレカンドロはヨエク兵に刃先ではなく斧刃を叩きつけるように大斧を叩きつける。


アレカンドロの一振りで5.6人の男が吹き飛ぶ。


「うはははは!大丈夫!ちゃんと回復できるように攻撃しているから、ポーションを使うといいですぞ!回復した者からまたどんどんかかってくるがいい!」



「な、なんだよそれ‥」


隊長と呼ばれた男の前で、次々と宙に飛ばされる部下たち。


自分の目の前に大斧が迫ったきた時に見た物は、満面の笑みを浮かべた女の姿だった‥








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