第811話
「‥‥むう‥なんだそのモンスターは‥‥」
「搭乗型ゴーレムの量産型である『ぐりぐりゴーレム君』だ!お前の相手は自動人形じゃなくて、俺が直接操作して相手してやるぞ。」
ふふん。
ゴーレムを1番上手く扱えるのはスキャンだが、俺もその操作を近くで見ていたんだ。
何となく扱えるに決まっている。
それにドリルパンチも決まったしな。
「行くぞ!」
俺はゴーレムを操る。
ゴーレムの足元にある魔力回路から風が放出され、ゴーレムの身体が浮くように移動する。
そしてゴーレムは円を描くように移動して、徐々にダリックから距離を取る。
「‥‥逃げる気か‥逃さんぞ‥‥‥」
違うわい!
前に動かなかっただけだ!
えっと‥
こうか?
ゴーレムがダリックに向けて猛スピードで突撃する。
「‥‥ぬぐ‥‥」
ゴーレムはダリックに正面からぶつかる。
ダリックは紫腕を使い攻撃を防ぐ。
力は均衡しその場でお互いの動きが止まる。
「‥‥ぐぬ‥ふざけよって‥」
紫腕の先端はゴーレムを押し返しながも2つに分かれ、先端の1つが俺に向かってきた。
「‥しね‥」
ぬう!
死なん!
えっと攻撃をするには、この辺にスイッチ付けてたよな‥
これだっけ‥?
俺が操舵棒を押し込むと肩に収まっていた直径20センチほどの穴の空いた鉄の棒が持ち上がる。
それは肩上に設置され、その口径をダリックに向ける。
狙う場所って目視だよな。
これで当たるよね‥?
俺は操舵棒を引く。
すると肩上の穴の空いた鉄の棒から轟音が鳴り響き、鉄の球が放出される。
鉄の球は迫ってきたダリックの腕を弾き飛ばし、そのままダリックに直撃する。
「‥ぐはっ‥‥」
球はダリックの身体を貫通して地面に穴を空ける。
ダリックの身体は力を失ったように、そのまま地面に座り込んだ。
おお!
ちょっとびっくりするくらいの威力じゃないか。
まさか紫色の腕を吹っ飛ばして、ダリックの身体に風穴を空けるとは思わなかった。
「‥‥ぐっ‥‥まさか‥それは火薬筒か‥‥」
「形状的にはそうなるな。お前らが我が物顔で使っているやつだ。残念だが、お前らの専売特許じゃなかったって事だ。」
「‥‥ぐぐ‥‥やはりお前はヨエク王に‥ヨエク様の元に連れて行く必要がある‥その技術に‥もしや鉱石の件も関係しているのではないか?‥‥俺が直接ヨエク様の元に連れていけないのは残念だが‥‥仕方ない‥」
ダリックの身体は鉄の球に身体を貫かれた事で、今にも息を止めようとしている。
しかしなんだ?
この気持ち悪い感覚は‥?
「‥‥どちらにしろ俺は死ぬ‥‥この先がたとえ俺でなくなったとしても問題はない‥‥ヨエク様のために‥」
ダリックが意識を失う。
最後まで気味が悪い奴だったな。
さて、後は残ったヨエク兵でゴーレムの練習をするとするか。
「‥‥‥ぐがっ‥がががががががが‥」
もう息が止まるだけになっていたダリックの身体が震え出す。
なんだ?
ダリックの左腕に生えていた紫色の腕が奇怪な動きを始める。
紫色の腕は血管のような物をダリックの身体に這わせて、少しずつ取り込むように身体を侵食していく。
やがてダリックの身体が紫色に染まる。
それと同時にダリックの身体が、筋肉が膨張する。
「があああぁぁぁぁぁ!!!」
そしてダリックはオーガを超える巨大な筋肉の塊に姿を変えた。
おいおいおい!
なんだこのメンセンを超える筋肉お化けは?
「があっ!」
筋肉お化けがこちらに向かって腕を振り降ろす。
ゴーレムを後ろに移動させて、何とか攻撃を躱す。
筋肉お化けの攻撃はそのまま地面に放たれる。
轟音と共に砂塵が舞い上がる。
筋肉お化けが攻撃した地面が大きく陥没していた。
やばいぞアレ。
あんなの喰らったら、いくら『ぐりぐりゴーレム君』でも1発で壊されてしまうぞ!
ちょっとまずいかも‥
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